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第68話『血という呪縛』続

 ロミナもロイグも、お互いを愛している。

 でもそれは、許されざる禁断の恋。

 どんなに二人が愛し合っていようとも、世間の目は冷たいだろう。


 それをわかっているから二人は離れようとしている。

 ロミナはレヴァンのファンクラブに入ったり、ロイグは人気者になって女子にモテようとしたり。

 お互いに相手の事を忘れようとしている。


 しかし、あの公園での口付けを見れば、それがどれだけ難航しているかは容易に想像できた。


「本当にごめんねシャル。気持ち悪い話まで聞かせちゃって」


「気持ち悪くなんかありませんよ?」


 シャルは正直に答えた。

 よほど意外だったのか、ロミナが振り向いて目を丸くする。

 そしてやはり泣いていたことがわかった。

 頬に雫の通った跡が残っている。


「ロミナさんが魅力を感じた男性が、たまたまお兄さんだっただけじゃないですか。それを気持ち悪いなんて言いませんよ」


「‥‥‥なんで? 兄妹で愛し合うのよ?」


「私の中での恋は『一緒にいて幸せならそれでいい』なんですよ。兄妹とか、男同士とか、女同士とか、世間では良い目で見られなくても、その二人が一緒にいて、それで幸せなら他人がとやかく言うものじゃないと思うんです」


「‥‥‥」


「その人の幸せを他の道で約束できないなら口を挟むなってことです。少なくとも私はそう思います」


 シャルはキッパリと言い切った。

 完全なる持論だが、間違っているつもりはない。


 あんな素敵なキスができるロイグとロミナを、兄妹という理由だけで別れさせ、その先の幸せを保障できるのか?


 否。


 できるはずもない。 

 彼らの今以上の幸せを提供できないなら口を出すものではない。

 出すならそれは無責任だと思う。


 例えそれが正統派な恋愛でもだ。

 その人の幸せは、その人が決めるものだ。


「シャルは、もしレヴァンくんが兄だったら愛してた?」


「はい。絶対に愛してました」


 自分でも驚くほどの即答だった。

 すんなりと口から出てしまっていた。

 

 レヴァンがお兄ちゃんだったとしても、きっと惹かれていた。

 根拠もある。

 私もレヴァンも、幼いときは無能というレッテルに苦しめられ、互いに慰め合った身だ。

 それで愛を深めて、友達をやめて、恋人になった。


 その経緯は、きっと兄妹だったとしても変わらなかっただろう。


 好きだから、一緒にいて幸せだから、レヴァンだから。


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