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第68話『血という呪縛』

 街灯だけが頼りの夜道。

 重い沈黙の中、シャルはロミナの背を追うように歩いていた。


「ごめんねシャル。気持ち悪いの見せちゃって」


「え?」


「見てたんでしょ? 私と‥‥‥お兄ちゃんのキス」


「いや、それは‥‥‥その、すみません」


 今さら隠しても無駄だと悟り、シャルは素直に謝った。

 あの光景には正直に驚いた。

 それでも『気持ち悪い』とはいっさい思わなかったが。


「これでもね、何度も離れようとしたんだよ。お兄ちゃんとは」


 切ない口調でロミナは告げた。

 哀愁さえ漂う彼女の背を、シャルは見つめる。


「離れようと思って、エクトくんのファンクラブや、レヴァンくんのファンクラブに入ったりしたんだけど、全然熱が入らなくて‥‥‥」


 シャルは内心で驚愕した。

 何にって、ファンクラブの存在に。


 私の知らないところでそんなクラブが結成されていたとは。

 ‥‥‥いや、今はそんなことどうでもいい。


「あの、でも、本当に血の繋がった兄妹なんですか? ロシェル姉さんの話では、血縁関係の者同士がソールブレイバーになることは有り得ないって言ってましたよ?」


 シャルの言葉にロミナはピタリと足を止めた。

 そこはちょうど橋の上で、川を流れる音が響いている。


「うん。有り得ないはずなんだよ。でもわたしとお兄ちゃんは、例外だった」


「例外‥‥‥」


 おかしな話ではなかった。

 そう思える判断材料をシャルは知っている。

 それはグラーティアとシェムゾだ。

 両親がすでにイレギュラーとも言える召喚を果たしている。


 どんな経緯でお父さんがお母さんを召喚したかは知らないが、グランヴェルジュの人を、リリーザの人間が召喚したという有り得ない事をやっている。


 こんな事例を知っている以上、兄妹での召喚も有り得ない話ではないと思えた。


「最初は期待したよ。わたしとお兄ちゃんが、実は血の繋がってない兄妹なんじゃないかって。でも‥‥‥現実は非情だった。どれだけ検査しても、わたしとお兄ちゃんは立派な兄妹だった‥‥‥どうしようもないくらい、同じ血が流れてた‥‥‥」


 うつむいて、肩を震わせるロミナの後ろ姿は、悲しみに満ちていた。


 彼女は泣いている。


 背後からは見えないが、シャルはそう確信した。

 

「お兄ちゃんもね、あんなバカみたいにがんばってるけど、あれも本当はわたしと離れるためにやってることなの」


「そうなんですか?」


「人気者になって、女子にモテれば、わたしのことは忘れられる。そう考えてるんだって」


 やはり、と思ったのがシャルの素直な感想だった。

 ロイグさんからは、あのギュスタさんと似たような雰囲気を感じていた。

 

 そして案の定、ロイグさんは妹さんの幸せのために、必死に離れようと頑張っていた。


 自分の魔女のために頑張っているという点ではギュスタさんと同じだ。


 これが似ていると感じた正体なのかもしれない。



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