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第7話『国王からの願い』

「見事な戦いだった!」


 どこからともなく聞こえた男性の声に、俺は振り返った。

 視線の先には男性と女性が一人ずつ、こちらに歩いてくる。

 二人の周りには護衛らしき軍服の人間が数人いた。


 さきほどの声の主であろう男性は、見た目40代ほど。

 格好は白いスーツを着て、その上からリリーザの国色である【蒼】を基にした装飾の派手なコートを肩に羽織っている。


 オープ先生と似たような格好だ。


 隣の女性の方はドレス状の服を着て、その上にケープを羽織っている。

 顔は若々しい。

 20代だろうか?


 そもそも誰だこの二人は。

 でも見たことあるような。


「リリオデール国王様!」


 オープ先生が慌てた様子で言った。


「国王様!?」


 俺も思わず驚いてしまった。

 この国の王様だった!

 通りで見覚えがあるはずだ。


 ということは隣の女性は国王様の妻&魔女であるフレーネ王妃!?

 観客席のみんなが思わぬ来客に面食らっている。

 俺とエクトは反射的にリリオデール国王様の前にひざまずいた。

 慌ててリンクを解いたシャルとレニーも面を下げる。


「顔を上げてください」


 フレーネ王妃の優しい声音にそう言われ、俺達はゆっくりと面を上げた。

 上げた先でリリオデール国王様と目が合ってビックリした。

 国王様がこんなところになんの用だろう?


「君がレヴァンくんだね? オープから聞いていたが良い腕をしている。明日のソルシエル・ウォーに推薦して正解だったな」


 さっきの戦いを見てたんだ!

 まさか国王様直々に褒められる日が来るなんて!

 ホントに今日はどうなってんだ!?

 俺は明日死ぬのか?

 怖すぎる!


「も、もったいない御言葉です! ありがとうございます!」


 俺は大袈裟に御辞儀をする。


「いや。無理を言っているのはこちらだよ。今日やっとソールブレイバーになった君とエクトくんに、明日の試合に勝てと言っているのだからな」

「いえ! 俺とエクトはぶっつけ本番なぐらいがちょうどいいんです! な? エクト」

「あ? あ、いや、そうです! オレたち本番には強いんで!」


 ぎこちないやり取りだったせいか、フレーネ王妃がクスクス笑った。


「オープ先生が仰られたことと同じことを仰ってますね」


「え?」っと俺とエクトは揃って間抜けな声を上げた。


「『あいつらにはぶっつけ本番なくらいがちょうど良いのです』とオープ先生が」


(なに勝手にハードル上げてんですか)と訴えるような眼で俺とエクトはオープ先生を睨む。


「なんだその目は。お前たちの実力を信用してるこらこその発言だぞ?」


 わかってるよ先生。

 それくらいは。


「レヴァンくんエクトくん。今のリリーザの状況は、藁にもすがる酷い有り様だ。どうか情けない国だと思って助けてほしい」

「私からもお願いします。リリーザで産まれ、リリーザで骨を埋めたいと願う人間は大勢います。どうか、グランヴェルジュの進行を阻止して下さい」


「!?」


 信じられない!

 今、目の前で起こっている大事件が。

 リリーザの国王様と王妃様が頭を下げてる。

 こんな俺とエクトみたいな一介の学生に。


「やめてください国王様! 王妃様!」


 俺は誰よりも速く口走っていた。

 一国の王族に頭を下げさせるような、俺はそんな偉い人間じゃない。


「リリオデール国王様! 王が人に頭を下げるものではありませんぞ! ましてや学生相手になど」

「オープよ。地位は関係なかろう? 私は今、この国を守る同じ戦士として彼らに頭を下げているのだ」

「しかし……」

「リリーザがここまで追い詰められたのは、我々の弱さが招いた結果だ。その巻き返しを彼らに頼むのだ。ここで頭を下げられないで何が王か」


 ──ああ、そうか。

 リリオデール国王様。

 フレーネ王妃。

 そしてオープ先生も。

 みんな一人の戦士や魔女としてソルシエル・ウォーで戦っていたんだ。


 たくさんの戦士達と魔女達がグランヴェルジュ帝国と戦い、敗れ、今はここまで追い詰められている。

 いつだったか。

 リリーザの大人達が全滅したという報道が俺達子供の耳に入って来たのは。


 全滅と言っても戦死ではない。

 ソルシエル・ウォーの参加権を永久に失ったのだ。

 ソルシエル・ウォーは負けても殺されたりしないが、代わりに参加権を失い、実質戦死扱いになる。


「レヴァンくんエクトくん。リリーザの名は君たちにかかっている。どうか宜しく頼む」

「はい。必ず勝ってみせます!」


 俺が言うと「ありがとう」と国王様は微笑んだ。

 すると彼の隣にいたフレーネ王妃がシャルの元へやってくる。


「あなたがシャルさんですね?」

「は、はい!」

「あなたの『ゼロ・インフィニティ』のことは御聞きしました。どうかその力で、この国の本当の【奇跡】になって下さい。同じ魔女としてのお願いです」

「あ……、み、身に余る御言葉です。ありがとうございます」


 シャルは大きくお辞儀した。

 そして間もなく、リリオデール国王様とフレーネ王妃は帰られた。


 肩の力がやっと抜けて、俺は酷く気疲れした。

 マジで今日はいろいろ起こりすぎだ。

 凄すぎて目が回りそうだ。


『リリーザの名は君たちにかかっている』


 リリオデール国王様が俺に言った言葉だ。

 凄いプレッシャーを感じる言葉だが、だからこそやる気も出る。


「よしエクト! 特訓するぞ! シャル! リンクだ!」

「はーい」


「おいレニー。こっちもリンクだ。速くしろ」

「ちょ、急かさないでよ!」


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