第56話『ヒロインズ・オブ・ザ・メイド』
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スイートルームでのんびり過ごし、時刻はいよいよ18:30となり俺は客室から出た。
「よぉ」
廊下にはエクトがいた。
どうやら俺を待っていたらしい。
「おうエクト。シャルとレニーは?」
「レニーの部屋には呼び掛けたけど出なかった。さすがに寝てるとは思えねぇが、二人とも先に食堂に行ったんじゃねぇか?」
「先に? レニーはともかくシャルまで先に行ったのか?」
俺は唸った。
そもそも廊下で待っているのだってシャルだと思っていたのだが、まさかのエクトだったし。
「知らねぇよ。ほらさっさと行くぞ。食堂は2階だってよ」
言いながらエクトはエレベーターのボタンを押した。
そしたらすぐにエレベーターは開いた。
※
2階にある食堂への入口前で、オープ先生と男子生徒達がなぜか待機していた。
「オープ先生どうしたんですか?」
俺が聞くとオープ先生は後退気味の頭を掻いた。
「アノンがな。全男子生徒が集まってから入れと言うもんで、お前さん達を待ってたんだよ」
「あ、すいません」
「うむ。これでみんな集まったな。なら開けるぞ」
オープ先生は食堂への扉を開けた。
その先の光景は、俺たち男子生徒を唖然とさせた。
「「「いらっしゃいませ! ご主人さま!」」」
アノンさんを中心に、シャルやレニー、女子生徒たちのみんながメイド服を纏って一斉に一礼をしてきた。
これにはさすがの男子生徒達も開いた口が塞がらない。
「ご主人さまのご来店です。みなさんはご自分のご主人さまの案内を!」
アノンさんがシャルたちに指示を出した。
「はい!」と元気で楽しそうな女子生徒たちの声が弾ける。
「はーいご主人さま。こちらの席ですよ」
俺の前に来るなりメイド姿のシャルが言った。
まさかシャルのメイド姿を拝めるとは思わなかったが、やはり可愛い。
頭には純白のヘッドドレス。
袖は手首までしっかりある。
脚を全て隠してしまう丈の長いロングスカート。
食堂で御奉仕を勤めるメイドとして、これ以上にないほどの清潔な姿だ。
シャルだけでなくレニーやロシェル。それにリエルとロミナ。さらにあのレイリーンまでみんな同じ清潔なメイド姿をしている。
なんと言うか、みんな本当に可愛い。
眼福とはこの事だろう。
「シャルお前、これはやりすぎだろ」
嬉しいんだけど、俺はついそう言ってしまった。
シャルは意外にも少し困った顔をして笑った。
「いやぁ私もビックリしたの。まさかアノンさんがメイド服まで用意してくれてるなんてさ」
「え? お前がお願いしたんじゃないのか?」
「メイド服は頼んでないよさすがに。でもアノンさんが厨房に立つ女性の制服ですって言って」
「な、なるほど。いや、まぁ良いんだけどな。すげぇ似合ってるよシャル。本当に可愛い」
「いつもより可愛いですか?」
「ん、いつも可愛いだろ」
「んもぉ~ご主人さまったら。大好きです!」
シャルは頬を赤くしながら椅子を引いて俺を座らせてくれた。
蒼いテーブルクロスが敷かれた長方形のテーブルには、まだ何もない。
「いま御食事をお持ち致しますね」
言ってシャルはノリノリな足取りで厨房の方へ向かっていった。
「どうぞご主人さま。こちらにお掛けになってお待ちください」
聞こえて来たのはレニーの声だった。
俺の隣の席を引いてエクトを座らせる。
「ただいま御食事のご用意を致しますので、少々お待ち下さいご主人さま」
「お、おう」
レニーの丁寧な対応にエクトが困惑しながら返事をした。
しかしレニーはすぐには動かず、エクトを見つめる。
「あの‥‥‥」
「な、なんだ?」
「その、似合ってますか? あたし‥‥‥」
「は? ぁ、ああ。かなり‥‥‥可愛いと思う」
エクトの言葉に満足したのか、レニーは「ありがとうございますご主人さま」と頭を下げて厨房へ。
エクトは頬を掻きながら口を開いた。
「ご主人さまはやりすぎだろ。これもシャルが考えた企画の一つか?」
「いや、このメイド関連は違うらしい」
「違うのかよ」
「これはアノンさんのお考えだと」
「マジか。ったく、変なこと考えるぜ」
「いいじゃないか。レニーのメイド姿を見れたんだし」
俺は笑いながら言った。
するとエクトは意外にも「そうだな」と返してきた。
「最近、レニーのやつが妙に可愛く見えるんだ。オレもついに病気かね」
「お? 恋の病ってやつか?」
「ああ。そうだと思う」
ホンットに意外だった。
エクトが自分の恋を肯定するなんて。
「あいつのおかげでオレも決心がついたからな。苦労はかけるだろうが、幸せにしてやりたい気持ちはある」
随分と素直になったものだと俺は思った。
バスの中で暗い顔をしていたエクトとは別人にさえ見える。
レニーのおかげで決心がついた、と言っているところを見ると、やはり何かしらエクトは悩みを抱えていて、それをレニーが良い形で解決したのだろう。
親友としては、悩みを聞かせてもらえなかったショックはあるが、解決して元気になったのなら問題はなかった。
「お席はこちらですよご主人さま」
「あ、ありがとうロシェル」
「ほら! さっさと座わんなさいよシグリー!」
「はいはい座りますよ」
「席はこちらだ。あ、いや。こちらですよマール‥‥‥じゃない、ご主人さま」
「無理しなくていいよレイリーンさん」
「はいはいお兄ちゃん。さっさと座ってさっさと食べてねぇ~」
「ロミナお前、もう少しマシな対応しろよ」
女子生徒達のみんながシャルやレニーのように乗り気でやっている訳ではないようで、それぞれの対応に違いがあった。
当たり前だが、女子生徒たちのヤル気にブレがある。
嫌々メイドをやっている女子生徒もちらほら。
仕方なくやっている女子生徒達が多数を占めている。
彼女たちの心を動かすには、やはり明日からの特訓で、男子の頑張りを見せるしかない。
「はーい。お食事を御持ち致しましたよご主人さま~」
トレーに食事を乗せて戻ってきたシャルが言った。
「お、ありがとうシャル」
言ってテーブルに置かれた食事を見た。
どう見てもプロが作った料理にしか見えないほど整っている。
アノンさんの料理指導があったとは言え、素人の女子生徒たちがこんなにも上手く料理を作れるものなのだろうか?
「なんか、えらく整っているな」
「そりゃそうですよ。今日だけは専属のコックさんが作ってくれてるからね」
「なんだ。女子生徒達の手料理は明日からか?」
「そうですよご主人さま。はい。アーンしてください」
シャルの行為に、エクト・ギュスタ・シグリー・マール・ロイグの視線が俺に集まった。
もちろん他の男子生徒達からも数名の視線が。
「‥‥‥アーン」
パクリ。
「うおおお! アーンして食べやがった無能の野郎!」
「見せつけやがったぞあいつ!」
「こんなところでイチャイチャしやがって!」
男子生徒たちから僻みの声が。
「美味しいですかご主人さま?」
「最高」
俺は優越感を感じながら、親指を立ててそう言った。
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