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第55話『スイートルーム』

 しばらくして全生徒がホテルに集まり男女別に並んだ。


三年生は三年生の部屋に。

二年生は二年生の部屋へと案内された。


俺はエクトと1年1組のクラスメイト達と共に部屋に案内される、はずだったが。


「レヴァン様・エクト様・シャル様・レニー様の4名様はこちらです」


ホテルのスタッフさんに呼ばれ、その場に集まった。


「皆様はスイートルームへのご案内となります」


「あいつらスイートルームかよ!」

「無能とお坊っちゃんのくせにいい!」

「エース待遇ってやつだろうな」

「羨ましいいー」


クラスメイト達の羨望する声が聞こえてくる。

よく分からんが、スイートルームとは良いものらしい。


「どうぞこちらへ」


スタッフさんが歩き出した。

俺は先行してスタッフさんについていく。

エクトらも続いた。


「スイートルームって何?」


後で俺が聞こうと思っていた事をレニーが先に聞いてくれた。


「あ、私もそれ聞きたーい」


シャルが手を上げて言った。

するとエクトが呆れたように肩を竦める。


「これだから貧乏人は。スイートルームってのは、まぁあれだ。お前らに分かりやすく言うなら通常の部屋よりワンランク上の部屋の事をさすんだ。このホテルの最高グレードの部屋でもある」


「え、凄い! レヴァン知ってた?」


まさかのレニーに聞かれて少し驚いた。


「あ、ああ。知ってたぜスイートルームなら。ほらシャルと結婚したら、どこで新婚旅行しようかと考えてた時にホテルの情報とか見るからさ」


「あ~なるほど」


レニーが納得の声を上げる。


ごめんレニー。

それらしい事を言って嘘ついてます俺。

知りませんでしたスイートルーム。

いや、名前くらいは聞いたことあるんだけどね?


「そんな部屋にあたし達が泊まっていいの!?」


レニーがエクトに向かって震え声を発する。


「いいに決まってるだろ。国王様が金払ってくれてんだから」


「で、でもスイートルームって、やっぱり他の部屋より高いんでしょ? いいのかしら本当に」


「いいんだって。それだけ期待されてんだ。オレたちはそれに応えられるように頑張ればいい」



「レヴァン様の御部屋はこちらになります。御荷物も中にありますので」


「あ、どうもです」


シャル・レニー・エクトの順で部屋を案内され、最後は俺だった。

部屋の鍵を開けてもらい、さらにスタッフさんは丁寧な動作で扉を開けてくれた。

さすが高級ホテルのスタッフさんだ。

身なりも動作も品がある。


中に入れば、その構造に驚いた。

リビングルーム。

応接室。

バスルーム。

寝室。

などが一対になっている。

もはやマンションの一戸な形態だ。


家具や内装は豪華なものになっており、そこまで裕福に育ったわけではない身としては、かなり場違いなものを感じた。


同時にシャルと結婚したら、こんなホテルで夜を過ごすのも悪くないなと瞬時に考えてしまっていた。


それから何気なく窓の外を見た。

さすがに驚愕してしまった。

『ローズベル』の街並みを総なめにできる。


忘れていた。

俺がいるこの部屋はホテルの最上階である50階。

そこから眺められる景色は絶景の一言だ。


しかし、夕陽に照らされる1つの広大な施設があった。

圧倒的な存在感を見せるそれはコロシアム。

三ヶ月後に『獅子王ジフトス』と『死神サイス』の部隊と戦うことになる戦場だ。


この強化合宿を乗り越え、それでも彼らに手こずるようなら先はないだろう。


彼らを瞬殺するぐらいにはならないと、あの覇王グランヴェルトには届かない。


「レヴァン様。夕食は18:30からとオープ様に申し付けられておりますので、どうかご了承下さい」


「あ、わかりました。ありがとうございます」


「はい。あの、どうか頑張ってください。応援しています」


齢30前後であろうスタッフさんが俺に頭を下げた。

きっと彼は『ローズベル』の出身なのかもしれない。


「ありがとうございますスタッフさん。『ローズベル』は必ず取り戻して見せます」


すると正解だったようで、スタッフさんは嬉しそうに顔を明るくして「はい!」と返してくれた。


何も俺達に期待しているのはリリオデール国王様だけではない。

そんな当たり前な事を俺は感じた。


このスタッフさんだって、以前はソルシエル・ウォーに参戦して戦っていた戦士の一人だっただろう。


ソルシエル・ウォーは老若男女問わず参戦できる。

魔法さえ使えれば。


誰にでも活躍の機会があるわけだが、完全に実力の世界でもある。

それがソルシエル・ウォーだ。


俺はシャルがいないと魔法さえ撃てない無能だが、今はリリーザのエースとしてここにいる。

ならば、無念にも参加権を散らしていったリリーザの戦士達の期待を背負うのも当然の責務だろう。


また、そうやって期待されるのも嬉しいし、期待を背負えるほどの男になれている自分が無闇に嬉しかった。


次回の更新は明日中です。

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