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第47話『魔女と戦士は血縁遠く』

放課後になり、シャルはレニー・リエル・ロシェルを連れてリウプラングのメンバーが泊まるホテルへと向かった。


そして2年の代表である魔女レイリーンと、3年の代表である魔女ロミナを呼び出し、ホテル内にあるレストランで飲み物を飲みながら例の作戦を説明した。


「『最初から男子メロメロ作戦』?」

「シャル・ロンティア。キサマふざけてるのか?」


首を傾げたロミナと眉をひそめたレイリーンが言った。

シャルはコーヒーを少し飲んでからゆっくり首を振る。


「ふざけてませんよ。真面目な話です」


言ってレニーが続けた。


「相手の『スターエレメント』である『ブロークン・ハート』を防ぐためにも、このシャルの作戦はやらなきゃならないことなんです。どうかお願いします」


「対策を立てるのは分かる。だが、こんなことして本当に防げるのか?」


レイリーンの問いにシャルは即答する。


「それはわかりません」


「なに?」


「ただ根拠はあります。暴君タイラントの魔女さんに直接聞いた話がヒントになりました。あの魔女さんはレヴァンには効かないかもしれないって言ってました。それってつまり『ブロークン・ハート』は戦士と魔女の絆が強ければ強いほど無効化できる魔法だと考えられませんか?」


「?」


ロミナは「なるほど」と納得したものの、レイリーンは意味不明だと言わんばかりな顔をしていた。

するとレニーに指摘される。


「シャル。レイリーンさんはあんたとレヴァンの関係を知らないって」


「あ、そっか。私とレヴァンは結婚を約束している仲でして、かれこれキスも何度かしています」


「なっ! キス!? 結婚だと!? まだ16歳だろキサマら!」


「まぁまぁそれは置いといて」


「置くなバカ者!」


「『ブロークン・ハート』はあの『スターエレメント』の一つです。まず間違いなく強力でしょう。並の絆では魅了され、戦士たちの同士討ちが起こってしまう可能性もあります。だからこそこの『最初から男子メロメロ作戦』は徹底して男子に尽くす企画となっています」


「男子に、尽くすだと?」


「はい。強化合宿中は奥さんのようにパートナーに尽くしてください。これくらいはやらないと『ブロークン・ハート』の対策にはならないと思っています」


「ま、待て! 強化合宿中は奥さんのようにパートナーに尽くすって、やりすぎじゃないか?」


「アタシもそう思うんだけどねぇ」


腰に手を当てたリエルがレイリーンに同意する。


「私はギュスタになら尽くしたいわ」

「あたしもエクトになら尽くしたいです」


「誰も聞いてないから」


リエルが突っ込んだ。


「この作戦を他の女子にもやらせるのは至難の業ではないか?」


レイリーンの最もな質問にシャルは立ち上がって答えた。


「そう至難の業です。 だからこそ私たちが率先してやらないといけないんですよ。わざわざレイリーンさんとロミナさんを呼んだのだって、お二人がリウプラングの学校で高い地位にいる戦士の魔女だからなんです。お二人が率先してリウプラングの女子生徒達を引っ張ってくれれば、きっと上手くいくはずですから」


「‥‥‥おいロミナ。お前はどう思う?」


レイリーンに聞かれ、やや意外そうな表情を浮かべたロミナは肩をすくめた。


「いいんじゃない? 他に良い対策もないんだしさ。あなたは良いじゃない。相手は血縁のないマールなんだから。わたしなんてお兄ちゃんなんだよ? お兄ちゃんに尽くすなんて、正直モチベ上がんないよ」


「え? あなた兄が戦士なの?」


疑問に思ったらしいロシェルがロミナに聞いた。

ロミナはオレンジジュースをストローで飲みながら頷いた。


「んじゃご馳走さま。3年のみんなには作戦のこと伝えておくから安心しなよ」


「あ、お願いします」


「うん。また明日ね」


ロミナは椅子から腰を上げて去って行った。

彼女を見送った後で、ロシェルは疑問を口にする。


「おかしいわね」


「何が?」


シャルが聞いた。


「『魔女の召喚』では血縁関係にある者同士の契約は有り得ないはずなのよ」


「え、知ってた?」っとリエル。


「当然だ」っとレイリーン。


「私もロイグとロミナの関係には疑問があった。まぁ、真相がどうであれ、奴らなどどうでもいいのだがな」


冷たく言い捨ててミルクを飲み干すレイリーン。

まさかミルクとは。

彼女の身長が高いのはこれのせいだろうか?


「シャル・ロンティア。お前の作戦内容はわかった。2年の奴らには私から伝えておく」


「はい。よろしくお願いします」



次回は更新は水曜日です。

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