第45話『あいつはいらねぇ』
「一年二組と一年三組の連中に声を掛けたがダメだ。一人も参加したがらねぇよ」
学校の屋上でエクトが肩をすくめた。
「やっぱりそうか。参ったな」
俺は頭をポリポリと掻く。
とは言っても無理はないとも思った。
これから相手にするのは本物の軍人たちだ。
いわば戦場のプロフェッショナル。
しかも異名持ちの将軍が二人も出撃するのだ。
そんな奴らを相手に、ソールブレイバーになったばかりの一年生の素人が勝てる見込みなどない。
誰も参加したがらないのは、当然だと言える。
「ギュスタさんは3年で7人の参加志望が来たって言ってたよ」
シャルが言うとレニーも続いた。
「リエル先輩も2年は6人集まったって言ってたわ」
これで計35人集まったわけだ。
「ならあと15人足りないのか」
さてどうするか。
ふとリウプラングの『魔女契約者高等学校』を思い出した。
あの学校はこちらの制圧下になったことで生徒たちがソルシエル・ウォーに参加できるようになったはず。
他校の彼らに応援を頼もうか?
一瞬だけそう考えたが、例の失礼極まりないロイグ・カーニーの存在を思い出した。
目立ちたがり屋の彼ならば、呼べば間違いなく参加してくるだろう。
人の女をブサイクなどと抜かしたザコと肩を並べたくない。
そんな私情過ぎる気持ちが沸いてきて、リウプラングの学生たちを呼ぶことに抵抗が生まれた。
「この学校じゃもうソールブレイバーを集めるのは困難だね。リウプラングの方にも声を掛けよっか」
そう発言したのはシャルだった。
俺はおもわず顔をしかめる。
「声掛けたらあいつまで来るだろシャル」
「あいつって?」
「ロイグ・カーニーとかいう失礼な奴」
「ぁ、ああ! いや、別にいいじゃん。私は気にしてないし」
「やめとけってシャル。役に立たねーよあんな奴」
「いやいや、あれでもリウプラングではNo.1らしいじゃん。他の生徒よりマシだと思うよ?」
「ダメだってシャル。あいつはいらねぇ」
「いらねぇって、そんな物みたいに言わんでも‥‥‥」
「どうしたのシャル? なんかレヴァンがエクトみたいな喋り方になってるけど?」
「いや実はね」
シャルはレニーとエクトに説明した。
「なんだそいつ。ただバカじゃねぇか」
エクトがきっぱり言い捨てた。
「自分で喧嘩売って、自分で地雷踏んで、パンチ一発ノックアウトとか‥‥‥もうバカだな。バカ。このバカ!」
エクトが何故かレニーを指差して言った。
ボキィッ
「ああああああああっ! やめろノリで言っただけだって! ホントだってがああああ!」
懐かしいエクトの悲劇を見ながら俺は溜め息を吐いた。
あれこれ言ったが、やはりリウプラングの学生に応援を頼む他なさそうだ。
これも全国制覇のためだと、俺は内心で割り切ることにした。
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