第43話『リリオデールの嬉しい誤算』
放課後はシャルとエクトとレニーを連れて『リオヴァ城』へ向かった。
話がついている様で、兵士の対応も早く、さっと王の間へ案内された。
「あぁみなさん! 本当におかえりなさい」
出迎えてくれたのは優しい笑みを浮かべたフレーネ王妃だった。
母性さえ感じるその笑みに一時の癒しを感じながら、俺は姿勢を正す。
「フレーネ様! えと、ただいま戻りました。お出迎えの御言葉ありがとうございます!」
フレーネ王妃はニコリと微笑んで頷いてくれた。
そして玉座に座っていたリリオデール国王様が腰を上げて前に出てくる。
「呼びつけてすまんなみんな。暴君タイラントとの戦いは見事だった。よくぞ勝ってくれたと心から礼を言いたい。ありがとう」
また俺は国王様に頭を下げられた。
嬉しいのだが、これには対応に困る。
俺は所詮ただの学生で、国王様に頭を下げられるほどの地位にいる者ではないし。
「ありがとうございます国王様。しかしギリギリでした」
「うむ、ギリギリだったな。これで自分の実力の限界というものがわかったであろう?」
「はい。ですので、失礼を承知で国王様にお願いがあります」
「ダメだ。たった一人の将軍でギリギリだったのだぞ? 今回の挑戦状は保留にしなさい」
「え? あ、はい。そのつもりですが‥‥‥」
「レヴァンくん。夢を追うのは大いに結構。しかし君の夢は言ってしまえばあと二年待てば達成できるものなのだぞ? そんなに急ぐ必要もなかろう」
「あの、国王様?」
「ここは立ち止まって力をつける時だと思わんかね?」
「思います」
俺は正直に頷いた。
そう思うから、今日ここに来たのだ。
「うむ。わかっているなら‥‥‥え?」
「俺もエクトも、シャルもレニーも。みんな一度しっかり力をつける必要があると今回の戦いで学びました。ですから国王様にお願いがあります!」
「な、なんだね?」
「今回のソルシエル・ウォーに参加する50人を集めて、強化合宿を行わせて頂きたいのです」
「強化合宿?」
リリオデール国王様が眉をひそめた。
「はい。獅子王リベリオンの指定は50対50の集団戦。おまけに死神サイスも参加するとのこと。これほどの戦いになると、俺とエクトだけでどうにかなるレベルではないと思いました」
「な、なるほど。それで仲間の強化も視野に入れたのだな」
なぜか驚いた様子のリリオデール国王様に、俺は続けて言った。
「はい。それとグランヴェルトです。覇王の名をもつ彼は、あの将軍が束になっても敵わないと暴君タイラントから直々に聞かされました。それに比べ俺達はまだ弱すぎると判断し、この強化合宿をもって今の何倍も強くなる必要があるという考えに至りました」
「ほう?」
「ですから、この強化合宿の指導者として正騎士団団長シェムゾ・ロンティアとグラーティア・ロンティアを、どうか俺達につけて頂きたいのです!国王様どうか、御願い致します!」
「「「御願いします!」」」
俺の後ろに並んだエクト・シャル・レニーも声を出し、共に頭を下げた。
「う、うむ。よかろう! わかった! 私からシェムゾ団長に相談しておく。そのかわり君たちは参加する人間を集めておきなさい。よいか?」
「はい! おまかせください!」
「国王様! ありがとうございます!」
頭を上げて、おもわず歓喜の声を俺とシャルは出した。
よし。
次は参加する学生を集めなければならない。
それにビジュネールさんからもらった情報『ブロークン・ハート』の対策も考えなければいけない。
あと相手は全て軍人だ。
こっちは全て学生。
まともにやりあっても勝てるわけはない。
いくら強化合宿を乗り越えても、おそらく作戦もなしにぶつかれば勝算はない。
戦い方も考えなければ。
まだまだやることがいっぱいだが、やってやる!
次回の更新は木曜日になります。
またキッツイ指定ルールにしてしまったと後悔しながら頑張っていきます。
敵が油断して負けるというのは好きではないので、やはりこれくらい本気で潰しにくる方がいいですね。
おかげて思案する毎日ですが、これがまた楽しい。
今後もレヴァンたちを応援してやってくださいませ!




