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第42話『クラスメイト達の誤算』

エクトとレニーは遅れると連絡が入り、俺とシャルは先に学校へと向かった。


「よぉバカップル! おかえり!」


教室に入るなり掛けられた言葉がそれだった。


「ただいま。誰がバカップルだ」


言いながら俺は自分の席に座った。

隣にシャルも座る。


するとクラスの男女何人かが集まってきた。


「テレビで観てたぜ。すげぇじゃねぇか! あの暴君タイラントに勝つなんてよ」

「ほんとすごいわ。あの子同じクラスの人って他のクラスに自慢してきたわよ」

「おれの母ちゃんなんかお前のがんばりに泣いてたぞレヴァン」


「マ、マジか」


「学生が軍人に勝つなんて誰も思ってなかったしね」

「そうそう。てかなんだあの暴君タイラントの速さ。速すぎてなんも見えなかったぜ」

「それよりもさレヴァン、シャル。リウプラングのお土産は?」


「「あ‥‥‥」」


俺とシャルは間の抜けた声をあげてしまっていた。

完全に忘れてた。


「ごめん。忘れてた」


「んなん!?」

「忘れてたじゃねぇーよ!」

「そーよ! 楽しみにしてたのに!」


「いや待て! そもそも遊びに行ったわけじゃないからな!」


「この期に及んで言い訳か!」

「どうせシャルとイチャイチャしてたんでしょ!」


はい正解です。すいません。

なんて正直に言えるか!


「してねぇよ! な? シャル」


「そうだよ。イチャイチャだなんてそんなレベルじゃなかったよ」


「ええええ!?」とクラスメイト達が驚愕した。


「シャル! お前は何を言ってんだ! 何を!」


「事実じゃん。夜にこっそり温泉を混浴したね?」


「きゃあああー!」とクラスの男女が大興奮の声を張り上げた。


「レヴァンてめぇえええ!」


クラスメイトの一人にヘッドロックされた。


「ぐあ! は、離せ! 違う! そんな混浴なんてしてないって! おいシャル! ちゃんと弁明しろ!」


「はーい。みんな今のは冗談だから」


「なんだ冗談かぁ」とクラスメイト達の熱が冷めていく。

俺をヘッドロックしているクラスメイトも力を緩めた。


「でもリウプラングでイチャイチャデートしました」


フルパワーのヘッドロックが俺に炸裂した。


「ぎゃああああ!」


「レヴァンてめぇ!」

「お土産忘れてデートとか!」

「無能のくせにこのリア充が!」

「いっぺん死ぬがいい!」


そんなやりとりで、一年一組の教室に爆笑が起こる。

みんなとのこの他愛のないやりとりは、妙に久しぶりな気がする。

久しぶりに学生気分を味わっているようだ。

そんな充実感があった。


「なんだ賑やかだな」


後から来たのはエクトだった。

後ろにレニーもいる。


「お? エクトおかえりー」


「ただいま。随分と朝から楽しそうじゃねぇーか」


「おうよ。レヴァンのやろうがリウプラングのお土産を買い忘れやがってな」


クラスメイトの一人がエクトに説明する。


「なんだそんなことか。お土産なら買ってきてやったぜ?」


「え?」とクラスメイト達が揃って目を丸くする。


「廊下に二つのダンボールが置いてあるわ。1つはリウプラングオリジナルブレンドのコーヒーパック。それともう1つはリウプラング限定のチョコレートケーキよ」


レニーが言うとクラスの全員がオオッと喚いた。


「すごーい! さすがIG社の御曹子!」

「ありがとうエクトくん!」

「おぼっちゃん最高ーー!」


「おう。今お坊っちゃんって言ったやつ前に出てこい」


あ、これもまた懐かしいセリフだ。


「これエクトくんが選んだの?」


一人の女子がエクトに聞く。


「いや? そこのレニーだぜ」


顎をしゃくってレニーを指すエクト。


「わぁ! ありがとうレニーさん」

「いいセンスしてるじゃない」


女子生徒たちに褒められてレニーは顔を赤くした。


「あ、いや。お、美味しかったから選んだだけで‥‥‥」


なんか急にレニーがぎこちなくなった。

そういえば温泉で、レニーは友達がいなかったと言っていたな。

シャルが初めての友達だとか。


「そういえばレニーさんとはあんまり喋ったことないよね」

「そうよね。今日もしよかったらお昼とか一緒にどう?」

「その美貌の秘訣とか教えて!」

「スタイル良くするにはどうしたらいい?」


女子生徒たちに詰め寄られて焦るレニーに、シャルが見かねてフォローに回りに行った。


この様子ならレニーは、これから友達が増えそうだ。

女子生徒たちに囲まれて必死に受け答えしているレニーは、大変そうだが楽しそうでもあった。


「おいレヴァン。お坊っちゃんを見習えよコラ?」


クラスの男子生徒が言ってきた。


「悪かったって。それよりお前らこそソールブレイバーとして腕は磨いたのか?」


「いや何もしてねぇーな」

「うん。俺も」

「俺も」


「いや少しは特訓とかしろよ」


「お前とエクトだけで充分だろ?」

「そうだよ。オレらの出る幕なしだっての」


すると教室のドアが開き、オープ先生が入ってきた。

もうHRの時間だったらしく、立っていた他の生徒たちは急いで席に戻った。


「みんなおはよう」


「「おはようございます」」


「えー、レヴァンくんとエクトくん。国王様からなんだが、なんでも獅子王から挑戦状が来たそうだ。それについてちょっと話があるから放課後に城へ来てくれだそうだ」


「もう挑戦状が!?」

「速すぎだろ!」


俺達ではなくクラスメイトたちが驚いていた。


「オープ先生! 今回はどんなルールを指定してきてるんですか?」


シャルが手を上げて聞いた。


「ああルールはな。これはかなりの大規模戦争になるぞ。なんと50対50。レヴァンくんやエクトくんだけでなく、今回はお前たちも参加することになるぞ。間違いなくな」


「「‥‥‥えっ?」」


クラスメイト達の目が点になった。






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