第41話『シャルと約束の添い寝』
「あ~やっと着いた‥‥‥」
自宅の二階にある自室でレヴァンは溜め息混じりに言った。
荷物を適当に置いてベッドに身を投げる。
そしてそのまま枕に顔を埋めた。
「やっぱ我が家が一番落ち着くな‥‥‥」
この自宅に着くまで大変だった。
街のいたる所でテレビの人に声かけられるし、ファンには追いかけられるしで散々だった。
早く帰ってゆっくりしたい。
その気持ち一心で駆け抜けてきた。
なにより、シャルが例の約束のために早く帰りたがってたのが一番の理由だが。
「レヴァ~ン? 寝てないよね?」
もう来た。
部屋に荷物を置いてきたらしいシャルがドアをノックする。
「寝てないよ。まだ8時だぞ。どうぞ」
「おじゃましまーす」
ルンルン気分でシャルが入ってきた。
もう着替えたらしく、すでに寝間着姿だ。
速いよお前。
もう待ちきれないとでもいうのか。
「ふふふ、ついにこの時が来たねレヴァン」
「た、ただの添い寝だろう?」
「わかってるよ。何もしないよ何も」
じゃあなんで頬っぺた赤くしてんだよお前は。
「何かやる奴の言い方だぞソレ! 襲うなよ!? 頼むから!」
正直、シャルに襲われたら抵抗できる気がしない。
いや腕力とかの問題ではなく、理性的な意味で。
腕力なら余裕で勝てる。
「信用ないなぁ~。温泉ではスッキリさせてあげたのに、まだ信じてくれないの?」
う、それを言われるとグゥの音も出ないのだが。
「し、信じてるよ」
「ならさっそく添い寝しよっか!」
「え、もう!?」
「ダメ? ご飯もお風呂も済ませちゃったじゃん」
ご飯は列車内で、お風呂はアノンさんの旅館で出発前に済ませた。
あとは寝るだけ。
そう、寝るだけだ。
でも速いよ。
「そうだけどさ、まだ寝れる自信ないんだが?」
「それでいいんだよ。すぐ寝ちゃったらもったいないじゃん」
あぁ、なるほど。
シャルの企てている計画がやっとわかった。
眠くなる時間に来ては添い寝を楽しむ前に寝てしまうから。
「私ホンットに楽しみにしてたんだからね!」
言ってシャルは部屋の電気を消した。
一気に視界が暗くなる。
「お、おいシャル! 俺まだ着替えて‥‥‥」
「ぃいやっほぉおーっ!」
「うわっ!?」
シャルが俺の上にダイブしてきた。
柔らかいシャルの肢体が俺の全身を包み込むように重なる。
そのままシャルは驚嘆すべき速度で俺の背中に手を回してきた。
こ、拘束された!?
なんて手の速さだ!
驚くもシャルの胸が胸部に密着して、それどころでは無くなった。
さらにシャルの優しい匂いが俺の脳の緊張を解こうとする。
やばい。落ち着け俺。
「シャル、これ添い寝じゃ‥‥‥」
「まだ、もう少し‥‥‥」
それだけ呟いて、シャルは俺の首筋に顔を伏せた。
唇が当たってボゥッとする。
シャルはそれ以上はしてこなかった。
背中に手を回して抱きしめ、ただ身体を密着させる。
それだけだった。
「暖かいね」
シャルが耳元で囁いてきた。
その声はとても幸せそうだった。
「ああ、暖かいな。凄く」
やっと冷静になれてきた俺もシャルの背中に手を回して抱きしめた。
「あ‥‥‥」
シャルが少し色っぽい声を漏らす。
抱きしめ合う形になり、お互いに全身を密着させた。
お互いの熱を感じ合うように。
「レヴァン。私、今すごく幸せ‥‥‥」
「シャル‥‥‥」
「ずっとこうしていたいよ」
「そうだな。俺も‥‥‥ん」
シャルが俺の唇を塞いできた。
シャル自身の唇で。
突然で驚いたが、受け入れた。
シャルは約束どおり、ゴルト将軍の戦いで覚醒を果たし、俺を勝利へ導いてくれた。
だから今だけは、シャルのなすがままになろう。
ただ、シャルのわがままを受け入れてやろう。
そう思った。
重なる唇からシャルが俺の中へと入ってくる。
俺はそれを、受け入れた。
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