表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
5/255

第4話『奇跡の魔女シャル』

 ようやく美術室についた俺たちはそれぞれ席についた。


「オープ先生。美術室で何を準備するんですか?」


 手を上げて、俺は気になっていたことをオープ先生に聞いた。

 さすがに美術室で特訓ってわけでもないだろうし。


「何を言っておる。ソルシエル・ウォーでお前さんは素手で戦うつもりか?」


 オープ先生が教卓に手を置いて呆れ顔をつくった。


「え? いや、俺はもともとそのつもりでした」

「……あぁそうだったな」


 思い出したようで、オープ先生は後退気味の髪を掻いた。

 忘れないでよ先生。

 何年俺の担任やってんですか。


「うるさいぞレヴァンくん」

「は、はい! すいません!」


 なんでバレた。


「えーともかく。今から行うのは『魔女兵装ストレイガウェポン』の召喚だ」

「『魔女兵装ストレイガウェポン』! ……ってなんだっけ?」


 隣に座るシャルに聞いた。


「えっと、レヴァンのリクエストを聞いて、私がイメージして召喚する武器のことだよ」

「うむ。そのとおりだ。『魔女兵装ストレイガウェポン』は魔法をより使いやすくするための杖だと思えばいい。レヴァンくんのように手から発射させるのもいいが精度が悪いし射程も短い。『魔女兵装ストレイガウェポン』はそんな使い勝手の悪さを補うためにある。召喚した武器の性能はイメージした魔女に依存する。簡単に言えばライセンスギリギリのアイデア勝負だ。アイデア勝負」


 大事な事なのか二回も言ったオープ先生。

 何を簡単に言ったんだ?

 てかライセンスとかあるのか。


「ではまずシャルくんとレニーくんの中に眠っている魔道書を呼び出しなさい」

「「はい」」


 息もピッタリに返事をしたシャルとレニー。

 この二人は別に友達でも知り合いでもないらしく、今日初めて喋った程度の関係だという。


 意外と仲良くなりそうな感じだが。

 俺がそんなことを考えてると、二人は両手を絡め、うつむき、念じ出した。


 するとシャルからは赤いオーラが、レニーからは青いオーラが発せられ始めた。

 これは確か、その魔女の属性を表しているはず。


 シャルは赤だから炎。

 レニーは青だから氷だ。

 もし緑のオーラだったら風の持ち主だっただろう。


 属性は三つある。

 世間では【三大エレメント】と呼ばれ、細かくは


 ファイアエレメント

 アイスエレメント

 エアエレメント

 と呼称されている。


 少ししてからシャルとレニーの手元に光が集まり魔道書を形成した。

 二人は絡めた両手をほどき、ゆっくりと降下してくる魔道書を受け止めた。

 シャルとレニーがそっと目を開く。


「わ、私の魔道書……ちゃんと私の中にも有ったんだ」


 シャルが手にした魔道書を見て歓喜を口にした。

 心底嬉しそうにシャルは目を輝かせて魔道書を見つめている。


 それもそうだろう。


 俺と同じでずっと魔力ゼロの無能と言われていたシャルだ。

 そんな自分の身に、魔女としての証である魔道書が存在したのだからこれほど嬉しことはないだろう。


「良かったなシャル」

「ありがとう! ホンットに嬉しいよ!」


 満面の笑みを浮かべるシャルに、俺も幸せな気分になってくる。


「……あれ?」

「どうしたシャル」

「ファイアエンブレムの隣に、星みたいなエンブレムがある」

「星?」


 シャルが持つ魔道書の表紙を見た。

 シャルの属性を表すファイアエンブレムが記されている。

 その隣にもう1つ、星を描いたようなエンブレムがあった。


「なんだこれ? オープ先生ちょっと」

「ん、見せてみなさい」


 オープ先生はシャルから魔道書を受け取った。

 表紙を確認するオープ先生は、しばらく停止して、もうしばらくして身体を震わせ始めた。

 同時にオープ先生の顔が(信じられない!)といった驚愕のものに変貌した。


「こ、これはまさか……いや、しかしこれはグランヴェルジュの……」

「グランヴェルジュ? ……オープ先生?」


 俺がオープ先生の顔を覗き込むと、オープ先生は何かに気づいたようにハッと顔を上げた。


「そうか! シャルくんはグラーティア・ロンティアの!」


 なぜかシャルの母親の名前を呟いている。

 いったいどうしたんだ?


「シャルくん! ここを読んでみてくれ!」


 開かれた魔道書をシャルの前に置いて忙しない口調でオープ先生は言った。


「は、はい! えっと‥‥‥」


 シャルが指定されたページを見る。

 ついでに俺も見る。


 ……うん。

 大量のミミズがクネクネしてるような文字だ。

 んー文字なのかこれ?

 さっぱり分からん。


 魔道書は持ち主の魔女しか読めないと言うのは本当のようだ。


「ゼロと無限の究極魔法。ゼロの者に無限の可能性を与えん。与えるは秩序の無い無限の魔力。その名は――ゼロ・インフィニティ!」

「ゼロ・インフィニティ?」


 なんだそりゃと言う前にエクトが凄い勢いで立ち上がった。


「おいおいまさか! 【スターエレメント】じゃねぇだろうな!」

「【スターエレメント】!? ならシャルって!」


 言ってレニーがオープ先生を見た。

 オープ先生は深く素早く頷く。


「間違いない。シャルくんは『奇跡の魔女』だ!」


 その場にいる俺を含んだ全員が硬直した。

 時が止まったかのように。

 そして意外にも先に我に帰ったのはシャルだった。


「奇跡の、魔女? ……え、私が!?」

「シャルが『奇跡の魔女』!?」


 聞いたことがある。

 二つの属性を持って産まれてくる魔女が存在するという話を。

 それは炎・氷・風とは別の【星】属性という謎の多いエレメントだ。


 通称=スターエレメントで、この属性を持って産まれた魔女にだけ先ほどの魔道書に記された【スターエンブレム】がある。


 この【スターエンブレム】を持って産まれた魔女はここリリーザでは『奇跡の魔女』と呼ばれる。


 世界でもまだ6人しか確認されていないほど希少な存在だ。

 シャルは世界で7人目の『奇跡の魔女』となる。

 これは、なんか……凄いことになってきた!


「ゼロの者に無限の可能性を与えん、か。そうかようやく理解したぞ」


 興奮した様子でオープ先生はシャルに魔道書を返す。


「レヴァンくんとシャルくんが魔法を使えるようになったのはこの【ゼロ・インフィニティ】のおかげだろう」

「それ本当ですか?」


 確かに話を聞いているとそんな気がする内容だったが、俺はとりあえず聞き返してみた。


「うむ、間違いない。シャルくんのゼロ・インフィニティが『魔女の召喚』に影響して二人は魔法が使えるようになったのだろう。でなくては説明がつかんしな」


 確かに。

 今日魔力が沸いた説より遥かに説得力がある。


「私が『奇跡の魔女』とか信じられない。……ねぇレヴァン。これ夢じゃないよね?」

「気持ち分かるぜシャル。ここまで良いことが起こると現実味がなくなってくるよな。けど夢じゃないぜコレ。さっき頬つねってみたけど痛かったから」

「本当に? じゃあ私にもハグして」

「わかった」


 シャルの頬を軽くつねった。


「イタタタタ! なんで!? ハグって言ったじゃん!」

「え?」


 普通に聞き間違えた。

 いかん。

 思った以上に落ち着けてない俺。


「なにバカやってんだよ。リリーザ初の『奇跡の魔女』が誕生したってのに」

「うむ。エクトくんの言うとおりだ。シャルくんはリリーザ史上初の『奇跡の魔女』だ。これはめでたい」


「おお! まさに奇跡だなシャル! 今日は本当に怖いな! どれだけ奇跡が起こるんだ? 人生変わるぞこれ!」

「ホンットにそうだよレヴァン! ドキドキがおさまらないよ! ハグして!」

「後でな」

「じゃあキスして!」

「今度な」


「‥‥‥シャルとレヴァンっていつもこうなの?」

 レニーがエクトに聞いた。

「オレはもう慣れた」

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ