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第38話『リウプラングの学生たち』

やっとの思いでシャルとデートするに至った。


別れの挨拶をゴルト将軍と交わすまでに、随分と時間がかかってしまったのだ。


あのジフトスの説教が長く、ゴルト、レジェーナやビジュネールは相当にウンザリしていた。


レジェーナが早く帰りましょうとゴネたのが幸いして、ようやくジフトスの説教が終わる。


そこでやっとゴルトに別れの挨拶を告げることができ、今に至る。


「いやぁ~長かったね。あのライオンみたいな人」


隣を歩くシャルがやや疲れ気味な口調で言った。


「ホンットに説教の長い人だったな。よほどゴルト将軍が俺達に負けたのが腹立ったんだろうけど」


「あんな顔して友達思いなのかもねジフトスさんって」


「まぁ人は見かけによらんからな」


言いながら俺は桜の花びらが乱れ落ちる路上を歩き、目星をつけといた店を探す。

たしかこの辺りのはずだったが。


「きゃーーー! レヴァンさんよ!」

「やだ! まだリウプラングにいたんだ!」

「サインくださーーい!」


今度はなんだと声の方に視線をやると、そこにはシャルと同じ青い学生服を纏った女子高生たちが大勢いた。


その大群にあっという間に包囲され(しかもシャルは「ぎゃん!」と弾き飛ばされ)俺は握手会とサイン会を同時にこなすことになってしまった。


「暴君との戦い凄かったです!」

「本当にカッコよかったですよ!」

「リウプラングを取り戻してくれてありがとうございます!」

「あの付き合ってください!」


「こらあああああああああああああああああっ!」


最後の言葉にすぐさま反応したシャルが怒声を張り上げた。

同時に。


「随分と人気者じゃねぇか! この一年坊主がよぉ!」


知らぬ男性の声が聞こえて、俺と俺の周りにいた女子高生たちがみんなその声の方へ目をやった。


見れば俺よりちょっと背が高い男性がポケットに手を突っ込んで立っていた。

青い髪が特徴的だ。

やはり俺と同じ男子用の学生服を着ている。

さてはリウプラングの『魔女契約者学校ブレイバーズガーデン』の学生だろうか。


「見てロイグ・カーニーよ!」

「あ、本当だわ。ちょっとロミナ。あなたのお兄さんが来たわよ」

「うわぁ本当だ‥‥‥何しに来たんだろ」


女子高生の中から一人だけ、心底ウンザリしたような様子を見せる子がいた。


「ロミナ! そこに混ざってるのは分かってるんだぞ! 出てこい!」


怒鳴り上げるロイグと呼ばれた男。

すると「あぁもう!」と面倒くさそうな声を吐き、一人の女子高生が彼の前に出てきた。


それはオレンジ色のショートヘアーにヘアバンドをした細身の女の子だった。

シャルより少し小柄な少女である。


「どうしたのお兄ちゃん? レヴァンさんに人気を奪われて激怒ってるの?」


「ば、馬鹿を言うな! 俺はあいつに勝負を挑みに来たんだ! 他の女子高生を下がらせろ!」


勝負を挑みに来た?

俺に?

今さら学生レベルの相手をしてもな‥‥‥。


「やめときなよお兄ちゃん。昨日の試合も観たでしょ? 格が違うよレヴァンさんは。お兄ちゃんじゃ勝負になんないと思うよ?」


「舐めるな。俺はリウプラングのNo.1だ。あいつに勝って人気を取り戻‥‥‥いや、実力を証明してやる!」


コイツいま本音が出たな。

妹さんの言うとおり。

人気を奪われてショックなのは本当のようだ。

というかリウプラングのNo.1とか言ってたな。

てことはギュスタたちと同じくらいか?


どうしよう。

早くシャルとのデートに戻りたいのに。

当のシャルも俺に視線を向けて早く行こうよと告げている。

わかってるから待ってろシャル。


「おいレヴァンだったなお前。俺と勝負しろ!」


「悪い。俺はいまシャルとデート中なんだ。来年にしてくれ」


「「「デート中!?」」」


俺を囲んでいた女子高生たちが悲鳴みたいに叫んだ。

あのロミナという少女も一緒に。

いつ聞いてもこの声は胸が苦しい。

でも俺にはシャルさえいれば充分なのも事実。


「来年とかふざけてんのかお前は!」


「だって俺、今日の夕方にはエメラルドフェルに帰るし」


「ならば尚のこと勝負しろ!」


面倒くさいな。

ここは維持でも勝負は受けないぞ。

俺だって早くシャルとデートがしたいんだ。

そのために昨日は店を走りながら見て回ったのだから。


「勝負する前から結果はわかってる。あんたにはゴルト将軍ほどの闘気を感じない。俺の相手にはならないぜ?」


嘘はない。

ロイグからは本当に何も感じないのだ。

あのゴルトやジフトスから感じた威圧力のような気が、彼には微塵もない。

それだけで、ロイグがどの程度かわかってしまう。

相手にするだけ時間のムダだ。


「お前の強さの秘密を俺は知っているぞレヴァン。それはあのブサイクな女が持つ『ゼロ・インフィニティ』とやらのおかげだろう!」


「‥‥‥お前いまなんつった?」


シャルを指差して、こともあろうにブサイクという単語が聞こえたな。


「あ、レ、レヴァン! 私は気にしてないから早くデート行こうよ? ね?」


「お前は黙ってろシャル」


俺の前に立つシャルをそっとどけて、俺はロイグの前に立った。


「ふん。図星を突かれて怒ったか? 『ゼロ・インフィニティ』という『スターエレメント』がお前を強くしていると俺は端から見切っていたぞ!」


「そんなことはどうでもいい。お前さっきシャルにブサイクとか言ったな?」


「ん? ああ、お前があの女に夢中というのは噂で聞いていたからな。ああ言えば釣れると思ったのさ」


「なるほどつまり挑発か。なら今すぐ勝負してやる。お前の魔女は誰だ? さっさとリンクしろ」


「ロミナ!」


ロイグが叫んだ。

呼ばれたロミナは慌ててロイグの元へ駆けつける。


「ちょ、ちょっとお兄ちゃん! 本当に勝負するつもりなの!?」


「早くリンクしろ」


「聞いてよ人の話! 勝てないよ絶対!」


「レヴァンもやめて! こんなところで勝負なんて街の人に迷惑がかかるでしょ!?」


「シャル。自分の大切な女をブサイクと呼ばれて黙ってられる男はこの世にいないんだよ。街に関しては大丈夫だ。一発で終わらせる」


俺はあえてシャルとはリンクせず下がらせ、ロイグを待つ。

ロイグの方は、ロミナを黙らせリンクし終えたようだった。

まさか兄妹でソールブレイバーとは珍しい。


「お前、なんのつもりだ! リンクしろ!」


「『ゼロ・インフィニティ』のおかげで俺が強くなってると思ってるんだろ? 今からそれは勘違いだと教えてやるよ。ほら、さっさとかかってこい」


クイクイと人差し指で招く。


「馬鹿にしやがって!」


ロイグは槍と大型の盾を召喚し構えた。

俺は拳を鳴らして、ファイティングポーズをとる。


いつの間にか俺たちの周りには女子高生だけでなく街の人々も混ざって、勝負の行方を見守っている。


「行くぞ!」


喚いたロイグが一歩踏み込んだ。

なんて遅い奴だ。


ドンッ!


俺はロイグの鳩尾に本気の鉄拳をぶちかました。


「お、え‥‥‥っ!?」

『お兄ちゃん!?』


ロイグは膝をつき、桜の絨毯に身を落とした。

周りのギャラリーが、おおお!? と驚愕する。


「二度と人の女をブサイクなんて呼ぶな。いいな?」


俺は倒れたロイグに指差して言った。

聞こえているかどうかは、この際どうでもいい。


「さて、行くかシャル」


「あ、うん。え、行っちゃっていいのこれ?」


「勝負してやったんだ。いいだろ」


俺はシャルを連れて歩き出し、唖然とする女子高生たちや住民たちを置いてデートを再開した。


次回の更新は金曜です!


レヴァンを怒らすと怖いですね。

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