第35話『実はあの後』
「レヴァ~ン。起きてる?」
客室のドアがノックされる。
シャルの声だ。
ちょうど学生服に着替え終えたところだから良かった。
「起きてるよ。どうぞ」
「え、起きてたの!?」
シャルが意外そうな声を上げながらドアを開けてきた。
「なんだよ起きてたらダメなのか?」
「エクトくんがまだ寝てるって言ってたから」
「そのエクトが出ていく音で目が覚めただけだよ」
「そうなんだ。なら早くデート行こうよ。今日は夕方には帰っちゃうんだしさ」
「わかってる。だから起きたんだよ。少し待っててくれ」
最後にベルトを締めて服装を整える。
まだちょっと眠気が残っている。
でもこれ以上シャルを待たせるのは悪い。
「それにしても夜の温泉は良かったねレヴァン。脳ミソとろけそうだった」
「ぁ、ああ、そうだな」
温泉でしたことを思い出して、おもわず赤面してしまう。
実はあの後かなり大変だった。
何が、とは言えないが。
結論を言うと、シャルに助けてもらったと言うしかない。
「レヴァンったら本当にキスの後は興奮しっぱなしだったね。鎮まって良かったけど」
「いや、すまん、本当に‥‥‥」
「そんな謝らなくたっていいよ。理性にだって限界があるし」
「いや、そうだが本当に感謝してるんだ。お前が鎮めてくれなかったら、俺はきっと、あのままお前を抱いてた。自分の欲望に負けて。だから本当にありがとうシャル。お前のおかげで俺は無責任な行為を犯さずに済んだ」
「あれは私なりの妥協だよ? 本音を言うならあのまま襲ってもらいたかったし」
「シャル‥‥‥」
「でもレヴァンの信念を知ってるから、私なりに妥協してああしてあげたの。レヴァン、すごく辛そうだったしさ」
辛いなんてもんじゃなかったな。
自分の理性の脆弱性には呆れたくらいだ。
それにしても俺の信念、か。
俺を理解してくれているシャルだからこそ、ああして助けてくれたってことか。
そうだよな。
シャルは実際、俺を待っている側だ。
温泉でのあの情況は、シャルにとっては絶好のチャンスだったはず。
それでもシャルは、俺を助ける選択をしてくれた。
本当にシャルが恋人で良かった。
心からそう思う。
「辛かったよ。でもシャルのおかげでスッキリした。だから今日は感謝の印に思いっきり買い物でもなんでも付き合うよ。まかせとけ」
「じゃあ大人なホテルに‥‥‥」
「‥‥‥」
「じょ、冗談だよ冗談!」
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