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『将軍戦 暴君タイラント』5

ゴルトと互いの拳を握り合い、力比べ。

ミシミシとゴルトの握力で俺の骨が軋む。

完全にパワー負けしている。

さすがに骨が砕けそうだ。


「面白い男だよお前は。応援で本当に強くなる奴など初めて見たわ」


ゴルトが腹が立つほど余裕の笑みを浮かべながら言ってきた。

ギリリと俺の拳にゴルトの指が食い込んでくる。


「がっ! ぐ、ぅうっ!」


「だが、それももう限界のようだな。お前は良くやった。このワシを相手に素手でここまで善戦したのだからな。歴史初の学生対軍人だったが、申し分ない素晴らしい戦いだったと言えるだろう。お前は間違いなく歴史に残る」


「そうかよ!」


俺は悪あがきだと知りながらもゴルトの顔面に飛び蹴りをお見舞いした。

拳を封じられた俺にできる唯一の攻撃手段だった。

ゴルトの顔面に蹴りが直撃する。

ゴルトは目を閉じ、歯を食い縛り、俺の蹴りを受けていた。


そして直撃を受けたはずのゴルトの顔がニヤリと嗤った。

やはり、効いてない。


「楽しかったぞレヴァン・イグゼス」


「っ!」


繰り出した蹴りを弾かれ、そのまま頭突きを食らわされる。

続けざまにパンチとキックの猛攻が俺を襲った。

ガードしてダメージを抑えるものの、相手はビルさえ投げ飛ばす常人離れした怪力の持ち主。

奴の一発一発の威力は凄まじく、まるでハンマーで殴られ続けているようだ。


ガードに使っている両腕のダメージが一気に蓄積されていく。


勝てない。


目の前の強敵に俺は内心で弱音を吐いていた。

シャルとビジュネールのレベル差だけではない。

戦士としての戦闘力の差が、あまりにもある。


俺はどこかで自分の実力に慢心していたのかもしれない。

今日までトントン拍子に成り上がってきたから。


「これで沈め!」


ゴルトが構えの姿勢になったかと思うと、捻りを加えた右ストレートを放ってきた。

ガードこそしたが、その威力は今までのパンチの比ではなかった。


ゴルトの鉄拳が腹部にめり込んだ。

突き破られたような衝撃が腹に走る。


逃げ場のない衝撃が生まれ、俺はぶっ飛んだ。

大の字で倒れ、アスファルトを滑って行く。


勢いが死んで、俺は倒れたまま荒い息を繰り返す。


身体に力が入らない。

負けたくないのに。

立てよ俺。


しかし身体は、言うことを聞いてくれなかった。

もう限界だと、逆に訴えてくるばかりで。


何が限界だ。

甘ったれんな!

これくらいで!

立てよ!


ダンッ! と路面を踏みつけ、なんとか身体を立ち上がらせた。

でも、フラついてしまう。

膝に手をついて、倒れそうな身体をなんとか支える。

しかし腕もガクガクしている。

これ以上の戦闘は‥‥‥もう。


『レヴァン! やっと! やっと来たよ!』


「はぁ、はぁ、シャル?」


『やっと詠めるの! 私にも『魔法第二階層詞セカンドソール』が!』


「ほ、本当か!?」


『うん!』


シャルの弾んだ声に嘘は感じられない。

ついにシャルが覚醒したんだ!


俺の胸に、一つの希望が生まれた。

刹那!

ゴルトが俺の目前に急に現れた。


「あ‥‥‥っ!?」


「よそ見しとる場合かあああ!」


ゴルトの拳が俺の顔面に向けて放たれた。

避けられない!

やられる!


その時だった。

ゴルトの肩を、青い光を纏った弾丸が貫通した。


「ぐぅおわああああ!」

『狙撃!? どうして!?』


痛みで叫ぶゴルトと、まさかの狙撃に戸惑うビジュネールの声。


今の狙撃は、まさか。


『今だよレヴァン!』


シャルに言われ、俺は狙撃によって膝をついたゴルトに拳を突き出す。


「まだだああああ!」


雄叫びをあげてゴルトが立ち上がってきた。

肩から光の粒子を飛び散らせながら、ゴルトは拳を突き出してきた。


「うおおおおおおおおおおおおおおおおおおお!」

「ぬあああああああああああああああああああ!」


互いの拳がぶつかり合う。

そして。


『『エクスプロード・ゼロ』!』


シャルの声が響いた。


俺の拳が蒼く光り、次の瞬間にはゴルトの巨体を覆い尽くすほどの大爆発が起こった。


それは、煌めく蒼き爆炎だった。


ゴルトを容易く吹き飛ばし、ビルを5~6件ほど貫通していく。

ゴルトの悲鳴さえ聞こえぬ速度で吹き飛ばされていった。


まさに一撃必殺の威力。

これがシャルの『魔法第二階層詞セカンドソール』か。

『エクスプロード・ゼロ』など聞いたこともない魔法だが。


『ゴルト・タイラント 戦闘不能 エリア外へ』


撃破のアナウンスが流れた。


『試合終了! 勝者レヴァン・イグゼスとエクト・グライセン!』


観客達が歓喜の大喝采をあげた。


勝てた‥‥‥。


将軍に、勝ったんだ。


『か、勝ったよレヴァン! 勝ったよ! 勝った勝った!』


「あぁ、シャルの‥‥‥おかげ、だ」


俺は疲労とダメージで倒れた。


『っ?! レヴァン!? レヴァン! レヴァン‥‥‥レヴァ! ‥‥‥レ』


シャルの声が遠くなっていき、やがて聞こえなくなった。




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