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第206話『戦えないなら』

「一国の王が言うことか!」


 俺はグランヴェルトの胸ぐらを掴み、怒りのままに叫んだ。


 怒声は青みかかった夜空に虚しく響く。

 当のグランヴェルトにもまるで俺の怒声は響いていないようで、忌々しく嗤っていた。


「何がおかしい!」


 叫ぶ俺を無視して、グランヴェルトは胸ぐらを掴んでいる俺の手を弾いてきた。


「強いだけの王に、器も何もないと言うことだ」

「……っ!」

「今回の決戦……是が非でも受けてもらうぞレヴァン」

「断る!」

「ならば前にも言った通りリリーザの連中を皆殺しにすることになるが?」

「そうはさせん! あんたは今ここで俺が倒す!」


 俺は拳を握りしめてファイティングポーズを取った。

 シャルがいない俺には格闘しかない。

 素手で勝てるか? と自問した刹那、俺の鼻先に、見知らぬ刃が突き付けられていた。


「!」


 それは……グランヴェルトが握る深紅の刃を持った大型の剣だった。

 形状は俺の『グレンハザード』に良く似ている。

 刃の峰に伸びる銃口と、リボルバーの付いた銃身とトリガー。

 それはまさしくバイアネットタイプの武器だった。

 

 いつの間に……いや。

 いったいどこから?

 これは『魔女兵装ストレイガウェポン』なのか?

 なぜ魔女とリンクしていないグランヴェルトが『魔女兵装ストレイガウェポン』を?


『やめておけレヴァン・イグゼス』


 俺の思考に答えるように、ある女性の声が聴こえた。

 その声は聞き覚えのある声で、グランヴェルトの中から聞こえていた。


『シャル・ロンティアのいないキサマなど、グランヴェルト様の敵ではない。自分が『ゼロ・インフィニティ』の力を借りただけの無能だと忘れたか?』


 他人を見下す強気なこの口調。

 やはり間違いなく、こいつは魔女ルネシア・テラ。

 ずっとグランヴェルトとリンクしていたのか。


「ルネシアさん。聞いていたなら今のグランヴェルトの言葉を何とも思わないのか?」


 自分のいない未来など興味ない。

 この発言はそのまま国を捨てている言葉になる。

 だから王が言っていい言葉ではない。


『思わんな』


 即答。やはり聞くだけ無駄だったか。

 相手の当然とも言える反応に、俺は内心で舌打ちした。


 すると俺の鼻先に突き付けられていた銃剣の切っ先がゆっくりと落ちていく。

 グランヴェルトが武器の構えを解いたようだ。


「阿呆なことは考えるなレヴァン。お前はただ、明日俺と戦えばそれでいい。それでこの大陸が沈み、みなが死ぬ結果になろうとそれはそれ。お前たちの運命など所詮その程度だっただけの話だ」

「ふざけるな!」


 あまりに勝手な暴論に、俺は腹の底から怒りの声を張り上げた。


「あんた達が戦いを諦めればいいだけの話じゃないか!」

「ふ、有り得ん話だ。それよりもリミッターが解除される前に俺を倒す可能性に賭けてみるんだな。最もそれが出来ればの話だが」


 言い終えて踵を返し、グランヴェルトは高笑いをしながらバルコニーから去って行った。

 

 俺はその背中を、歯を食い縛りながら見送るしかなかった。



「『ゼロ・インフィニティ』にリミッターがある!?」


 ガーネディアの休憩室にてシャルが俺の言葉をそのままに叫んだ。

「そうだ」と俺は返す。


 同じく休憩室にいたエクトとレニー。

 そしてリビエラとベルエッタも信じられないと言った顔をしていた。

 先程のグランヴェルトとの会話を全て話したのだ。

 グランヴェルトとルネシアが何を考え、どういう結末に持っていこうとしているのかを。


 シャルの『ゼロ・インフィニティ』とルネシアの『カオス・インフィニティ』をぶつけ合うのは危険なことだとも説明した。


「あいつらそのリミッターってのがあるのを知っていて、それでも戦おうって言うのかよ?」


 エクトの問いに俺は頷いた。

 

「グランヴェルトもルネシアも、大陸を沈めるのを良しとしている」

「そんな……グランヴェルト様が、そんなことを……」

「あんまりですわ。あんまりですわよそんなの……やっと……やっとサイスに選んでもらえたのに……」


 自国の王に見捨てられていた事を知るはめになったリビエラとベルエッタは顔を青ざめさせていた。

 無理もない。


「リビエラさん。ベルエッタさん。この事をどうかノア将軍たちに伝えてください。それでどちら側につくかは、それぞれの判断に任せます」


「レヴァン様……わかりました」

「了解しましたわレヴァンさん」


 それぞれ返事をしたリビエラとベルエッタは休憩室を出ていった。

 もしこれでノア将軍達がこちら側についてくれれば、心強いことこの上ないのだが、そう上手く話が回るとも思えないのは確かで。


「レヴァン。どうするつもり?」っとレニー。


「考えはある。この城『ガーネディア』と『リオヴァ城』を使ってグランヴェルトを倒すんだ。俺とシャルが戦えない以上、他に方法はないと思う。シャル! シェムゾ団長に連絡を取ってくれ」

「了解!」

「エクトとレニーには、万が一の事態に備えて通常兵器を装備して待機してもらう。いいか?」

「当たり前だ。まかせろ」

「また力になれて嬉しいわ」

「ありがとう二人とも。どうかよろしく頼む」


 グランヴェルト……お前の思い通りにはさせないぞ。

 いずれ我が子が踏むこの大地を沈めさせやしない!

  

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