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第19話『魔女のあれこれ』

「お前ら聞いたぞ!」

「おう!今度は国王様とオープ先生とバトルするんだってな!」


翌日の朝っぱらから、教室に入るなりクラスメイトたちに掛けられた言葉がそれだった。

どっから仕入れたのか知らないが情報が早いこと早いこと。


「『暴君タイラント』に挑ましてもらうには国王様に認めてもらわないといけないからな。それで勝負することになったんだ」


「ほぇ、よくやるなぁ‥‥‥」

「まてまて。それより気になることがある。今日はオープ先生の魔女も来るってことか?」

「来るだろそりゃ」

「どんな人なんだろう?」

「オープ先生の奥さんでアノン・トスターって名前らしいぞ。前にオープ先生から聞いたことあるし」

「オープ先生の奥さんかぁ。オープ先生があんなんだから、そんな綺麗な人でも無さそうだな」


失礼だろお前ら。

オープ先生も昔は髪もあってカッコ良かったかもしれないぞ?

そもそもオープ先生の容姿と魔女の容姿は関係ないし。


そうツッコミを入れようとしたらガラリと教室のドアが開く音がした。

俺もクラスメイトたちもそこを注視した。

噂をすれば影。

オープ先生だ。

まだ朝のHRの時間ではないのに早いな。


「お前たち『魔女の祭殿』の瓦礫の撤去が最低限終わったらしい。魔法陣も無事だから今日は残りの『魔女の召喚』を済ませるぞ。8時30分になったら廊下に並んで『魔女の祭殿』に向かう。レヴァンくんとエクトくん。そしてシャルくんとレニーくんは教室に残って自習だ」


「――あのオープ先生。その後ろの方は?」


レニーがオープ先生の後ろに立っている女性を指差して聞いた。

その女性は二十代ほどの容姿で、結んだ黒い髪と紫色の瞳が特徴的だ。

スタイルの良い身体でメイド服を綺麗に着こなしている。

なんでこんな所でメイド服を着てるのかはわからないが、ハッキリ言ってオープ先生とは見事に不釣り合いな美人だ。

‥‥‥まさか彼女がオープ先生の?


「あぁ、ワシの嫁だ」


「「「ふざけんなああああああああああっ!」」」


クラスメイトたちの魂の叫びが轟く。


「アノン・トスターと申します。以後、お見知り置きを」


機械のようにペコリと御辞儀するアノン。

さすがメイドさん。

御辞儀の角度がキッチリ30度だ。


いや、それにしてもフレーネ王妃といいこのアノンさんといい、なんで年配の魔女さん方はこんな若々しいのだろう。

戦士と魔女の年齢は基本的に同い年になるはずなのに。

いま思えばグラーティアも見た目は凄く若い。

シャルの母親と言うより、シャルの姉と呼んでも違和感がないほどだ。

グラーティアは三児の親だし、もう少し老けていても良いものだが。

それとあのグランヴェルトの魔女ルネシアもだ。

グランヴェルトは四十代だと聞いているが、あのルネシアという魔女はとてもそうは見えなかった。

なんでだろう?

魔女は基本的に若作りという法則でもあるのだろうか。



『高校生になってから普通の1日を過ごした記憶がないわ』


エクトの魔女として召喚されてから四日目の昼休みにレニーが言った。

俺は今エクトと共に学校のグランドをひたすら走り込んでいる。

最近は忙しかったからトレーニングが疎かになっていた。

今日の模擬戦のためにもアップしておかねば。


『本当にそれだよ。しかも今日は放課後に国王様とオープ先生と模擬戦あるし。やっぱり普通の1日じゃないね。学校で勉強してそのまま帰ったことないや』


俺の中でシャルが苦笑する。

‥‥‥ていうか。


「なんでお前らリンクしてんだよ」


俺は疑問をぶつけた。

ただの走り込みなんだからリンクする必要はまったくない。


『いやぁ~あのアノンさんって人に若さの秘訣を聞いたらさ「リンクです」って答えられたんだ。なんでも魔女ってリンクしてる間は身体に時間の影響が少なくなるんだって』


「それ本当かよ!」


『うん。だからこうしてヒマさえあればリンクしようかと』


なるほど。

朝の疑問はこれで解決した。

魔女は基本的に若作り、という訳ではなかった。

単純に老化が遅れているだけか。

ちょっと羨ましい気もする。


『あ、それから魔女の成長についてお母さんに教えてもらったことなんだけど、私たち魔女の持っている魔道書の中には時計があって、魔女として召喚されたときにそれが回り出すの。たくさん時間が経過すればするほど魔道書は魔女に馴染んで新しい魔法が詠めるようになるみたい。でも普通にしてたらその時計の回転速度は凄く遅いらしくて』


「その回転速度を上げるにはどうしたらいいんだ?」


俺の隣を走るエクトが聞いた。


『なんか早くなる瞬間があるらしくて、それが格上の魔女を相手にした時とか、自分の感情が昂っているときとか。それこそ必死になっている時が一番早くなるみたいだよ』


なるほど。

俺は内心で頷いた。

時間経過で新しい魔法が詠めるようになっていくなら大人たちの魔女がやたら最大レベルばかりなのも納得がいく。


「ならお前らずっと必死になれ」


出たよエクトの無茶振り。


『いやそんなこと言われても‥‥‥』


『ねぇ‥‥‥』


普通に困ってるシャルとレニー。

たしかに必死になれって言われても、戦闘中でもない限りそれはかなり難しそうだ。

人間、必死になるには何かしら理由がいるもんだし。

常時必死とかさすがに無理だ。


まぁそのためにグラーティアがシャルとレニーにフレーネ王妃とアノンさんを用意したのだろうが。


なんにせよ、今回の戦いは高レベルの魔法がどれだけ驚異か、どんな風に対処して戦えばいいのかを身をもって学ぶ事ができる大事な戦いだ。


シャルとレニーだけじゃない。

俺とエクトにとっても成長するチャンスなんだ。


今現在の俺達の実力がどこまで通用するか、試してやる。


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