表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
210/255

第179話『情報拡散』

「──リリオデール国王様。私はレヴァンを次期団長として正騎士団に入団させたいと考えています」

『うむ。その件に関しては私も賛成だシェムゾ団長。彼ほどの男ならば君の後継者に相応しい』

「ありがとうございます。リリーザへ戻ったらさっそく入団試験を行いたいと思っています」

『む? それは早すぎないかシェムゾ団長。レヴァン君はまだ高校一年生だ。せめて卒業してからにしてはどうだね?』

「仰る通りです。ですがレヴァンがこのままグランヴェルトを見事撃破したならば結果は同じになると思います。どのみち入団するのなら、私は彼を早く正騎士団に入団させてしまいたいのです」

『いやしかし、王国を守る正騎士団の次期団長が高校中退だと格好つかんのではないか?』

『またあなたはそんなつまらない事を言って……』

『フレーネは黙ってなさい』

『はいあなた』

『シェムゾ団長。レヴァン君の将来を思うのなら高校卒業まで待つのも一つだと思うぞ?』

「将来を思うのならばこそ、卒業まではさすがに待てません。私の娘シャルがレヴァンの子供を身籠っているのです。それを認め許した身としても、早くレヴァンには正騎士団という職についてもらいたいのです。どうか国王様、御許しを」

『ぇ──……ん、いや、ちょっと待て。待つのだシェムゾ団長。今、なんと申した?』


「私の娘シャルがレヴァンの子供を身籠っているのです」


『あらま! おめでとうございますシェムゾ団長。ついにお祖父ちゃんですね』

「ありがとうございますフレーネ様。あまり驚かれないのですね?」

『あの二人ならいつかやると思ってましたから。……あらあなた、どうしたのです? あなた?』



「──とまぁこんな感じで口を滑らせてしまってな。すまなかったレヴァン」


 テーブルの向かい。

 レニーの隣に座ってシェムゾさんが頭を下げてきた。


「あ、いえ……」


 どうしよう。

 想像以上に自然な流れで口を滑らせていたから物申しにくい。

 しかも内容が完全に俺とシャルのために言ってくれてることだからなおのこと。

 むしろこれは感謝しなければいけない事だ。


「むしろありがとうございますお義父さん。俺とシャルのために国王様に進言なさってくれて」

「いや……本当はお前の入団が決まってからシャルの妊娠の事を国王様に伝えようと思っていたんだがな。その方が話もスムーズだったはずだからな」


 確かにそうかもしれない。

 けれど、俺とシャルの勝手を認めて、ここまで支援してくれるシェムゾさんをそもそも責める権利など俺にはない。

 

 感謝しかないのだ。

 シェムゾさんの期待には絶対に応えたい。

 

「あの、シェムゾさん」


 レニーが隣のシェムゾに口を開いた。


「ん? どうしたレニー君」

「今の話ならまだ国王様と王妃様にしかシャルのこと話してないですよね? オープ先生や学校のみんなにはまだバレてないんじゃ」

「いや、その、実はだな。その電話の席にオープ先生もいたらしくてな。たぶん聞かれてると思う」


 なんでいるんだよオープ先生。

 遊びに来てたのかな?


「ぁ──……えと、どんまいレヴァン」

「お、おう」


 今日の今さっきオープ先生に聞かれたなら、早くて明日の朝には俺とシャルの事は学校のみんなに知られることになる。


 どうしよう。

 ホントみんなどんな反応するかドキドキしてしまう。

 ギュスタ先輩やシグリー先輩にも何て言われるか。

 シャルの姉であるロシェルさんとリエルさんにもだ。


 クラスメイトのみんなもどんな顔して俺を見てくるか。

 とくにオープ先生には、思いっきり怒られるかもしれない。


 いや、やめよう。

 こんなことは端から覚悟の上で事に及んだんだ。

 何と言われようとも、男らしく凛として結果を出すまで。

 

 正騎士団に入団して、グランヴェルトも倒す。

 その結果をもって黙ってもらう。

 誰にも俺とシャルの批判はさせない。


「レヴァン。あたしとエクトはあなたの味方だからね。それだけは絶対だから」

「ありがとうレニー」


 ……不思議だ。

 ありふれた言葉なのに、そのレニーの言葉に撫でられ、強ばっていた俺の心が妙に安らいだ。

 友達の言葉ってのは、こんな時やたらと効くもんなんだな。


 得心して、俺はまだ皿に残っている肉を食べた。



 朝になった。

 リリーザの『エメラルドフェル』にある『魔女契約者高等学校ブレイバーズガーデン』へとオープは向かう。


 今日はレヴァンたちが帰国する日だ。

 と言ってもここ『エメラルドフェル』に着くのは夜中になるだろうが。


 少し駆け足で『1年1組』の教室へと入った。

 そこにはHRを待っている生徒たちが席についていつも通り待っていた。

 オープは教卓の前に立つ。

 すると一人の生徒が声を上げた。


「起立! 気をつけ! 礼! ……着席!」


 毎日やっている朝の一礼を終えて、オープは教卓に手をついてクラスメイトたちを見回した。


「みんなおはよう。ちょっと大変な情報が入った」


 クラスメイト達がみな疑問の顔をオープに向けてくる。

 かまわずオープは答えた。


「レヴァンくんとシャルくんの間に子供が出来たそうだ」


評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ