第177話『珍しい組み合わせ』
「あ、レヴァン」
「お、レニー」
俺がシャルの部屋から廊下に出たとき、ちょうどそこに学生服姿のレニーがいた。
「ちょうど良かったわレヴァン。今から晩御飯食べに行くんだけど一緒にどう?」
まさかのレニーから食事の誘いがきた。
俺もちょうど晩飯を食べに行くつもりだったからこれはナイスタイミングである。
「良いタイミングだよレニー。俺もちょうど食べに行くところだったんだ。……エクトはどうしたんだ?」
「なんか食欲ないって言って来てくれなかったのよ。そっちこそシャルは?」
「まだ寝てるよ。グラーティアさ……お義母さんが側にいてくれてるから心配はないけど」
「あ、そうなんだ。じゃあ二人で行きましょうか」
「レニーと二人で?」
「嫌?」
「嫌ってわけじゃないけど、なんか初めてだなって思って……けっこう長く一緒にいたつもりだったけど、こういう機会ってなかっただろ俺たち」
「……そう言われるとそうね。レヴァンとゆっくり話したことなかったかも」
「だろ? 今回は良い機会かもな」
「そうね」
俺は廊下を先行してエレベーターの扉を開けた。
中に誰もいないことを確認して乗る。
『開ける』のボタンをレニーが乗るまで押しっぱなしにして、レニーが乗ると同時に閉めた。
『帝国ホテル』の食堂は二階だったから、二階のボタンを押す。
エレベーターの扉が締まり、降下を開始した。
「お互い、目の前の青春に夢中だったのかもね」
隣でレニーが呟く。
俺はレニーを見た。
「最初の頃はあたし、エクトについていくのでいっぱいいっぱいだったし、なんか余裕なかったのかも……」
「そうだったな。あいつけっこう強引だから、レニー振り回されてたな」
「そうなのよ。まぁあの強引さに助けられてたところもあるんだけどね。レヴァンはどうだったの?」
「そうだな……俺も最初の頃は魔法を手に入れて、シャルをパートナーに出来て、かなり有頂天になってた気がする。先に進むことばっかり考えてたな」
「やっぱり?」
「ああ」
こうして改めて考えると、確かにレニーの言うとおり、お互い目の前の青春に夢中だったんだと分かる気がした。
いや、というよりレニーが自分のことで精一杯だったんだろう。
俺はたぶん、シャル以外の女性に近づかないように無意識にレニーと距離をとっていたのかもしれない。
大切な友達だと見れば、そんな距離をとる相手でもないというのに。
「ま、今日はせっかく二人っきりの食事なんだし、ゆっくり話しをしましょうよ。レヴァンには聞きたいこともあるし」
「なんだ聞きたいことって?」
「エクトとレヴァンの出会いについて聞いてみたいのよ。エクトに聞いても「いつの間にか親友になってた」ってしか言ってくれないもの」
「いやエクトの言葉通りだぞ? そんな大したエピソードなんてないからな実際」
「良いわよ別に。聞きたいだけだから教えてよレヴァン」
「……仕方ないな。つまんなくても文句言うなよ?」
「言わないわよ。ありがとう」
言い終えるとチーンと音が鳴り、エレベーターの扉が開いた。
二階についたようだ。




