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第157話『他の戦友たち』

『あああああ! ついに! ついに! ついにレヴァン・イグゼス選手とエクト・グライセン選手が『剣聖』と『戦狼』を撃破! あの歴代最強だと言われていたグランヴェルジュの将軍を全て撃破しました! 歴史的大事件! 歴史に刻まれる超戦果! 凄すぎます!』


『我々は今、奇跡を観ているのでしょうか!? いや、もう、観てますね奇跡を! みなさん! 今この瞬間を目に焼き付けてください! 歴史に残る彼等の勇姿を!』


 テレビのアナウンサーがハイテンションに叫びまくっている。

 それも無理はなく、まさに歴史に残るであろう学生二人の大活躍だからだ。


 そう。

 今まさに、レヴァンとエクトはグランヴェルジュの将軍を全滅させた。

 その瞬間をギュスタは目に焼き付けていた。


 首都エメラルドフェルにて『魔女契約者高等学校ブレイバーズガーデン』の体育館に設置された大型ディスプレイ。

 その画面越しで、この歴史的瞬間を、しかと目に焼き付ける。


 刹那、体育館にいる全生徒達が一斉に歓声を弾かせた。


「すっげぇ! 本当にやりやがったよあいつら!」

「無能とお坊ちゃん……いや、レヴァンとエクト。やっぱすげぇよあいつらマジで!」

「レヴァンかっけぇなオイ! 圧倒的だったぞ!」

「シャルいつの間に『魔法第四階層詞フォースソール』まで詠めるようになってたのかしら? 本当に凄いわね」

「レニーさんも、なんかサラッと凄いことやってたわよ!? 全部の魔法使ってなかった!? 超カッコいい!」


『1年1組』のクラスメイト達が弾んだ声でそれぞれ言葉を口にする。


「強い強いとは思っていたが、まさかここまで勝ち続けるとはなぁ」


 そう口にしたのは、盛り上がる彼等の担任オープ先生だった。

 隣で彼の魔女アノンがクスリと笑う。


「そうですね本当に。自慢の生徒ですね」

「はは、まぁ、そうだな」


 オープ先生は口元を緩めながら後退気味の頭を撫で、レヴァンとエクトが映る画面を見やる。


「何があったか知らんが、妙に大人っぽい顔になりおって」


 満更でもなさそうに、嬉しそうにオープ先生は呟いていた。

 そんな彼を尻目に、ギュスタはまたディスプレイに視線を戻した。


 拳を突き付け合うレヴァンとエクトの姿がそこに映っている。

 彼らはよくああやって拳を突き付け合っている。

 あれはきっと、彼ら流の挨拶なのだろう。


「……なんて言うか、ここまで来ると、もう本当にカッコいいとしか言い様がないな」


 我知らず、ギュスタはそう口にしていた。 


「同感ですね。男の僕が見てもカッコいいと思いますよ。あいつら」


 隣のシグリーが苦笑しながら答えてくれた。

 

「本当にカッコいい奴って、男でも女でも魅せられちゃうもんね」


 シグリーの傍らに立つ魔女リエルが言って、ギュスタの横にいるロシェルが「そうね」と微笑んだ。


「エクトくんも強かったけど、レヴァンくんは強くなりすぎね。あの『剣聖』との戦いは勝負になってなかったわ」


 ロシェルの言うとおりだと思った。

『剣聖』と戦っていたときのレヴァンの表情は、何やら怒りに満ちていた。


 いったい何をしてあの優しいレヴァンをあそこまで怒らせたのかは知らないが『剣聖』の惨めな敗北はまさにそれが原因だろう。


 あれだけ悲惨な結果になったのは間違いなく。

『剣聖』がレヴァンを怒らせたからだ。


 でなければ『武器を装備しながらも、それを使わず素手でひたすら殴る』などという完全に相手を舐めた、侮辱するような、露骨な手加減などレヴァンはしないはずだ。


 本当に、どうやったらあのレヴァンをあそこまで怒らせられるのか。

 レヴァンは、何をそんなに怒っていたのだろう。



 リウプラングの『魔女契約者高等学校ブレイバーズガーデン』でも、レヴァン達の勝利は中継で観られていた。


 マールのいる体育館は、まさにその勝利の映像を目の当たりにした全生徒達が宴のごとく歓喜している。

 熱を持って大盛り上がり真っ最中だ。


「勝ったんだ! やっぱりエクトさんとレヴァンさんは凄いや!」


 とても年下とは思えない二人の活躍にマールは心底カッコいいと感じてそう口にした。

 すると隣でレイリーンが呆然としていたのに気づいた。


「レイリーン?」

「……あ、いや、すまん。レヴァンがあまりにも凄かったものでな」


 我に返ったレイリーンは垂らしていた腕を組んで、一息つく。


「たしかにレヴァンさん凄かったね。『剣聖』さんが相手になっていなかった」

「いや、それもそうなんだが、私が驚いたのはレヴァンが怒っているところだ」

「怒っているところ?」


 マールは首を傾げた。

 たしかに画面越しでも伝わってくるレヴァンの怒りの雰囲気。

 それはさすがに感じ取っていたが、そんなに驚くことだろうか?


 何かしらのやりとりがあって、レヴァンはあの『剣聖』に怒りを覚えたのだろうことは察しがつくが。


「わかるぜレイリーン」


 そう反応してきたのは意外にもあのロイグだった。

 レイリーンはロイグに視線を向けた。

 ロイグは視線を画面に向けたまま、マールの隣で腕を組み口を開く。


「エメラルドフェルで怒鳴られた時とはレベルが違うな」

「……ああ。私もそう思っていた」


 そう言えばロイグとレイリーンは、一度レヴァンに思いっきり怒鳴られた事があった。

 一度レヴァンに怒りを向けられた二人だからこそ分かる違いというやつだろうか?


「あいつ本気でキレるとマジで怖ぇな」


 ロイグが苦笑する。


「同感だ。何をあんなに怒っていたのかは知らんが」


 レイリーンも同じく苦笑した。


「もぉ~お兄ちゃんもレイリーンも、今はそんなことよりお祝いでしょ? せっかく歴史にも残る凄い事を友達がやったんだからさ」


 ロイグの妹であり魔女でもあるロミナが呆れながら言った。

 そのままマール達の前に立ち、ロミナはニコリと笑う。


「今日学校終わったらみんなで晩御飯食べない? 友達の勝利を祝うつもりでさ」


「あ、いいですねそれ! 賛成です!」

 マールは手を上げながら声を弾ませた。


「このメンツでか? んー、まぁたまにはいいか」

 ロイグも反対意見はなかった。


「わ、私もそれ参加なのか?」

 と、ここでレイリーンが戸惑いの声を上げた。

 ロミナが怪訝な顔を浮かべる。

「そりゃそうだよ。なんで?」

「いや、なんでって、私は……」

「友達と食べるご飯は美味しーよ?」


「え?」っとレイリーン。

「え?」っとロミナ。


 しばらく二人は見つめ合い、レイリーンが口を開いた。


「友達? 私が?」


 レイリーンが果てしなく疑問の声を吐いた。

 たしかにレイリーンがそう思うのも無理はないと、マールにはわかった。

 ぶっちゃけ彼女には友達らしい友達がいない。

 他人を見下す言動が多く、なかなかに高圧的な態度も多いから仕方ないのだが。

 彼氏として、婚約者としてマールはレイリーンにそれらを改善せよと言ってはいるが、成果がまるで出ないので困っていた。


「……え!? もしかして友達だと思ってくれてなかったの!? ちょっとショックなんだけどレイリーン……」

「あ、いや! だって私は二年生だし、ロミナお前は三年生じゃないか!」

「関係ないし! てか学年を気にしてる割には私のこと呼び捨てでしかも『お前』って呼ぶんだ?」

「あ……」

 

 自分の矛盾にようやく気づいたレイリーンが顔を真っ赤に染めた。

 そのまま俯いて黙ってしまう。


「あーそんなに落ち込まなくていいよレイリーン。レイリーンはそのままでいいから。私は受け入れるよレイリーンのこと」

「な、な!? 何を言ってるんだお前は!?」


 ロミナの言葉にレイリーンは更に赤くなって怒鳴った。


「あ、いつものレイリーンに戻った」

「やかましい!」


 そんな二人のやりとりを眺め、ロイグは笑った。


「受け入れる、か。どっかで聞いたセリフだぜ」

「そうなんですか?」


 マールが聞いた。


「ああ。ちょっと強化合宿の時にな」

 

 何かを思い出したかのようにロイグは頷いた。


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