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第150話『氷の巨狼』

『『ブリザード・フェンリル』発動!』


 あのライザと呼ばれていたキツネ女がついに『スターエレメント』の名を唱えてきた。

 凄まじい勢いでベオウルフの全身が凍りついていく。


 やっと使ってきやがったか。

 待たせやがって。


 ──それにしても今レニーがさりげなくとんでもない事をやっていた気がする。


 レニーは今さっき『魔法第四階層詞フォースソール』の『アイスブラスト』を使ったばかりだ。

 なのに、なんでだ?


 エクトは自分の周りに展開されたままの『アイスシールド』と『ブルーストライカー』を横目で見て疑問に思った。


「おいガキ!」


 突如ベオウルフに呼ばれて、エクトは視線を奴に戻す。

 顔まで凍りつく前に、奴はエクトを見て不敵に嗤って見せてきた。


「ありがたく思え。使ってやるよ『スターエレメント』をな!」


 言い終えて、顔まで凍りついたベオウルフ。

 奴の全身を覆うその氷は次第に増加し、みるみる間に巨大化していく。


 それはついに四つん這いの形を成し、輝く青い身体、鋭い爪、鋭利な尻尾、狼の顔と牙。


『戦狼』を象徴する『氷の巨狼』が、その姿を完成させた。


 これが奴の『スターエレメント』か。

 レヴァンから聞いていたが、思った以上にデカい。

 軽く10メートルはある。

 その巨体から発せられる冷気も本物で寒い。


「出し惜しみは無しだ。こっからはお互い全力バトルと行こうぜ」


『氷の巨狼』が大口を開けてベオウルフの声を発した。

 エクトは『ステラブルー』の片割れを肩に乗せ、ニヤリと笑う。


「ああ構わねぇぜ。オレもテメェが『スターエレメント』を使ってくるのを待ってたんだ」


「ぁあ?」


「全力のテメェを倒さねぇと意味ねぇだろうが。オレもこれでやっと本気が出せるってもんだ」


「っ!?」


 ベオウルフが息を呑む気配を見せた。

 氷の狼面じゃハッキリとは分からないが、かなり驚いている雰囲気を感じさせてくる。


 よほど驚愕したのだろう。

 オレがまだ本気じゃなかったことに。


「本気でいくぜ。勝負だベオウルフ!」

「──いいぜ。見せてみろよ! てめぇの本気って奴をなぁ!」


 吠えた巨狼が一歩、地を蹴った。

 ギュンと風を切って一気に間合いを詰めてくる。

 そしてエクトを狙った右前足が振り下ろされた。


 それは恐ろしく速かった。

 スケール速度で考えても、驚異的なスピードである。


 しかしエクトはそれを難なく避けた。

 右前足に叩かれた地面は轟音を響かせ亀裂を生み破砕させ、爆発したかのように土煙を撒き散らした。

 

 とんでもねぇパワーだぜ。こいつは。


 エクトは右へ左へとジグザグにバックステップを入れ、その動作の中に射撃も混ぜて攻撃する。

『ステラブルー』から発射された青い弾丸は『氷の巨狼』の顔面に全弾命中した。

 鼻や口、そして両目にと。

 ギィンギィンと氷を削って弾丸がめり込んだ。


 どうだ?


「ハッ! そんな豆粒みてーな弾じゃ俺には効かねぇな!」

『残念だったわね!』


 ベオウルフとライザが余裕の声を大口から発し、次いでその大口から銀色のブレスを吐いてきた。


「レニー!」

『ええ!』


 返事と共にレニーはアイスシールドをエクトの全面に密集させ、大盾を形成。

 それにブレスが直撃するも何とか凌いだ。


 レニーはそのまま『ブルーストライカー』を操作し、光線を乱射する。

 巨狼の身体に無数の光線が直撃していく。

 だがその全ては氷を削るわずかなダメージしか与えられなかった。


 しかもよく見れば削れた氷が瞬時に再生しているのが見えた。


 なるほど。

 これが『ブリザード・フェンリル』とやらの力か。

『氷の巨狼』でソールブレイバー自身を守り、並大抵の攻撃ではすぐに回復されてしまうほどの外郭を作る。

 おまけにブレスという攻撃手段もあり、その巨体自体が武器になる。パワーもまさに化物だ。


 攻防一体の厄介な『スターエレメント』である。


『『アイスブラスト』!』


 レニーが唱え、エクトの頭上から青い光が発し、次の瞬間には青の奔流を飛ばしていた。


 まただ!

 レニーの奴、また!


 エクトは驚愕した。

 見間違いではない!

 やはり『アイスシールド』と『ブルーストライカー』は展開されたままだ!


 やっぱりレニーは3つ同時に魔法を使っている!


『嘘でしょ!?』


 敵の魔女ライザも気づいたらしいレニーの異常に。


 そして間もなく『アイスブラスト』が巨狼の顔面に直撃した。

 レニーが使える魔法の中で最高火力の魔法だ。

 さすがに威力があるだけに敵の顔面を大きく削ったが、敵の本体に届くまでにはいかなかった。


 大きく削った巨狼の顔がまた再生していく。


『『アイスブラスト』でダメなの!?』


 レニーは焦りを滲ませた声音で言う。


「おいレニー。お前、いまどうやって……」


 3つ同時に魔法を使っていたことを聞こうとしたら光線が飛来してきているのに気づいて慌てて回避した。


 光線!?

 まさか!


 エクトは正面に立つ巨狼を見た。

『氷の巨狼』の周りを浮遊する氷柱が複数あった。

 ライザが展開した『ブルーストライカー』だ。


『『ブリザード・フェンリル』と『ブルーストライカー』を『同時詠唱』で使ってるみたいよエクト! 気を付けて!』

「やろう! 上等じゃねぇか!」


 レニーに問うのは後だ。

 今はベオウルフをぶっ倒す!

 

『ブリザード・フェンリル』はたしかに強力だが、図体がデカイ。

 攻撃そのものは当てやすいのだ。


 だから例え火力が足りなくて奴の体を削り切れなくても、再生が追いつかないほどの圧倒的な手数で奴を葬る!


 

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