第149話『エクトVSエルガー』
ノアの合流が遅い。
いったいどうしたんだあいつは。
もうこっちに来ててもおかしくないというのに。
『東エリア』のど真ん中でエルガーはエクト・グライセンを相手にしながらそう思った。
撃っても撃ってもエクト・グライセンに弾は届かない。
もちろん奴の弾もこちらには届かない。
届かせない。
枯れた荒野を走り抜けながら続ける銃撃の攻防。
そんな戦士二人をサポートする魔女もまた『ブルーストライカー』と『アイスシールド』で激しい攻防を繰り返している。
屈辱的だった。
こんなガキと自分が互角だということに。
おそらくライザも同じ気持ちのはず。
「ガキが! この俺と互角だなんて認めねぇぞ!」
「うるせぇよハゲ!」
吠え返して来たエクト・グライセンが突如ライザの展開するアイスシールドを狙ってきた。
彼の放った弾丸はライザのアイスシールドを跳弾し、エルガーのライフル『ガンウルフ』に直撃した。
はずみで片方の『ガンウルフ』を落としてしまう。
しまった!
奴め跳弾を自分の魔女のじゃなく、敵の魔女の『アイスシールド』でやりやがった!
「ちっ!」と舌打ちしてバックステップし、咄嗟に敵から距離を取る。
エクト・グライセンの銃撃とレニー・エスティマールの『ブルーストライカー』が追撃をしてくるが、そこをライザが『アイスシールド』で防御する。
しかし展開されていたライザの『ブルーストライカー』はその追撃に巻き込まれ、全て落とされてしまう。
『あぁんもう!』
ライザが苛立ちの声を上げ出した。
構わずエルガーは近くにあった大岩に身を隠し、奴らの追撃をやり過ごす。
「くそ! おいライザ! ノアは何してんだ!」
『うっさいわね怒鳴らないでよ! 今確認して──っ!? まだ『中央エリア』にいるわ! あのレヴァンって奴に追い回されてる!』
「なんだと!? ちょっとテレパシーを繋げ!」
言ってすぐライザがリビエラにテレパシーを繋いだ。
しかし聴こえて来たのは、荒々しいノアの息遣いだった。
あのノアが息を上げている!?
「こちらエルガーだ。おいノア! 大丈夫か!?」
『ェ、エルガー! すまない作戦は失敗した! レヴァン・イグゼスを振り切れない! 奴は強すぎる! た、助けてくれエル、うわっ!!』
『ノア様!』
リビエラの悲鳴を最後にテレパシーは途絶えた。
おいおいおいおい!
冗談だろ!?
あのノアが自分に『助けてくれ』なんて!
そんなにも追い詰められているのか!?
どんだけヤバイんだよあのレヴァンって奴は!
『ちょ、ちょっとエルガー! どうするのこれ!?』
こっちが聞きてぇよ!
くそ!
「……あのガキを速攻で倒してノアの救援に向かう!」
頭の悪い自分にはそれしか思い付かない。
だから──
『『アイスブラスト』!』
突然聞こえて来たのはレニー・エスティマールの魔法を唱えた声。
『アイスブラスト』だと!
その効果をよく知っているエルガーは危険を察し、隠れていた大岩から離れた。
次の瞬間、巨大な青の奔流が大岩に直撃する。
見てわかるその『アイスブラスト』は、大岩を簡単に貫通して破砕させた。
「狼が『かくれんぼ』なんかしてんじゃねぇよハゲ」
こちらが身を晒したのをいいことに、ライフルをこちらに向けながらエクト・グライセンが言ってきた。
嫌味ったらしく嗤いながら。
このガキ!
「調子付きやがってこのボケが! おいライザ!」
エルガーは怒りのままにライザへ吠えた。
『了解!』とライザが返事をする。
こんなガキに『スターエレメント』を使うことになるとはな!
実に癪だ。
癪だが、戦士としての実力はややエクト・グライセンが上。
それはさっきわかった。
ノアも速くしないとマズイ。
こんなところで手間取ってる場合ではない。
エクト・グライセン。
こいつだけは『スターエレメント』に頼らず倒してやりたかったが、もはやそんな悠長な事は言ってられない。
『『ブリザード・フェンリル』発動!』
ライザの声が、魔法名を唱って弾けた。




