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第147話『蒼炎&要塞VS剣聖&戦狼』

 試合が開始され、観客たちの興奮する声が充満する。


 俺は『中央エリア』に向かって前進した。

 オーバーフレイム弾をグレンハザードのリボルバーへ込めながら走り抜ける。


 エクトは俺の少し後ろを走る。

 俺が前衛になりベオウルフからの狙撃を誘う算段だったのだが。


 ……さすがに撃ってこないか。


 狙撃してきたところで位置を割り出し、エクトにベオウルフを狙撃してもらうつもりだったのだが──


「──っ!? エクト!」

「ああ。待ってやがる」

 

 そんな小細工など一切不要になる状況になった。


『中央エリア』にたどり着いたと思ったら、そこには例のノア将軍と思われる人物と、エクトから聞いていたシルクハットの男ベオウルフが立ち並んでいた。


 まさに、待っていたと言わんばかりに堂々とした風だった。


 俺は足を止めた。

 エクトも隣まで来て立ち止まる。


「やぁレヴァン君。顔を会わせるのはこれが初めてだね」


 黄金の長剣を片手に、金髪の男が俺に視線を向けて言ってきた。


 この声音。

 電話越しでの声しか知らなかったが、たしかにノア将軍の声だ。感じが似ている。


『……ああ。幸せだったよ。凄くね』


 例の嘘が俺の脳裏を過った。

 こいつが、ノア将軍か。


 俺はグレンハザードを強く握り直し、そして言った。


「そうだな。今は敵同士だ。敬語は控えさせてもらう」

「そもそも君が僕に敬語を使う必要なんてまったくないんだよレヴァン君。今でなくても敵同士なんだからね。僕達は」

「……俺達を待つなんて随分と余裕を見せてくれるな」

「僕はともかく、彼がエクト君とどうしても戦いたいって言うもんでね」


 やれやれと肩を竦めたノア。

 その隣に立つシルクハットの男ベオウルフが一歩前に出てきた。

 すると俺の隣のエクトが武器を『ステラブルー』にシフトして、前に出て来た。


「よぉハゲ」

「よぉガキ」


 エクトとベオウルフが『会いたかったぜ』と言わんばかりに不敵に嗤って挨拶をする。

 いつ手が出てもおかしくないほどの険悪な空気を漂わせ、次の瞬間、二丁のライフルを構えてエクトが発砲した。


 それを読んでいたかの如く、ベオウルフもライフル二丁を発砲してエクトの弾丸を撃ち落とした。


 相手との距離が三メートル弱しかないこの超至近距離で、互いのライフルを乱射して、互いの弾丸を撃ち落とし合う。


 ただ乱射しているように見えるエクトとベオウルフの銃撃は、攻撃と防御の応酬だった。

 相手の身体を狙った弾丸と、相手の撃ってきた弾丸を撃ち落とすための弾丸。

 青い光を引いた弾丸はぶつかり合い、粒子を弾かせる。


 剣士対剣士で言うところの鍔迫り合い状態だろう。

 こんなもの、卓越したガンナー同士でないと起こらない。

 エクトもそうだが、あのベオウルフという男もさすがである。


『援護するよエルガー! 『ブルーストライカー』』

『やらせないわ!『アイスシールド』展開!』


 互いの魔女が魔法を唱えた。

 ベオウルフの周りに氷柱が複数現れ浮遊し、エクトに向かって青い光線を発射。


 その攻撃からレニーの『アイスシールド』がエクトを守る。


『『ブルーストライカー』!』


 ほぼ間をあけずにレニーが次の魔法を展開した。

 氷柱が召喚され、それはベオウルフは狙う。


『『アイスシールド』!』


 ベオウルフの魔女まで『アイスシールド』を展開してきた。

『ブルーストライカー』を展開したまま別の魔法を唱えてきた。


 まさかあのベオウルフの魔女まで『同時詠唱』を使いこなせるとは。


 見たところエクトとベオウルフの実力は互角。

 戦士の実力が互角ならば、決め手は魔女になる。


 レニーは相手の魔女の『ブルーストライカー』を巧みに弾いてはエクトを守り、ベオウルフに光線を放っている。


 魔女同士の攻防も一見互角に見えるが、レニーの覚醒レベルと『スターエレメント』の有無が後に差を生むかもしれない。


 エクトとベオウルフはついには走り出し、それでも尚撃ち続けて激しい攻防を繰り返す。


 弾雨を撒き散らす二人の姿が遠ざかっていく。

 

 心配だが、信じるしかない。


 頼むぞエクト・レニー。


「さて、僕達もそろそろ始めようか」


 目前のノアがそう切り出してきた。

 俺は視線をノアに戻してグレンハザードを構える。


「あんたには1つだけ聞きたいことがある」

「なんだい?」

「なぜ嘘をついた?」

「嘘?」

「子供が産まれたときの気分を聞いたとき、あんたは俺に言ったな? 幸せだったと」


『え!?』とノアの魔女リビエラの困惑した声が響いた。

 しかしノアは構わず「ああ、言ったね」と軽く返してきた。

「あの状況なら嘘でもそう言うだろう? それとも『無能が産まれて不幸だった』と正直に言えば良かったかい?」


『どうしてそんなこと言うんですか!? あなたとリビエラさんの子供なんですよ!? 二人の愛の結晶でしょう!』


 俺とリンクしたシャルが怒声を上げた。

 シャルの怒りが俺の芯にまで伝わってくる。

 俺もまったくの同意見だからだろうか。


「寒いね。まぁ何とでも言えばいいさ。もうその手の話は聞き飽きた。付き合うつもりはないよ。……リビエラ!」

『あ、はい! 『トゥインクル・レイド』!』


 リビエラが慌てた声で唱えた聞いたこともない魔法名。


 これはまさか!


 俺はノアを見ると、ノアの身体から黄金の光が発せられ、その光がノアの身体から抜け出してきた。


 それは人の形をした黄金色の光の集合体。

 これが、ヴィジュネールが言っていた『光の分身体』か!


 実体がない分身体はノアの身体から全部で5体現れた。


「これは!」

「ふふ、これがリビエラのスターエレメント『トゥインクル・レイド』さ。光の剣閃……君に見切れるかな?」

「っ!」


 刹那、5体の分身体が俺を囲って周囲を回り出した。

 その回転速度は速いなんてもんじゃなかった。


 これが光速ってやつか!


 5体の内1体が突撃してきた。

 あまりの速さに驚愕したが、対応はできた。


 しかし、2体目3体目と次から次へと攻撃に転じてくる。

 なんとか捌きはするがキリがない猛襲だ。


「それじゃあレヴァン君。しばらくそいつらと遊んでいなよ」

「なに!?」

「僕はこれからエルガーの援護に向かうから」

 

 そう言って嫌味ったらしく嗤いながらノアは踵を返した。

 エクトとベオウルフが戦っているであろう方角に身体を向け、ノアは疾走していく。


 やろう!

 俺を『光の分身体』で足止めしてエクトから撃破するつもりか。


 舐めるなよ!

 こんなので俺とシャルを止められると思うな!



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