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第138話『教会へ』

【レヴァン・イグゼス】

 本作の主人公。

『蒼炎』の名を持つリリーザの戦士。


【シャル・ロンティア】

 本作のヒロイン。

 レヴァンの幼馴染&魔女。

 現在レヴァンの子供を妊娠中。


【エクト・グライセン】

『要塞』の名を持つリリーザの戦士。

【レニー・エスティマール】

 エクトの魔女&恋人。


【ジフトス・リベリオン】

『獅子王』の名を持つグランヴェルジュの将軍。

【レジェーナ・リベリオン】

 ジフトスの魔女&妻。

『ブロークン・ハート』を持つグランヴェルジュの有能者。


【シェムゾ・ロンティア】

 シャルの父親。

【グラーティア・ロンティア】

 シャルの母親。


【レナード・サイス】

『死神』の名を持つグランヴェルジュの将軍。

【ベルエッタ・サイス】

 サイスの魔女&妻。

『ヴェンジェンス・ソウル』を持つグランヴェルジュの有能者。



「ヤな女!」


 ライザの姿が見えなくなってから隣でレニーが吐き捨てた。


「ごめんなさいねレニーちゃん。あのライザって娘は将軍の魔女の中でもちょっと曲者なのよ。でも良いところもあるのよ? お金にはうるさいけど、けっこう面倒見のいい娘でね」


 レジェーナがライザをフォローするように言う。

 当然レニーは「そんなの知りません」とそっぽを向いた。


 当たり前である。

 あれだけ罵ってきた相手だ。

 今更良いところ教えられても好きになれるわけがない。


「仲間の非礼は詫びようエクト・グライセン。レニー・エスティマール。どうにも気の短い奴らでな」


 謝罪してきたのは他でもないジフトス・リベリオンだった。

 彼は周囲で見物している一般人たちをその鋭い眼光で睨みつけて散らせた。


 周囲の息苦しい空気が一掃されてから、エクトはおもむろに口を開く。


「なんだよ。さっきはオレらもまとめて怒鳴ってたクセに」


「公衆の前だ。仕方あるまい。大方、エルガーとライザが先に噛みついて来たんだろう? すまなかったな」


「……もういいよ別に。非礼に非礼で返したオレらも大概さ」


「随分と大人のような事を言うな」


「そうか?」


 挑発に乗って頭に血が昇ってりゃ一緒だし。


「フ……エルガーとライザは性格にこそ難はあるが実力は本物だ。そのうえグランヴェルト様とルネシア様から鍛練も受けている。今では間違いなく将軍の中でも最高クラスだ。手強いぞ」


「上等だ。こっちもリリーザ最強のソールブレイバーにたっぷり鍛えられてんだ。負けはしねぇよ」


「レヴァンとシャルのためにも負けられないしね」

 

 未だ不機嫌なレニーが付け足すように言った。

 エクトは「そうだな」と同意して頷き、視線をジフトスに戻す。


「で? オッサンらは何しに来たんだ?」


「キサマらの案内役だ。変な真似を犯さないかの監視役でもある」


「おいおいまさかオレらについてくんのかよ。勘弁してくれよ。これからレニーと街見て回ろうと思ってたのに」


「馬鹿者が。敵国でデートなぞするな。自国に帰ってからにしろ」


「ダーリンの言うとおりよ。ほらほらそこでずっとムスッとしてるレニーちゃんも機嫌なおしてなおして。せっかくだし四人でカフェでも行きましょうよ」


 こ、このメンツでカフェ!?


 デートはダメなのに、このメンツでカフェはいいのかよ!?


 レジェーナの発言にエクトはギョッとしたが、向かいのジフトスも同様に、いやエクト以上にギョッとしてた。


「カフェ! もしかして『アカシエルブレンドコーヒー』とかありますか!?」


 さっそくレニーが食いついた。

 こいつそう言えばコーヒー好きだったな。


「もちろんよ。美味しいコーヒー飲めばムカムカも収まるでしょ。案内するわ」

「お願いします」


 レニーはレジェーナの後に続いてスタスタ歩いて行く。 


 ぽつんと残されたエクトとジフトスは互いに目を合わせた。


「何の因果でキサマとカフェなんぞに」

「いやアンタの嫁に言えよ」



「やっぱり妊娠すると身体のあちこちに変化が出るんですわねぇ」


「はい。でもこの変化が妊娠を実感させてくれて、逆に嬉しいんですよ。私のお腹にちゃんとレヴァンの子供がいるんだって思えて、もう最高に幸せな気分になりますね」


「うふふ、シャルさんらしいですわ」


 俺の前を歩きながら、そんな会話を街中で交わすシャルとベルエッタ。


 満面な笑みを浮かべて語るシャルは本当に嬉しそうに腹を撫でる。

 身体の変化など特に苦にもなっていない様だ。

 むしろその変化を堪能して、糧にさえしている。

 凄まじいメンタルだ。


 さすがシャルである。


「……彼女の妊娠情報は本当だったのか。やることが早いなお前」


 言ったサイスが心底呆れた様に俺を見てくる。

「いやぁははは……」と俺は苦笑する他なかった。


「まぁそう言わんでやってくれサイス将軍。レヴァンは子供が出来てから一気に強くなってきたんだ。なぁ?」


 シェムゾに言われて俺は小さく頷いて見せた。

 父親になったという事実が俺を強くしてくれたのは事実だから。


「それだけじゃないですよ。お義父さんとグラーティアさんのおかげでもあります」


「そう言ってくれるのは嬉しいが、こんな短期間であそこまで強くなれるのは強い志が無ければ成せない業だ。お前がそれだけ設けた制約に対して本気だと言うことだろう」


「ありがとうございます」


「レヴァン……今回のソルシエル・ウォーが終わったら、そろそろ俺もお前も決着をつけねばならないな」


「え?」


「全力の俺とグラーティアを越えてもらわねばな。お前とシャルには」


 全力の……そうか。

 俺とシャルはまだ、本気のシェムゾとグラーティアに勝てていない。


「いやすまんなレヴァン。今は明日の試合に勝つことだけを考えていればいい。この話はそれからだ」


「……そうですね」


「赤ちゃんと言えばノア将軍も最近ひとり産まれたって言ってましたわ。ねぇサイス」


 シャルと会話していたベルエッタが思い出しを口にした。

 問われたサイスは「ああ」と返事する。


「奴の子なら『教会』に送られたはずだ。見に行くなら案内するが……」


「っ!? きょ、『教会』ですの!? サイスそれは……!」


 ベルエッタが何やら青ざめた顔になっている。

 どうしたんだ?


「別に強制はせん。見に行きたいなら案内するだけだ」


「是非お願いします」


 俺が頼むとサイスは無言を返事にして先頭を歩き出した。

 

 その後に俺達も続く。


「『教会』か……」というグラーティアの呟きを耳が拾った。

 見ればグラーティアの顔も、どこか暗く沈んでいた。

 あのシェムゾさえも。

 先ほどまで饒舌だったベルエッタも、気まずい顔になっている。


 なんだ?

 何かマズイものでもあるのだろうか?


 それにしてはサイスは遠慮なく案内しようとしているが。


 誰かが答えてくれるわけでもなく、俺はシャルと共にサイスの後を追った。



 

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