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第13話『挑戦状』

「レヴァーン。朝だよー。ご飯できてるから早く起きてきてー」


「おーう‥‥‥」


 一階からシャルの声が響き、俺は目を覚ました。


 自室のベッドから身を起こし、少し気だるさを感じる全身に力を入れて立ち上がった。

 自室を出て階段を下り、あくびをしながらリビングへ。


「おはようレヴァン」


 エプロン姿のシャルが朝食を並べていた。

 朝からグッとくる姿だ。

 目が覚める。


「おはようシャル」


 目を擦りながら返事して、俺は椅子に座る。

 そしておもむろにテレビをつけた。


『――それでは昨日【首都エメラルドフェル】のソルシエル・ウォーで大活躍を見せた期待の大型ルーキー【レヴァン・イグゼス】選手と【エクト・グライセン】選手の戦闘リプレイを見てみましょう』


 俺は牛乳の入ったコップを取ろうとして止まった。


 テレビの声を聞いたシャルも止まってテレビ画面に視線を向けた。


 俺の映像が流れ、それはガルバと対峙したときと、ティランと対峙したときのものが流された。


『いや凄いですねぇ! 相手のエースをものともしない圧倒的な実力です』

『そうですね。しかも彼はガルバ選手のエアブレイドを簡単に捌いていますね。あれ弾丸の速度と同じなのですが』

『ええ。ティラン選手のバズーカ弾をも真っ二つにしています。素晴らしい動体視力です』

『それにしてもレヴァン選手の『魔女兵装ストレイガウェポン』は珍しいですね』

『バイアネットタイプですね。あれ使いこなすのが難しくて使用者が極端に少ないんですよ。リリーザでは彼一人なのでは?』

『なるほど。フレイムがやたらと強力なのはあの銃剣についているリボルバーのおかげでしょうか?』

『おそらくそうでしょう。彼の魔女が何かしらの工夫をしているのかと』


 フレイムが強力なのはシャルの『スターエレメント』である『ゼロ・インフィニティ』のおかげで、リボルバーは連射の効かないフレイムを六連発するためのもの。


 威力には関係ないのが真相だ。


 と、今度はエクトの映像が流れる。


「あ、エクトくんだ」


「お? あいつ『疾風のクロイド』とはどんな風に戦ったんだ?」


 フィールド【荒野】を走るエクトの姿が映る。


 すると敵の射撃と思われる赤い光線が飛来し、エクトはそれを手にしたライフル【ステラブルー】の銃身で叩き落とした。


「わぁ! エクトくんも弾はじけるんだ!」


「そりゃそうだろ」


 エクトの向かいに立ちはだかる男の影。


『疾風のクロイド』と思われる男とエクトがしばらく睨み合う。


 彼の装備はライフルだったが、今は槍に変わっている。


 睨み合いの途中でクロイドの足元が爆発し、クロイドは土煙の中へ消えた。


「なんだ? 自爆か?」


「ううん。あれ火属性の『第二魔法階層詩セカンドソール』だよ。たしか『エクスプロード』だったはず」


「へぇ、そうなのか」


 さすがシャル。


 前のソルシエル・ウォーの時から思ってたが『魔道女子学校』で勉強していただけあって魔法には訓しい。


 クロイドを見失ったエクトは特に動かない。

 むしろやれやれと余裕の表情さえしている。


 すると舞い上がる土煙の中からクロイドが奇襲。

『疾風のクロイド』と言われるだけになかなかの速さだった。


 クロイドの槍がエクトの顔面めがけて突撃していく。


 しかしエクトはその刺突を片腕でズラすように防ぎ、クロイドに空振りをさせる形にした。


 剥き出しになったクロイドの身体を蹴り上げ、そのダメージに怯んだクロイドの頭部に二発の弾丸をぶち込んだ。

 

 白目を剥いたクロイドは転倒し【SBBS】によってエリア外へはじかれた。


『いや見事! 彼もまた余裕の勝利という感じでしたね』

『そうですね。魔女のレベル差などおかまいなし。戦士の実力でねじ伏せるといった感じです』

『エクト選手弾をはじいてましたね。これって学生レベルで出来るものなんですかね?』

『学生レベルでこれをやる選手は彼らが初めてですよ。だって他で見たことありませんから』

『なるほど。相手のクロイド選手も『エクスプロード』で煙幕を張るとは考えましたね』

『そうですね。『エクスプロード』は戦士の拳か足かに爆発を起こせる近距離戦魔法です。この魔法って実は装備してる『魔女兵装ストレイガウェポン』には付与できないんですよ。だから自分の魔女がこの『エクスプロード』を覚えてしまった場合は、戦士の方は格闘を練習した方がいいですね』


「『エクスプロード』かぁ。俺は格闘できるからシャルあれ覚えてくれよ」


「んー、覚えてって言われても、そもそもどうやって『魔法第二階層詩セカンドソール』を覚醒させるのか分からないしなぁ」


「急がなくていいさ。シャルができない分は俺が実力でカバーすればいい」


「‥‥‥ん、ありがとう。さ、ご飯食べて学校の支度しよ?」


「おう」



『首都エメラルドフェル』の最東にある『リリーオブザヴァリー城』(通称:リオヴァ城)で、朝早くから夜のパーティーのためにメイドや兵士たちが大食堂に装飾を施している。


 その中に紛れてリリオデール国王も装飾を飾るのを手伝っていた。


「国王様! 国王様がこんなことしなくても! 我々がやりますから!」


「良いのだ。やらせてくれ。昨日から嬉しくて嬉しくて身体が元気過ぎてな。何かしら動かないと落ち着かんのだ」


「いや、ですが‥‥‥」


「昨日まで胃が痛かったのだが、それが綺麗サッパリ無くなってな。頼む」


「国王様‥‥‥そこまで仰るのならお願いします」


「うむ。ここはまかせておけ」


 兵士にそう告げると。


「国王様!」とよく知った声が大食堂に響いた。


 見ればオープだった。

 彼は教師だが、リリオデールとは古き戦友。

 城への出入りは自由にしてある。


「朝からどうしたオープ? また髪が後退したのか?」


「違うわ! ぁ、いや、違います! これを見てほしくて」


 オープが差し出してきたのは二枚の手紙だった。

 先に一枚手渡され、内容を確認する。


「こ、これは‥‥‥!」


 リリオデール国王が戦慄した。

 オープが頷いて返す。


「西の『ローズベル』。北西の『ディオンヌ』。南西の『リウプラング』の都市防衛チームが再編成されたとグランヴェルジュ帝国からの報告です」


「そ、それは見れば分かるが」


 リリオデール国王が見るその手紙には、編成されたメンバーが書き記しされている。


 他はどうでもよかった。

 問題なのはチームのリーダーである。


『ローズベル』防衛チームリーダー『獅子王リベリオン』


『ディオンヌ』防衛チームリーダー『死神サイス』


『リウプラング』防衛チームリーダー『暴君タイラント』


 グランヴェルジュ帝国の将軍たちの名が書かれていた。


 いまこちらが攻めることのできる都市に将軍を配置したようだ。


 レヴァンとエクトを警戒してか、容赦のない配置だ。


 占領地は絶対に返さないとでも言うのか。


 魔女がまだ力不足なレヴァンとエクトでは将軍クラスの相手は厳しい。


 なにせグランヴェルジュの将軍たちが連れている魔女たちは全て『スターエレメント』を持った『奇跡の魔女』だ。


 さらに『魔法第二階層詩セカンドソール』から『最上階層詩ラストソール』まで全ての魔法レベルを扱えるトップクラスの魔女しかいない。


 対するシャル・ロンティアとレニー・エスティマールはまだ魔女となって三日目。

魔法第二階層詩セカンドソール』の覚醒すらままならない。


 この魔女の火力差はあまりにも大きい。


 物理的な戦闘のみならばレヴァンとエクトにも勝機はあるのだろうが。


「国王様。あとこれを」


 オープに残りの一枚を手渡された。

 内容を見る。


 おもわず驚愕した。


「挑戦状だと!?」


「はい。将軍の一人『暴君タイラント』からです」



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