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『リリーザ防衛戦』3

『【チーム・グランヴェルジュ】カルマ=戦闘不能=エリア外へ』

『【チーム・グランヴェルジュ】ロット=戦闘不能=エリア外へ』

『【チーム・グランヴェルジュ】シザン=戦闘不能=エリア外へ』


 敵の撃破を伝えるアナウンスが流れ、リリーザ側の観客たちが勝利を確信した歓声を上げた。


 一気に三人も撃破できるソールブレイバーは、このメンバーの中では間違いなくエクトだろう。


 おそらくシグリーたちの部隊にエクトが合流し、一気に押しきった感じか。


 なんにせよ、あとはこの大男ティランのみ。


「全滅だと!? 馬鹿な!」


 焦りを見せたティランに俺は武器を構え直す。


「あとはお前だけだティラン。さぁ、かかってこいよ」


「ぬぐ、貴様調子に乗りおって!」


「ああ。調子に乗ってるよ。最高にな」


 昨日シャルを召喚した時から調子に乗りまくってる。

 やっと活躍できるようになったんだ。

 乗れるときに乗らないでどうする?


「『ブルーサーペント』!」


 またあの魔法か。

 ギュスタに使っているのを見て対策はわかっている。


 俺は地を蹴り跳んだ。

 跳んだ俺の真下を氷の蛇が通過する。

 回避成功。

 このまま斬り込む!


「かかったな!」


 ティランが不敵の笑みを浮かべ、武器をハンマーからバズーカタイプの射撃武器へと変更する。


 空中で身動きが取れない俺に目掛けて撃ってきた。


 高威力を思わせる大型フリーズ弾がバズーカから爆音と共に発射された。


『レヴァンあぶない!』


 心配するなシャル。

 跳んだ先で撃たれる可能性は考慮してる。


 俺は【グレンハザード】を両手で握り、飛来する大型フリーズ弾を一刀両断した。


 真っ二つになった弾は左右に飛び散って地を爆砕する。


「弾を斬るだと!?」


 驚愕するティランの目前に着地した俺は返しの刃でバズーカをはじき飛ばした。


 宙を舞ったバズーカはすぐに消え去り、ティランがハンマーを召喚。


 ティランがそのハンマーを振り下ろす。

 俺は【グレンハザード】を薙ぎ払う。


「ぬおおおお!」

「うおおおお!」


 銃剣とハンマーというパワータイプの武器が激しく交差する。

 光の粒子が火花のかわりに散る。


 このティランという大男は、先ほど倒したガルバよりも遥かに強い。


 敵のエース各の中では間違いなく最強だ。


 俺の【グレンハザード】より重そうな大型ハンマーを普通の剣のように振り回し、鈍足そうな巨体に見合わない軽いフットワークを持っている。


 だけど。

 それでも。

 俺にはまだ余裕があった。


 こいつは俺よりも弱い。


 その確信を体現するように俺は踏み込みを強くし、ティランを押していく。


 ティランの顔には一切の余裕がない。


 現在の戦況が後押しして、相手の顔を見る余裕さえないようだ。


 俺はさらにティランを押す。


『ファイトだよレヴァン! がんばれ!』


 シャルの応援を聞き全身に力がみなぎる。


 続いて観客席から『レヴァン! レヴァン! レヴァン!』と俺の名前を連呼する声が聞こえた。


 今、このコロシアムの観客席にいる全リリーザ側の観客たちが、俺の名を呼んで応援してくれている。


 昨日まで無能と連呼されてたのに。


 今はリリーザのヒーローみたいな感じになっている。


 夢のようだ。

 今、まさに世界中で生中継され、リリーザの人間たちが俺を応援してくれている。


 そう考えると!

 さらに全身に力がみなぎってきた!


「うおらぁっ!」


 渾身の一撃を放ち、ティランのハンマーを打ち返した。


「なっ!?」


 態勢を崩し無防備になったティランの巨体。

 トドメを刺しに俺は駆けた。


 ティランに勝てなかったギュスタの分まで力を乗せて。


 俺はティランの腹部を【グレンハザード】で貫いた。

 バシャッと光の粒子が飛散する。


「ぐあああっ!」

『ティラン!』


 ティランの叫びに、今まで沈黙を保っていた彼の魔女が悲鳴を上げた。


 ティランは突き刺されたまま気を失い、次の瞬間には光に呑まれて消えていた。


『【チーム・グランヴェルジュ】ティラン=戦闘不能=エリア外へ』


 ティラン撃破のアナウンスが流れ、そして。


『【チーム・グランヴェルジュ】全滅』

『【チーム・リリーザ】の勝利です』


 パァンと音を立てて観客席を守っていたバリアが弾けた。


 ソルシエル・ウォーの終了を意味するバリア解除だ。


【SBBS】で再現されていた荒野のフィールドも消え去り、味気ない床に戻った。


 ほぼ同時にリリーザ側の観客たちが今まで燻らせていた思いを大爆発させるかのように大嵐のような大歓声を張り上げた。


 見れば抱き合って泣いている人々が8割りにも及ぶ。


 敗戦続きだったリリーザだ。

 この歓声を上げたくてもあげられなかった人々がどれだけいたことだろう。


『レヴァンお疲れさま』


 まるで奥さんのように労をねぎらってくれるシャル。

 リンクを解いて、俺の中から出てきた。


「ああ。勝ったな」


「うん、おめでとう。今日の晩御飯はレヴァンの大好きな明太子スパゲティつくってあげるね」


「やったぜ!」


 嬉しすぎてうっかり子供みたいに反応してしまった。


 シャルのつくる料理はなんでもうまいのだが、その腕で好物をつくってもらえるなら尚更。


「結局あのバカは救えなかったみてぇだな」


 いつの間にかこっちに来ていたエクトが、ギュスタの事であろう話題を口にした。


 エクトの背後にはレニーと、そして生き残った味方のシグリー・リエルたちもいる。


「頼んでおいて悪かったよエクト」


「べつに、勝てたからいい」


 本当にどうでも良さそうな態度でエクトは言った。


 ギュスタに関しては、彼の真意を理解できて良かったと思える。


 自分の魔女のために必死になっていたギュスタ。


 ロンティア家の長女ロシェルを宿すソールブレイバーとしての責任と覚悟。


魔女契約者高等学校ブレイバーズガーデン』のNo.1としてのプライド。


 ギュスタはギュスタなりに気を張り詰めていたのだと思う。


 それを壊してしまったのが俺なのだが、今更か。


 今度会ったら素直に先輩と呼ぼう。


 自分の魔女のために必死になれる人間を、俺は嫌いにはなれない。


「お、おい! あれ!」


 シグリーが絞り出したような声を発する。


 彼はどこか脅えた表現をしていたが、その理由を俺はすぐに理解した。


 この全身を戦慄させる覇気。


 振り替えれば、そこには覇王グランヴェルトがこちらに向かって堂々と歩いて来ていた。


 彼の隣には彼の魔女らしき女性が一人と、背後には将軍たちが控えている。


 俺の前まで来たグランヴェルトは腕を組み、長身ゆえに俺を見下ろす。


「見事な戦いぶりだった。名を聞いておこう」


「‥‥‥レヴァン・イグゼスです」


「エクト・グライセン」


 覇気に気圧されまいと気を張りつつ名を名乗った。


 グランヴェルトはそうかと言って、そのまま立ち去ろうとしたが、俺の後ろにいたシャルに気づいて止まった。


「‥‥‥グラーティアに似ているな。どうだルネシア」

「はい。似ていると私も思っていました」


 いきなりシャルの母親の名前がグランヴェルトの口から飛び出した。


「そいつはお前の魔女か?」


「え? ええ。そうです」


「名は?」


「シャル・ロンティアです」


「ロンティアだと?」


 言ったグランヴェルトが何かに気づいたかのように目を見開いた。

 ルネシアと呼ばれた魔女も同じく。


 そしてグランヴェルトはいきなり笑った。


「そうか。やつら婚約を交わしたか。あの無能の女の娘か。これはおもしろい」


 いったい何の話だ?


 無能の女って、シャルやロシェルらの母親グラーティアが?


 そんな馬鹿な。


 グラーティアはここリリーザでは最強と名高い魔女なのに。


 一方的に笑って、グランヴェルトは去って行った。


 嵐が去ったかのように俺も含めたみんなが呆然としていた。


「みんなよくやったぞ!」


 今度はリリオデール国王が駆け寄ってきていた。


 後ろにはフレーネ王妃やオープ先生。


 そして1年1組のクラスメイトたちまで!


「お前らおめでとう!」

「エクトレヴァン! お前らやっぱすげぇよ!」

「みんな胴上げだ! リリーザの救世主に胴上げをするんだ!」

「よっしゃああああーーーーー!」


 クラスメイトたちに囲まれ、持ち上げられ、エクトと共に高く胴上げされた。


 胴上げをする者の中にはあろうことか国王様やオープ先生まで混じっている。


 俺は国王様の顔を胴上げされながら見た。


 涙でも流したのか、目が赤くなっているのが分かった。

 

 試合が終わった時に泣いて喜んでくれたのだろうか。


 だとしたら良かった。


 俺はリリオデール国王様の期待に応えられた。

 今は胸を張ろう。


 そして今は勝利に喜ぼう。


 リリーザの滅亡を阻止できたのだから。



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