第101話『エクトVSジフトス』
マールを守ったレニーの『アイスシールド』は光の粒子と化して消えた。
「た、助かりましたエクトさん!」
「うるせぇ。早くあっち行ってろ。巻き込むぞ」
「は、はいぃ!」
マールを追い払い、エクトは目前に立つ獅子王の名を持つ将軍を見た。
その将軍と線を引いたかのように目が合う。
「エクト・グライセン‥‥‥こうして直接会うのは初めてだな」
敵意に満ちた視線をよこしながら獅子王は言った。
「そうだな。随分と無双を楽しんでいたみてぇじゃねぇか。ここいらで幕引きといこうぜ?」
「ふん。敵とは言え、子供をいたぶるのは気分が悪いものだったぞ?」
「そうかい」
苦笑して肩を竦める。
獅子王は「だが!」と続けた。
「ソルシエル・ウォーで立てば誰しもが対等。男は戦士。女は魔女だ。慈悲はない。必要もない」
「当たり前だ。んなことよりさっさと始めようぜおっさん」
「よかろう!」
戦斧を振り唸らせ、獅子王は吼えた。
「我が友ゴルトの雪辱。きさまに思い知らせてくれるわ!」
「ゴルト?『暴君』のおっさんのために戦ってんのか?」
「当然だ! 今や奴は学生にも劣る『無能将軍』と呼ばれ、ワシ以外の将軍どもにバカにされる日々だ! もはや消せぬ汚名! ならばせめて、きさまらを倒せば、ゴルトも多少は晴れよう!」
意外だ。
ライオンみたいな顔の割りには友達思いときた。
こいつも友達のために戦ってるのか。なるほど。
エクトは『ステラブルー』を強く握り直した。
「ダチのためってんなら、尚のことテメェには負けられねぇな」
「なんだと?」
「テメェと同じだからだよ!」
『ステラブルー』二丁を瞬時に構え連射。
「ぬ!」と気づいた獅子王は丸い大きな盾でそれを防ぎ突撃してくる。
「ぬぅおおおおおおおおおお! 『メテオレイ』!」
っ!
こいつ火属性か!
見上げれば空から赤い渦が生まれ、そこから小さな火球が隕石のように無数に発射されていく。
リリーザの騎士団でも何人か使っていた火属性の『魔法第五階層詞』だ。
「レニー! あれ全部撃ち落としとけ!」
『了解! 『ブルーストライカー』!』
レニーの声に呼応して『魔法第三階層詞』が発動された。
6本の氷柱がエクトの周囲に召喚され、それはレニーの操作によって降り注ぐ『メテオレイ』の方向へと切っ先を向けた。
『当たれ!』
レニーが叫び、6本の氷柱から青い光線が何発も発射されていく。
空では互いの魔女が発した『メテオレイ』と『ブルーストライカー』の光線がぶつかり合う。
地上では戦士と戦士が肉薄する。
獅子王は戦斧を勢いよく振り下ろしてきた。
その一撃を、エクトは『ステラブルー』の二丁をクロスさせて受け止める。
同時に戦斧の衝撃で草原の大地に亀裂が走る。
「うわああ!」
「ぐううう!」
「な、なんだこりゃ!」
周りで見ていたマールやギュスタらの悲鳴が聞こえた。
どうやら今ので衝撃波まで発生したらしい。
「パワーだけは褒めてやるよおっさん」
「きさま!」
「悪いけどなおっさん。オレはあんたごときに手こずってる場合じゃねぇんだよ」
「なっ!?」
「こっから本気だ。いくぜ!!」
※
バッと草原の葉が舞った。
同時に、そこにいたはずのエクトの姿が消えた。
『き、消えた?』
我が魔女レジェーナが焦りを窺える声を発した。
落ち着け。
気を研ぎ澄ませ。
奴がこちらよりも速いと言うのならば、こちらに仕掛けてくるその隙を狙うしかない。
刹那、背後から気配を感じた。
「そこか!」
振り向きざまに『魔女兵装』を戦斧『レオンザクス』からロングバレルライフル『ガオガン』に変えてすぐさま発砲した。
パァンッと乾いた銃声が響き、そこにいたエクトの眉間に風穴を開けた。
やった! と思ったのも束の間。
風穴を開けたエクトは、霧のように消えた。
ざ、残像だと!?
「悪いなおっさん。友達思いに免じて一発くらい食らってやっても良かったんだがよ」
「っ!?」
背後からの声。
気づいたときにはもう遅かった。
ジフトスの後頭部にエクトの『魔女兵装』の銃口が突きつけられた。
『ダーリン!』
それに気づいたレジェーナが叫んだ。
※
獅子王の後頭部に銃口を突きつけたまま、エクトは口を開いた。
「終わりだぜおっさん」
言ってエクトはトリガーを引‥‥‥。
「レジェーナ!」
『『ブロークン・ハート』!』
獅子王の魔女が例の『スターエレメント』を発動してきた。
ピンクの光がフラッシュし、眩しくてエクトは思わず眼を瞑ってしまった。
「もらったぞ! エクト・グライセン!」
奪われた視界の先で、獅子王の咆哮が轟いた。
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