第92話『覇王との再会』
そして夜が明けた。
ここ『ローズベル』を賭けた50対50のソルシエル・ウォーが今日ついに行われる。
天気は快晴。
昨日の夜の静けさが嘘のように『ローズベル』の街中は賑わっていた。
みなが待ちに待った最大規模のソルシエル・ウォー。
他所からの来客もあって、それこそ御祭り騒ぎだ。
俺たちはまさにそのソルシエル・ウォーが行われるコロシアム前に集合していた。
みなで並び、気を付けの姿勢で前を見る。
その視線の先には、今日まで俺たちの面倒を見てくれたシェムゾやグラーティアの騎士団の方々が立ち並ぶ。
そして団長のシェムゾが一歩前に出て口を開く。
「みんな今日までよくがんばったな。三ヶ月前とは見違えるほど強く逞しくなった。みんなやれるだけのことはやってきたんだ。胸を張って試合に挑んでほしい」
「はい!」
俺たちは息もぴったりな返事をした。
「ほぉ、素晴らしい士気の高さだ」
この声は!
突然、全身を戦慄させる覇気に襲われた。
その覇気の主にシェムゾは目付きを鋭くし、グラーティアは憤懣を湛えた目を向ける。
俺は視線を泳がせ、彼を捉えた。
そこには覇気と威厳を服のように纏う覇王が、さも当然のように立っていた。
「グランヴェルト皇帝‥‥‥」
シェムゾが静かに過去の敵の名を呟く。
「久しいな強敵よ。元気そうで何よりだ」
「あなたこそ」
「ふ、お前を倒してしまってから退屈な日々だったが、今は楽しみがある」
不敵な笑みを浮かべたグランヴェルトが先頭に並ぶ俺の方を見てきた。
そしてあの魔女ルネシアも背後に引き連れてこちらにやってきた。
「いい気を放つようになった。あの時とはまるで別人だなレヴァン・イグゼス」
「今日まで遊んでいたわけではありませんので」
「そうか。今日はどれだけ俺に近づけたのか見せてもらう」
そう言ってグランヴェルトはシャルの方も見た。
しばらくシャルを見てから。
「姪だと思えばなかなか可愛いものだな」
「え?」
シャルが怪訝な表情を浮かべたが、グランヴェルトはそれ以上は何も答えず踵を返した。
変わりに魔女ルネシアがシャルの前に出てくる。
「シャル・ロンティア。初めに言っておく。両親の仇を討とうと言うのだろうが、貴様では私には勝てない」
「いやべつに私はレヴァンのために戦ってるだけで両親の仇はどうでも‥‥‥」
「なんだと? ふん、この親不孝者め!」
「ぇ、ええ?」
勝手に呆れられたシャルは困惑する。
一方的に言ってはそそくさと去ったルネシアとグランヴェルト。
しかしそのグランヴェルトらの護衛なのか、付近にいたゴルト将軍と魔女ヴィジュネールの姿が見えて、俺とシャルはハッとなる。
会話のできる距離ではないからチラリと目線を合わせるしかできなかった。
それでも二人からは応援しているぞ、という熱い眼差しを感じ取れた。
「あの二人も来てたんだねレヴァン」
「そうだな。どれだけ強くなったか、しっかり見せてやらないとな」
「うん!」
俺とシャルは気を引き締め直し、コロシアムを見据えた。




