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第77話『レニーの鉄壁』

 

 エクトは『ステラブルー』の二丁を両手に構え、こちらに迫ってくるリリーザ騎士団の部隊に銃口を向けた。

 銀色の銃身がギラリと光る。

 

「レニー! 守備は任せたぜ!」

『任せて! エクトには指一本触れさせないわ! 『アイスシールド』展開!』


 つい数時間前に『相棒』から『恋人』に変わった愛しきパートナーのレニーが張り切った声を上げた。

  

 その声に呼応されてエクトの周囲に氷の盾が複数召喚される。


 敵の数は遠目で見てざっと10人ほど。

 後続にも何人かの騎士たちが控えているはず。


 これを一人で正面からぶつかるのは無謀の極みと言うものだろう。

 激しい銃弾と魔法の弾幕に晒され、それを突破するのはなかなかに骨が折れる。


 だが。


「さぁて。腕の差ってヤツを見せてやろうか」


 エクトは不敵に笑って一気に草原を駆け出した。



「前方に敵確認!」


 部下の一人が叫んだ。


「数は?」


 隊長が冷静に聞き返す。


「一人です! あれは‥‥‥エクト・グライセン! うわ!」


 告げていた部下の肩が何者かに狙撃され倒れた。

 弾が飛んできた方角は間違いなくエクト・グライセンがいる方角だった。


 隊長は慌てて盾を構えて身を守った。

 次の瞬間には青い光を引いた弾丸が構えた盾に直撃する。


 それも立て続けに何発も。


「こ、この距離で当ててくるのか!」


「あの距離! ただのマグレ当たりだ! ぐあっ!?」


 また一人の部下が頭をぶち抜かれ倒れた。


 マグレ当たりなどではない。

 奴はとんでもない精度でこちらを狙ってきている。


 二丁拳銃でここまで正確に当ててくる奴は初めて見た。


「なんて奴だっ!」

「あれが学生かよ本当に!」


 部下の声に怯えの色が混じってきた。

 士気が下がり始めている。

 敵の圧倒的な強さに。


 それもそのはずでエクト・グライセンはこちらの射程外から攻撃してくる。

 それも恐ろしい命中精度で。

 

 こちらが魔法と銃で反撃できない距離から攻めてくるのだ。

 こうも一方的にされれば、どんな人間でも怖じけづく。


「く、撃ちながら前進せよ! 放火を集中して撃ちまくれ! 射程内に入り次第、魔法による一斉攻撃を仕掛ける!」


 言った瞬間にまた一人の部下が手と頭を撃ち抜かれて倒れた。

 

 隊長は構わず生き残りの部下と連携してエクト・グライセンを狙ってライフルを撃ちまくる。


 有効射程圏内ではないので大きい効果は望めないが、7人ほどで同じ敵を狙えば、さすがに弾幕も厚くなる。


 しかし、すべて『アイスシールド』で防がれている光景を目の当たりにして隊長は血の気が引くのを感じた。


 バカな。

『アイスシールド』はオートで守ってくれる便利な魔法ではない。

 魔女が盾を一つ一つ遠隔操作し、戦士を守っているのだ。

 しかもその防御能力は魔女の反応に依存する。


 だと言うのに!


 あの『アイスシールド』はエクト・グライセンに直撃しそうな弾丸をことごとく弾いている。

 

 エクト・グライセンの魔女レニー・エスティマールは『奇跡の魔女』などではない普通の魔女のはず。


 なのになんだこの超反応は!


 あの魔女は銃弾を見切れるほどの反応を持っているとでも言うのか!?


 いったいどうなって!?


「ぐああっ!」

「うわああ!」


 また部下の悲鳴が響いた。


 敵との距離が近づくにつれて、エクト・グライセンの精度はますます上がっていく。


 奴を止められない!


 たった一人の敵を止められないなんて!


 相手は学生だぞ!


 こちらの射程内にエクト・グライセンが来たときには、隊長の味方は全滅していた。


「お、おのれ!」

『『ブルーストライカー』!』


 隊長の魔女が勝手に魔法を唱えた。


『アイスシールド』が遠隔操作する盾ならば。

『ブルーストライカー』は遠隔操作する銃である。


 長い氷柱が6本召喚されると、それは隊長の周囲を浮遊する。


 尖った先をエクト・グライセンの方へ向けると6本の氷柱は青い光線を乱射し始めた。


 これは隊長の魔女が狙って撃っている。

 隊長もその攻撃に加勢するように手にしたライフルを乱射した。


 しかし、これだけの弾幕にも関わらずエクト・グライセンには一発も当たらない。


 すべてレニー・エスティマールの『アイスシールド』によって防がれてしまっている。


 エクト・グライセンの正確無比な射撃。


 レニー・エスティマールの鉄壁とも言える防御能力。


 こんなの相手に、どう勝てば‥‥‥っ!


 パァンッ!


 その答えを見つける前に、隊長は頭に激しい衝撃を受けて意識が飛んだ。






 



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