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記憶を無くした者  作者: ひろろ
第2章
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26話

 

 ナミは村の中で聞き込みを続けていたが、突如――

 遠くで地鳴りのような轟音が響き、地面が微かに揺れた。


 爆発だった。


 ナミは即座に顔を上げる。


「……爆破」


 胸の奥がざわつく。


「ということは……スピード様が、何かを見つけたということね」


 だが同時に、疑問も浮かぶ。


「それとも……この村自体は、本当に無関係なの?」


 隣にいたスズモが、不安そうに尋ねる。


「ナミ様、どうしますか? スピード様と合流を?」


「……ええ。でも、多分――」


 そう言いかけた瞬間だった。


 突風が巻き起こり、土埃が舞い上がる。

 その中心に、いつの間にか一人の影が立っていた。


「――よお」


 スピードだった。


「怪しい場所は見つけた。だがな、気づかれて爆破された」


 淡々とした口調で続ける。


「場所は川底だ。爆破で何も残ってない可能性は高いが……確認はする価値がある」


 ナミは即座に問い返す。


「こちらは、特に有益な情報は得られなかったわ。……どうする? すぐ川底へ向かう?」


 その時――

 背後から、慌てた足音が近づいてきた。


「ナ、ナミ様!」


 教会の神父だった。


「い、今の爆破は……いったい何が……?」


 言い終わる前に、スピードが動いた。


 一瞬で距離を詰め、神父の首元を掴み上げる。


「……お前」


 低く、獣のような声。


「何人、殺した?」


「が……ぐ……!」


 神父の顔がみるみる青ざめる。


「お前からな……凄まじい血の匂いがする」


「ち、違う……殺して……ない……!」


 スズモが慌てて声を上げる。


「ス、スピード様! やり過ぎです!教会の中に怪しい場所はありませんでしたし、人の気配も――」


 だがナミは、静かに首を横に振った。


「スズモ」


 その声は、はっきりとしていた。


「スピード様の嗅覚は、私たちとは次元が違う。“そう言っている”なら、間違いないわ」


 ナミは神父に視線を向け、魔法を発動する。


「……一度、教会に戻りましょう」


 神父はその場で眠りに落ち、スピードが無言で担ぎ上げた。



 ---


 教会へ戻るなり、スピードは鼻を鳴らす。


「……やはりな。死臭が強すぎる」


 視線を裏庭へ向ける。


「特に、あの木の下だ」


 神父を床に降ろし、スズモを見る。


「スズモ。お前はここで、こいつを見張ってろ」


「分かりました、スピード様」


 ナミとスピードは、教会裏へ回った。


 古い木の根元――

 土が不自然にえぐられている。


「……これは」


 ナミが近づくと、土の中に埋め込まれた“何か”が見えた。


「スイッチ……?」


 慎重に押す。


 ――ズズズズズ……


 低い音と共に、地面が割れ、地下へ続く階段が姿を現した。


 瞬間、強烈な臭気が吹き上がる。


「っ……!」


 ナミは反射的に鼻を押さえた。


「……凄まじい死臭……」


「ああ。間違いない」


 スピードは即断した。


「降りるぞ」


 二人は地下へと足を踏み入れる。



 ---


 一方、教会内。


 神父を見張るスズモは、胸の内で考えていた。


(……スピード様って、何者なのかしら)


(名前しか知らない。正体も、過去も……)


(もしかして、スピード様も……ホムンクルス?)


 その時だった。


 背後に、気配。


「――っ!?」


 口を塞がれ、声にならない声を漏らす。


「ふぐ……っ」


 次の瞬間、意識が闇に沈んだ。


 年老いた人物が、倒れたスズモを見下ろす。


「……厄介な小娘じゃ」


 神父へ視線を移す。


「場所が露見した以上、ここも破棄せねばならん」


 手のひらから、高熱のレーザーが放たれる。


 神父の心臓を正確に撃ち抜き、即死。


 そのままスズモにも向ける――


 だが。


 スズモの姿は、消えていた。


「……何?」


 背後から声がする。


「教会に着いた瞬間からな」


 スピードだった。

 腕には、スズモを抱えている。


「死臭に薬品の匂いが混じってた。地下へ降りた瞬間、その薬品臭が強くなった……だから戻った」


 年老いた人物は舌打ちする。


「……面倒じゃの」


「逆だ」


 スピードは地面にスズモを寝かせ、前に出る。


「あたいが、アンタを“ご主人”の所に連れて行く」


「抵抗するなら?」


「気絶で済ませてやるよ」


 二人の間に、殺気が満ちる。



 ---


 一方、地下。


 巨大な扉を前に、ナミは一瞬だけ躊躇し――開いた。


 その光景に、言葉を失う。


「……こんなにも……」


 部屋の隅には、積み上げられた無数の人骨。

 血に染まった手術台。

 瓶詰めにされた臓器。


「……人が……」


 ナミは震える手で資料に目を通す。



 ---


【ホムンクルス製造の為の実験報告】


 ・生体人間への魔物血注入 → 拒絶反応、死亡多数

 ・死体への注入 → 変化なし

 ・臓器移植 → 効果なし

 ・魔物への人間臓器移植 → 変化なし

 ・魔物の一部を移植 → 適応個体あり。転移済み

 ・神父は殺害を楽しむ傾向あり。用済みのため処分予定



 ---


「……やはり」


 ナミは歯を食いしばる。


「カイマが“生成できる”ことは知っている……でも方法までは知らない」


「だから、無数の犠牲を出して、確立しようとした」


 資料を掴む。


「……二度と、こんなことが起きないように」


 ナミは決意を固め、地上へ戻る。


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