25話
ガイマたちは無事に合流した後、レガネスが避難させていた住民を街へ戻した。
何が起きていたのかを、ベンとマリが言葉を尽くして説明すると、住民たちは深く頭を下げ、感謝の意を示した。
その夜、彼らは街の者たちの厚意で宿を提供され、今はその宿の一室――広い空間に集まっていた。
部屋の中央には、魔法の拘束具で縛られ、意識を取り戻したガガが座らされている。
その周囲を囲むように、ベン、マリ、ドラ、レガネス、ガイマたちが立っていた。
沈黙を破ったのは、ベンだった。
「ガガ……君がここでしたことは、絶対に許されることじゃない」
声は震えていたが、目は逸らさない。
「でも……それで終わりにはしたくない。罪滅ぼしとして、僕たちと一緒に来て、行動してほしい」
ガガは一瞬きょとんとした顔をし、次の瞬間、腹を抱えて笑い出した。
「くく……ははははっ。お前と一緒に行動する? 罪滅ぼし?」
嘲るような視線をベンに向ける。
「馬鹿言うな。そんな生き方を選ぶくらいなら、死んだ方がマシだ」
一瞬、声が低くなる。
「……いや、もう遅いか」
ガガは、ベンとマリを交互に見た。
「先に行くぜ、ベン、マリ」
その直後だった。
ガガの身体が、不自然に膨れ上がり、内部から光が漏れ出す。
「――ッ!」
異変を察したレガネスが即座に動き、ガガを魔法の結界で完全に包み込む。
次の瞬間、結界の内側で激しい爆発が起きた。
轟音が宿全体を揺らす。
だが結界の外には、破片一つ飛び散らなかった。
結界が消えた後、そこに残っていたのは――何もなかった。
「……寄生爆弾か」
ドラが低く呟く。
「捕縛された時点で爆破する仕組みだが……レガネスの魔法で眠らされていたから、起動が遅れたんだろう」
ベンとマリは、その場に立ち尽くした。
「ガガ……」
「……どうして、こんな……」
涙をこぼす二人に、ドラは静かに声をかける。
「ベン、マリ。部屋に戻ることもできるが……どうする?」
一呼吸置き、続ける。
「これから、ガイマが“なぜ記憶を失ったのか”を話す。長くなるし、辛い話だ」
ベンは首を横に振った。
「……帰らない。聞いた方がいい」
マリも小さく頷く。
「……私も、聞きます」
「分かった」
ドラはそう言い、静かに語り始めた。
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【回想】
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魔道神ナミは、世界神カイマの指示を受け、配下のホムンクルスと弟子のスズモを伴って、小さな村を訪れていた。
「……ここね。カイマが言っていた村は」
村は静かすぎるほど静かだった。
「この村を訪れた人間が、次々と行方不明になっている……その原因を探るのが、私たちの任務よ」
スズモが緊張した面持ちで頷く。
「ナミ様……失敗は許されません。ご主人の期待を裏切りたくありません」
「分かってるわ」
ナミは軽く息を吐く。
「手分けしましょう。私は怪しい場所から調べる。スピード様は別行動で」
「了解だ」
スピードは周囲の空気を嗅ぐように目を細めた。
「……嫌な匂いがする。あたいはその“臭い”を追う」
次の瞬間、スピードの姿は掻き消えていた。
「……相変わらず速いわね」
ナミは苦笑し、スズモを見る。
「私たちは、村外れの教会に行くわよ」
「はい、ナミ様」
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教会に足を踏み入れた瞬間、静寂が二人を包んだ。
奥から現れた神父は、ナミの姿を見るなり、明らかに動揺した表情を見せた。
「な……魔道神ナミ様!? なぜこのような、何もない教会に……」
(……やっぱり、驚くわよね)
ナミは平静を装う。
「たまたま近くを通っただけです。祈りを捧げに寄らせていただきました」
「そ、そうでございますか……どうぞ」
ナミとスズモは奥で祈りの姿勢を取る。
(スズモ、聞こえる?)
(はい、ナミ様)
(念話で話してる。教会内をサーチして)
(了解しました)
スズモは床に手をつき、静かに魔法を発動させる。
(……構造に不審な点はなし。隠し部屋も、人の反応もない)
一方、ナミは神父に声をかける。
「最近、この村を訪れた人が行方不明になると聞きまして」
「……初耳ですな。ここ最近、訪問者はいません」
嘘をついている様子はない。
(……じゃあ、どこで消えているの?)
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一方その頃。
スピードは村から少し離れた高台に立っていた。
「……間違いない。死臭がする」
だが、場所が特定できない。
「それに……誰かに見られてるな」
次の瞬間、スピードは消え、すぐさま戻ってきた。
片腕には、小鳥のような魔物が掴まれている。
「お前か。監視してたのは」
容赦なく握り潰す。
――別の場所。
「な……何だ、あの速さ……」
椅子に座った男が、青ざめた顔で呟く。
「魔道神ナミまで来ている……この場所はもう危険だ」
男は決断した。
「研究拠点を破棄し、成果だけをダーク様に届ける」
転移魔法を発動した直後、その場所は爆破された。
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爆炎を遠くに見て、スピードは舌打ちする。
「……川底か。道理で臭いが拡散してたわけだ」
空を見上げる。
「ナミと合流しなきゃならんな」
こうして――
ガイマの記憶喪失へと繋がる、最初の事件は静かに幕を開けていた。




