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記憶を無くした者  作者: ひろろ
第2章
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25話

 

 ガイマたちは無事に合流した後、レガネスが避難させていた住民を街へ戻した。

 何が起きていたのかを、ベンとマリが言葉を尽くして説明すると、住民たちは深く頭を下げ、感謝の意を示した。


 その夜、彼らは街の者たちの厚意で宿を提供され、今はその宿の一室――広い空間に集まっていた。


 部屋の中央には、魔法の拘束具で縛られ、意識を取り戻したガガが座らされている。

 その周囲を囲むように、ベン、マリ、ドラ、レガネス、ガイマたちが立っていた。


 沈黙を破ったのは、ベンだった。


「ガガ……君がここでしたことは、絶対に許されることじゃない」


 声は震えていたが、目は逸らさない。


「でも……それで終わりにはしたくない。罪滅ぼしとして、僕たちと一緒に来て、行動してほしい」


 ガガは一瞬きょとんとした顔をし、次の瞬間、腹を抱えて笑い出した。


「くく……ははははっ。お前と一緒に行動する? 罪滅ぼし?」


 嘲るような視線をベンに向ける。


「馬鹿言うな。そんな生き方を選ぶくらいなら、死んだ方がマシだ」


 一瞬、声が低くなる。


「……いや、もう遅いか」


 ガガは、ベンとマリを交互に見た。


「先に行くぜ、ベン、マリ」


 その直後だった。


 ガガの身体が、不自然に膨れ上がり、内部から光が漏れ出す。


「――ッ!」


 異変を察したレガネスが即座に動き、ガガを魔法の結界で完全に包み込む。


 次の瞬間、結界の内側で激しい爆発が起きた。


 轟音が宿全体を揺らす。

 だが結界の外には、破片一つ飛び散らなかった。


 結界が消えた後、そこに残っていたのは――何もなかった。


「……寄生爆弾か」


 ドラが低く呟く。


「捕縛された時点で爆破する仕組みだが……レガネスの魔法で眠らされていたから、起動が遅れたんだろう」


 ベンとマリは、その場に立ち尽くした。


「ガガ……」


「……どうして、こんな……」


 涙をこぼす二人に、ドラは静かに声をかける。


「ベン、マリ。部屋に戻ることもできるが……どうする?」


 一呼吸置き、続ける。


「これから、ガイマが“なぜ記憶を失ったのか”を話す。長くなるし、辛い話だ」


 ベンは首を横に振った。


「……帰らない。聞いた方がいい」


 マリも小さく頷く。


「……私も、聞きます」


「分かった」


 ドラはそう言い、静かに語り始めた。



 ---


【回想】



 ---


 魔道神ナミは、世界神カイマの指示を受け、配下のホムンクルスと弟子のスズモを伴って、小さな村を訪れていた。


「……ここね。カイマが言っていた村は」


 村は静かすぎるほど静かだった。


「この村を訪れた人間が、次々と行方不明になっている……その原因を探るのが、私たちの任務よ」


 スズモが緊張した面持ちで頷く。


「ナミ様……失敗は許されません。ご主人の期待を裏切りたくありません」


「分かってるわ」


 ナミは軽く息を吐く。


「手分けしましょう。私は怪しい場所から調べる。スピード様は別行動で」


「了解だ」


 スピードは周囲の空気を嗅ぐように目を細めた。


「……嫌な匂いがする。あたいはその“臭い”を追う」


 次の瞬間、スピードの姿は掻き消えていた。


「……相変わらず速いわね」


 ナミは苦笑し、スズモを見る。


「私たちは、村外れの教会に行くわよ」


「はい、ナミ様」



 ---


 教会に足を踏み入れた瞬間、静寂が二人を包んだ。


 奥から現れた神父は、ナミの姿を見るなり、明らかに動揺した表情を見せた。


「な……魔道神ナミ様!? なぜこのような、何もない教会に……」


(……やっぱり、驚くわよね)


 ナミは平静を装う。


「たまたま近くを通っただけです。祈りを捧げに寄らせていただきました」


「そ、そうでございますか……どうぞ」


 ナミとスズモは奥で祈りの姿勢を取る。


(スズモ、聞こえる?)


(はい、ナミ様)


(念話で話してる。教会内をサーチして)


(了解しました)


 スズモは床に手をつき、静かに魔法を発動させる。


(……構造に不審な点はなし。隠し部屋も、人の反応もない)


 一方、ナミは神父に声をかける。


「最近、この村を訪れた人が行方不明になると聞きまして」


「……初耳ですな。ここ最近、訪問者はいません」


 嘘をついている様子はない。


(……じゃあ、どこで消えているの?)



 ---


 一方その頃。


 スピードは村から少し離れた高台に立っていた。


「……間違いない。死臭がする」


 だが、場所が特定できない。


「それに……誰かに見られてるな」


 次の瞬間、スピードは消え、すぐさま戻ってきた。

 片腕には、小鳥のような魔物が掴まれている。


「お前か。監視してたのは」


 容赦なく握り潰す。


 ――別の場所。


「な……何だ、あの速さ……」


 椅子に座った男が、青ざめた顔で呟く。


「魔道神ナミまで来ている……この場所はもう危険だ」


 男は決断した。


「研究拠点を破棄し、成果だけをダーク様に届ける」


 転移魔法を発動した直後、その場所は爆破された。



 ---


 爆炎を遠くに見て、スピードは舌打ちする。


「……川底か。道理で臭いが拡散してたわけだ」


 空を見上げる。


「ナミと合流しなきゃならんな」


 こうして――

 ガイマの記憶喪失へと繋がる、最初の事件は静かに幕を開けていた。

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