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記憶を無くした者  作者: ひろろ
第2章
58/66

23話

 

 ベンは息を荒げながら、迫り来る糸を炎を纏った短剣で次々と薙ぎ払っていく。

 触れた糸は一瞬で燃え落ち、空中で灰となって散っていった。


「無駄だ、ガガ!もう分かっただろ!糸じゃ僕には――」


 言いかけた瞬間、ベンは違和感を覚えた。


(……おかしい)


 糸は防げている。

 だが、攻撃が止まらない。


 少し離れた場所で戦いを見守るレガネスは、細めた目で周囲を観察していた。


(……ワイヤーじゃない。なのに、あえて“糸”で攻撃を続けている……燃やされる前提、か)


 その瞬間、レガネスは理解した。


(爆破……誘導してる)




「ガガ!何度やっても、その糸は僕には――」


 ベンの言葉を遮るように、ガガが不敵に笑う。


「本当にそう思ってるのか?」


 ガガはゆっくりと両手を広げた。


「お前の周りをよく見ろ」


 ベンが視線を巡らせた瞬間、背筋が凍る。


 ――空中に、無数の細い糸が漂っていた。

 すべて、炎に炙られ、赤く燻り、今にも消えそうで消えない状態。


「火のついた糸が、こんなに近くにあるのに……何も起きないと、本気で思ってたのか?」


 ガガの指先が、淡く青く輝く。


「水魔法を“ここ”に放ったら――どうなるかな?」


「……っ、待――」


 遅かった。


 ガガが水魔法を解き放った瞬間、


 バチッ


 という、鈍く嫌な音が空気を裂き――


 次の瞬間、

 凄まじい連鎖爆破が発生した。


 炎と水、魔力と魔力が衝突し、

 爆風が一気にベンを飲み込む。




 轟音。

 閃光。

 そして、白煙。




 煙がゆっくりと晴れていく。


 そこには――

 地面に倒れ伏したベンの姿があった。


 全身は焼け爛れ、衣服は炭化し、

 微動だにしない。


「……終わりだな」


 ガガは吐き捨てるように言う。


「次はその女だ。その後で、爆破神ダーマのところに行った“あの弱そうな男”」


 口角を歪める。


「まあ、俺が行く前に死んでるだろうがな」




 ――パチン。


 乾いた音が響いた。


 次の瞬間、

 倒れていたはずのベンの姿が掻き消え、


 レガネスの背後に、焼け爛れたままのベンが現れた。


「……なっ」


 ガガは目を見開く。


「今の一瞬で……何をした?」


 レガネスは答えず、背後のベンに視線を落とす。


「ベン」


 淡々とした声。


「今のあなたでは、ガガには勝てない。私が気づかなければ、確実に死んでいた」


 少し間を置き、問いかける。


「それでも、まだ挑む?」




 ベンは歯を噛みしめ、

 震える手で拳を握った。


「……倒さなきゃいけない」


 声は弱いが、迷いはない。


「でも……分かった。今の僕じゃ、勝てない」


 そして――


 ベンは頭を下げた。


「お願いだ。ガガを倒してくれ……でも、殺さないでくれ」




 レガネスは一瞬だけ目を細め、

 小さく息を吐いた。


「分かった」


 立ち上がり、軽く背伸びをする。


「じゃあ、捕虜にする」




 ガガを見据え、口元を歪める。


「お待ちかね。面倒だけど――レガネスが相手だよ。大人しく、捕まってもらうわ」




「やれるもんなら、やってみろ!!」


 ガガは即座に距離を取り、

 周囲にワイヤーを張り巡らせる。


 だが、レガネスは鼻で笑った。


「もうそれいいから」


 冷ややかな視線。


「独学で覚えたんでしょ?糸もワイヤーも……使い方が、なってない」




「黙れ!!この“適当”で何人も殺してきた!使えれば、それでいいんだよ!!」




「なら――」


 レガネスが言葉を継ぐ。


「本当の使い方を、見せてあげる」


 次の瞬間。


 地面が蠢いた。


 ガガの足元から、

 無数のワイヤーが突き出し、四肢を絡め取る。


「……ッ!?ありえねぇ!!」


 必死にもがくが、びくともしない。




「ワイヤーの強度を魔法で変化させ、地面に固定し、制御する」


 レガネスは歩み寄りながら淡々と語る。


「基本中の基本」


「あなたは“張ってるだけ”。それじゃ、こうなる」


 指先に魔力を込める。


 ――ガガが張り巡らせたワイヤーが、

 糸によって、寸断されていく。




 レガネスはガガの前に立ち、

 その頭にそっと手を置いた。


「事が終わるまで――寝てなさい」




 ガガの身体から力が抜け、

 そのまま意識を失った。




「……嘘だろ」


 ベンは呆然と呟く。


「あんな……簡単に……」




「見張ってて」


 レガネスは振り返らずに言う。


「私は、ガイマのところに行く」


 そう言い残し、

 その場から姿を消した。



 しばらくして。


 ドラ、マリ、ゲイズが合流する。


「ベン、ナミとノノは?……それに、そいつは?」


「……ガガだ。レガネスに捕縛された」


「……あのやる気なさそうな奴が?」


 ゲイズが呟くと、ドラは即座に言い切る。


「レガネスは“やる時はやる”。見かけで判断すると、命を落とすぞ」


「……はい」




 そこへ、

 ノノが魔法でミナを浮かせながら合流し、

 全員が揃う。


【一方その頃】



 ガイマは、爆破神ダーマがいる屋敷の中を進んでいた。


「……気配が、ない」


 異様なほど静かだ。


「自信があるのか……それとも、誘っているのか」


 地下はなく、

 残るは二階。


 最後の部屋の扉を開けると――


 外を眺める、一人の男がいた。


「侵入者が複数……未だに始末しきれないとはな」


 振り返り、ガイマを見る。


「貴様ら、何者だ?暗黒神ダーク様の支配地と知っての行動か?」




「知ってる」


 ガイマは一歩踏み出す。


「だから来た」


「お前を倒せば、この街は解放される」


 黒い、尖った棒状の武器を出現させる。


「覚悟しろ――爆破神ダーマ」




「……人間風情が」


 ダーマは嗤い、指を鳴らす。


 次の瞬間、

 床が光り、爆発。


「くっ!」


 ガイマは咄嗟に飛び退き、部屋の外へ転がり出る。


「床を爆破……!?自分の屋敷だぞ……!」




「まだ生きているか」


 声と同時に、

 再び足元が光る。


 ガイマは後方へ跳躍し、辛うじて回避する。


「……躊躇いがない」


「何故、これほど自由に爆破できる……?」




 煙が立ち込める。


「……分からないが」


 ガイマは武器を握り締める。


「接近すれば、無闇には爆破できないはずだ」




 床が抜けていると警戒しながら跳び込むが――

 床は無傷。


「……幻覚か?いや……」


 考える暇はない。


 ガイマは煙を切り裂くように突き進み、

 爆破神ダーマへと迫るのであった。



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