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記憶を無くした者  作者: ひろろ
第2章
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21話

 

 ドラは、血に染まった鞭を手にする男を鋭く見据えた。


「……避けた?違うわね。あれは、わざと避けさせた」


 男を睨み据え、低く問いかける。


「何が目的? あんた」


 男は、薄く口元を歪めた。


「気づいているだろう。さっきの男には、爆破神ダーマの“印”が刻まれていた」


 ドラの目が細くなる。


「会話内容、情報漏洩――一定の条件を満たすと爆死する。便利だろう? 使い捨ての駒としては」


 ドラはゆっくりと竜の姿を解き、人の姿へと戻った。


「……やはりね。それに、その口ぶり。聞かれたくない話があるように見えるけど?」


 男は鞭を収め、静かに言った。


「そうだ。俺は――お前とカイマに、父を殺された」


 一瞬、ドラの表情が凍る。


「……どういう意味?」


 男は懐から一枚の写真を取り出し、ドラへと投げた。


「父の名は、ウィップ神ヤコン。覚えていないか?」


 写真を受け取り、その顔を見た瞬間、ドラは息を呑んだ。


「……ヤコン……」


 男――エランは続ける。


「父は極秘任務に出たまま帰らなかった。その後、爆破神ダーマが現れ、“殺された”と俺に告げた」


 ドラは静かに、しかし確かな声で語り始めた。


「……ヤコンが言っていた息子。それがお前だったのね」


 エランが息を詰める。


「確かに、私とカイマはヤコンと戦った。

 彼は、私たちを殺すために集められた神々の中にいた」


「だが、ヤコンは知らされていなかった。相手が“世界神カイマ”だということも、この戦いの真の意味も」


 ドラは目を伏せる。


「参加しなければ、家族を殺すと脅されていた。否応なく、戦場に立たされていた。私たちは次々と敵を葬った。そしてヤコンと出会った時、彼は全てを話してくれた。だが――


 拳を握る。


「敵側の攻撃で、ヤコンは瀕死の重傷を負った。治療しようとしたが、彼は拒んだ」


「“この戦いを生き延びたなら、息子エランを頼む”……そう言って、息を引き取った」


 沈黙。


「……だが、その約束は守れなかった。カイマは死に、私は彼の中で眠りについた」


 エランは、震える声で呟いた。


「……なんだよ、それ……」


 その場に崩れ落ちる。


「じゃあ……ダーマが言ってたことは……全部、嘘か……」


 拳を地面に叩きつける。


「俺は……何も知らずに……カイマ様が築いたものを壊そうとして……」


 ドラは、静かに告げた。


「エラン。お前は、どうする?」


「まだ爆破神ダーマに従うなら……私は、約束があろうとお前を殺す」


 エランは顔を上げ、決然と言った。


「……もう、従わない」


「ダーマの口から真実を聞く。だから……案内する」


 立ち上がり、歩き出す。


「爆破神ダーマのいる場所へ」


 ドラたちは、その背を追った。




【西の入り口組】

 


 ナミ、ベン、ノノは、西門から街へ侵入していた。


「このまま進めば……あと少しで、ダーマのいる場所です」


 先頭を走るベン。


 その瞬間――。


「ベン!!伏せて!!」


 ナミが叫び、即座にベンを後方へ引き倒す。


 次の瞬間、空気が裂ける音。


 ベンの体表に、無数の“線”が走る。


「……っ!!」


 浅いが、鋭い切創。


 ノノが即座に理解する。


「糸……もし気づかなかったら、細切れだった」


 ノノは炎の玉を生み出し、前方へ投げ放つ。


 炎は“何もない空間”に触れた瞬間、燃え広がった。


 可視化される、無数の細い糸。

 街路全体に張り巡らされた殺戮の罠。


 ベンは地面に座り込んだまま、震える声で言う。


「……助かった……」


 ナミは冷静に言った。


「ガイマが悲しむから助けただけよ。それより――」


 前方を睨む。


「……出てきなさい」


 闇から、忍び装束の集団と、美少年が姿を現す。


「やはりベンか」


 ガガが嘲笑する。


「追っ手を振り切って、仲間を連れてきたか。

 ……そこの女は知らないが」


 ノノを見る。


「魅惑神ノノだろ?」


 ベンが怒鳴る。


「ガガ!!なぜ、嘘をついて俺たちに近づいた!!」


 ガガは肩をすくめる。


「お前とマリは、出世のための道具だ。それ以上でも以下でもない」


「レジスタンスの情報をダーマに売った。その褒美に、力をもらった」


 ノノを一瞥する。


「魅惑神?恐れるに足りない」


「ふざけるな!!お前の相手は僕だ!!」


 ガガは忍びたちに命じる。


「女と魅惑神を足止めしろ。ベンは俺が始末する」


 その瞬間。


 ナミが、一歩前に出た。


「……はぁ」


 深く、吐息。


「今の私はね、ものすごく機嫌が悪いの」


 彼女の体から、赤と青の魔力が噴き上がる。


 空気が歪む。

 地面が軋み、温度が狂い始める。


 ノノが即座に判断する。


(……ヤバい。本気だし)


「ベン!!今すぐ離れるし!!死にたくなければ言うこと聞くし!!」


「……ああ!!見れば分かる!!」


 二人は即座に後退する。


 ガガも顔色を変えた。


「……なんだ、これ……おい、止めろ!!俺は下がる!!」


 忍びたちが一斉に突撃する。


 ナミは、静かに地面へ手を置いた。


「……消えなさい!!炎熱氷河えんねつひょうが


 轟音。


 地面が赤熱し、溶岩のように輝く。


 同時に、空から――

 巨大な氷塊の雹が降り注ぐ。


 突撃した忍びは、近づいた瞬間、


 焼かれ、凍り、砕けた。


 一瞬だった。


 遠距離攻撃を試みた者たちも、

 意思を持つかのような雹に貫かれ、氷像となる。


 街路は、灼熱と極寒が共存する地獄と化した。


 ベンは、遠くから呆然と呟く。


「……あり得ない……」


 ノノは静かに言う。


「本来なら……街ごと消えてるし」


「カイマおじさんに、“使うな”って言われてた魔法だし……」


 ナミは魔法を解除し、よろめく。


「……魔力、使いすぎ……」


 視界が歪む。


「……この魔法…… 使っちゃ、いけない……気が……」


 その瞬間――。


 ナミの髪が、紫色へと変化した。


 そして、彼女の意識は闇へと沈んでいった

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