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記憶を無くした者  作者: ひろろ
第2章
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15話

 

 知らない場所に広がる、巨大な魔法陣。

 その中心に立ち、静かに息を整えながら彼は呟いた。


「母上、父上……勝手な行動をお許しください。どうしても、この目で確かめたいのです。

 一度ここを出れば、許可なく戻れないことも承知の上です」


 覚悟を込め、魔法陣を起動する。

 次の瞬間、視界が白く弾け、体が激しく引きずられるような感覚に包まれた。


 ――そして。


「カイマおじさん、朝だし!!起きて、そろそろ行動を開始するし!」


「カイマよ、早く起きぬか。いったい、いつまで寝ているつもりだ?」


 突然聞こえた声に、彼は弾かれたように目を開いた。


「……ここは……?それに……さっきの場所は……?」


 頭を押さえると、鈍い痛みが走る。


「くっ……頭が痛い……」


 すると、すぐそばで慌てた声が響いた。


「カイマおじさん!?だ、大丈夫? なにか、なにか出来ることない?」


 ノノが顔を近づけ、心配そうに覗き込む。

 その様子に、ドラが静かに手を伸ばし、ノノの肩に触れた。


「慌てすぎだ。きっと、悪い夢でも見ていたのだろう。カイマ、ゆっくり深呼吸をしろ」


 促されるまま、カイマは大きく息を吸い、吐いた。

 数度繰り返すと、不思議と頭の痛みが引いていく。


「……落ち着いたよ」


 そう言って顔を上げ、ノノの隣に立つ人物を見る。


「……え?ノノ、隣にいるこの人……誰だ?

 昨日はいなかったよな?それに……またカイマって俺のことを……」


 戸惑いを隠せない表情で言葉を探す。


「……もしかして、俺の知り合いなのか?」


 その問いに、ドラは淡々と、しかし決定的な一言を放った。


「知り合いというより……私の父だ。カイマは」


 その瞬間、空気が凍りついた。


 ノノは目を見開き、言葉を失う。


「え……?ドラ様が……カイマおじさんの……子供……?」


 カイマ自身も、信じられないという表情で頭を抱えた。


「待って、待ってくれ。え? え? だ、誰との……?」


「……これは夢か?まだ夢の中なのか?すまん、夢なら今すぐ覚めてくれ……」


 混乱する二人をよそに、ドラは小さく溜息をついた。


「……ともかく、今はその話はしない。話すとなると、私の出生から説明しなければならないからな」


 踵を返し、歩き出す。


「訳あって、急いで獣人の国へ向かわなければならなくなった。二人とも、早く来い」


 その背中を見送りながら、慌ててノノとカイマは後を追う。


 歩きながら、カイマは小声でノノに尋ねた。


「……ノノ、獣人の国に向かう理由、何か聞いてるか?それに……あの人はいったい……」


 ノノは少し言い淀みながら答える。


「ドラ様は……竜人族。人と竜人の間に生まれた方で……今では、竜人族はドラ様お一人だけだって……」


 視線を伏せ、続ける。


「それに……カイマおじさんが……その“人”かもしれないって……」


「いや……それは……ない……と思う……多分……」


 言葉はそれ以上続かず、沈黙が落ちる。

 ドラは迷いなく道を進み、二人は離れないよう必死について行った。


 しばらく進んだ先で、人の声が聞こえてくる。


「追っ手から逃げ続けて、もうかなり経つよ?

 イースタンの街に戻れるのよね、ベン?」


「俺に聞くなよ、マリ。生き残るには、ここに身を隠すのが一番なんだ。そもそも……お前が幼馴染にレジスタンスの本拠地を教えたのが間違いだった!」


「何よ!ベンだって、帰ってきた彼に全部話したじゃない!」


 声の主は、眼鏡をかけた短髪の女性・マリと、金髪の男性・ベン。


 ドラは立ち止まり、振り返る。


「人がいる。揉めているようだが……どうする?」


 カイマは少し考え、静かに言った。


「……困っているなら助けたい。獣人の国に急ぐ理由があるのは分かってる。でも……困ってる人を見捨てるのは出来ない」


「カイマおじさんがそう言うなら、ウチも手伝うし」


「……だろうな。記憶を失っても、そこは変わらない」


 ドラは苦笑し、頷いた。


「分かった。話しかけて、事情を聞こう」


 三人が近づこうとした瞬間――

 物音に気づいたベンとマリが即座に距離を取り、構えた。


 ベンはショートソードを抜き、マリは杖を握り締める。


「追っ手か!!俺たちは……死んでいった仲間のためにも、死ねない!」


「来るなら来なさい!最後まで、悪あがきしてやるわ!」


 その瞬間、二人の視線がノノに向いた。


 そして――凍りつく。


 武器が、音を立てて地面に落ちた。


「……冗談だろ……?なんで……魅惑神ノノが……?」


「知らない……知らないよ……死にたくない……」


 カイマはノノを見て小声で尋ねる。


「ノノ……魅惑、使ってないよな?」


「使ってないし!!多分……私の顔を知ってて、暗黒神ダークの関係者だと思ったんだと思う」


「……そうか」


 カイマは一歩前に出て、二人に真っ直ぐ向き合った。


「俺たちは追っ手じゃない。声が聞こえたから、助けになれないかと思って来ただけだ」


 指でノノを示す。


「ノノは……今、暗黒神ダークと敵対している。それを信じて、話してくれないか?無理なら……無理にとは言わない」


 マリはその真剣な表情を見つめ、そっとベンの腕に触れた。


「……ベン。彼……嘘は言ってないと思う」


「それに……魅惑神ノノが味方なら……イースタンの街にいる“神”たちをどうにか出来るかもしれない」


 ベンは短く息を吐き、頷いた。


「……分かった。ただ……もうすぐ暗くなる」


 振り返り、森の奥を指す。


「野営してる場所がある。そこで話してもいいか?」


「分かった」


 こうしてガイマ、ノノ、ドラは、

 ベンの案内で野営地へ向かい、

 彼らが背負ってきた過去と真実を聞くことになるのだった。

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