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記憶を無くした者  作者: ひろろ
1章
13/66

13話

 

 ガイマとスズモは、門の開閉装置の死角を利用し、正面の門を開くことなくイースタンの街へと侵入していた。

 背後で門が閉じる音が、やけに重く響いた。


「スズモ……これからどうする?」


 ガイマは周囲を警戒しながら問いかける。


「このまま、領主の館に突入するのか?」


 スズモはすぐには答えず、後ろに控えていた兵士たちへと振り返った。


「リリベットは、どこに連れて行かれたか分かる?」


 兵士の一人が、苦い顔で答える。


「……教会です。正確には、教会の地下牢」


「地下牢……?」


「領主が改築させた場所です。立ち入りは禁止されていて……逆らった者、疑いを持った者が連れて行かれます。拷問を受けて、戻ってきた兵も……いました」


 スズモは一瞬、目を伏せた。


「……そこまでしていたのね」


 静かだが、怒りを押し殺した声だった。


「暗黒神ダークの言いなりに……本当に、どこまでも堕ちたものね。分かったわ。まずは教会へ向かう。リリベットを、必ず助ける」


 目的は決まった。

 教会近くの開けた広場に差しかかった、その時だった。


「――止まれ」


 スズモの低い声に、全員が足を止める。


 次の瞬間、空気が歪むようにして、目の前に一人の男が現れた。


 耳の長い、エルフ。

 緑色の髪を後ろで束ね、薄い笑みを浮かべている。


「おやおや……これはこれは」


 男は愉快そうに言った。


「どこへ行くつもりだい?ここから先は“進入禁止”なんだけどね」


 男が指を鳴らす。

 その瞬間、兵士たちの足元から無数の茨が噴き出し、絡みついた。


「――っ!」


 動けなくなる兵士たち。


 即座にガイマが前に出る。


 黒い魔力が形を成し、尖った棒状の魔法がいくつも生成される。


「――下がれ!」


 一閃。


 茨はまとめて薙ぎ払われ、地面に散った。


「このエルフ……強い。お前たちは邪魔になる、下がれ!」


 兵士たちは一瞬迷ったが、頷いた。


「了解しました。兵舎に戻り、仲間を説得して準備を整えます」


 そう言い残し、彼らは去っていった。


 残ったのは、ガイマとスズモ、そしてエルフの男。


 男は拍手をした。


「素晴らしい。君が、マルクトの言っていた“男”か」


 そして、スズモへと視線を向ける。


「……それに、久しぶりだね。エルフの面汚し。――いや、“悪魔の子”」


 その言葉に、ガイマが反応する。


「……スズモ、知り合いなのか?面汚しって……悪魔の子って、どういう意味だ」


 エルフは笑った。


「話していないのか?なら、私が教えてあげようか――」


 言い終わる前に、スズモが手を振り上げた。


 エルフの頭上に、巨大な岩塊が出現する。


「――黙りなさい!!」


 轟音と共に岩が落下する。


「面汚し?ふざけないで!」


 怒りが、言葉となって噴き出す。


「お前たち村の連中が……母を殺し、父を殺した!」


 エルフは跳躍し、辛うじて岩を回避する。


「私が……人間とエルフの子で、魔法が使えなかったから?“悪魔の子を産んだ”という理由だけで!!」


 声が震える。


「それだけで、幼い私まで……村総出で殺そうとした!!」


 拳を握り締める。


「ナミ様が拾ってくださらなければ、私は……死んでいた!」


 エルフは吐き捨てるように言った。


「それの何が悪い。我々エルフは、気高き種族だ。魔法も使えぬエルフなど不要」


「……っ!」


「そのような子を産む可能性のある者も、排除して当然だ」


「ふざけないで!!」


 スズモは叫んだ。


「私は今、魔法を使っている!!それでも悪魔だと言うの!?」


 視界が、暗転する。



 ――回想


 エルフの子どもたちは、五歳前後で魔法を使い始める。


 才能があれば、もっと早い。

 だが、スズモは違った。

 五歳の終わりが近づいても、何の兆しもなかった。


「……お母さん。どうして、私は魔法が使えないの?」


 不安そうな声。


「みんな、使えてるのに……」


 母は微笑み、スズモの頭を撫でた。


「きっとね、あなたは特別なの。体が、まだ追いついていないだけ」


「そうだ」


 父も頷いた。


「いつか必ず、使えるようになる。それまで、父さんと母さんが守る」


「……うん」


 その夜、スズモは告げられる。


「長が、明日“魔法の試験”を行うって……必ず参加しろって言われた」


 両親は顔を見合わせた。


「……聞いていないわ」


「俺が、確認してくる」


 それが、最後だった。



 夜。


 目を覚ますと、母がそこにいた。


 血だらけで、片腕を失って。


「……スズモ。今すぐ、逃げるわ」


「……え?」


 混乱するスズモ。


 外に出ると、家を囲むエルフたち。

 父は、傷だらけで武器を構えていた。


 長が告げる。


「人間よ。貴様が嫁いだせいで、悪魔の子が生まれた」


 父が叫ぶ。


「――スズモは悪魔なんかじゃない!!」


 光が走る。


 母は、スズモの手を引いた。


「スズモ、走りなさい!」


 背後で、父が――殺される。


「いやぁぁぁ!!」


 母は泣きながら詠唱する。


「……サイレント。気配遮断。ワープ」


 世界が歪み、スズモは遠くへ飛ばされた。


 遠くで、母が戦う姿が見えた。


 そして――倒れる。


「……おがあざん……」


 魔法の効果にて声は、届かなかったのでった

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