-8- 偶像が歌う絵空事(5)
※この作品はフィクションであり、実際に存在する団体、組織、個人とは一切関係ございません※
※作品に登場する世界は実際の日本に酷似している別世界です。あくまで作品として楽しんで頂けると幸いです※
イベント会場は夕方頃にはスタッフたちが設営準備を終えて出演者たちはそれまでに立ち位置やエフェクトの確認作業を完了させた。
あとは明日のリハーサルを残すのみとなっており、スタッフたちは早々に撤収作業を行ない9割程のスタッフの退場が確認された。
『こちら矢崎、各班に報告します...IDタグの連携により退場したスタッフは9割程...残っているスタッフたちも18時までには退場予定とのことです』
「矢崎くん了解、各班は撤収作業が完了したところから最終チェック。チェックが完了したところは順次警備システムを作動させて封鎖して」
矢崎の能力で各班のリーダーと繋がっているため、羽ケ崎はそれを通じて指示出しを行なった。
自分も持ち場に戻ろうとした時――矢崎から追加で連絡があった。
『あ、あの...出演者の方でまだ退場されてない人がいて...撤収作業完了したステージエリアにいるそうです』
「その人の予定はもう終わってる?」
『はい...ステージエリアでの立ち位置等の確認が最後の予定です。名前は...本城 礼奈です』
「分かった。手の空いてる班に確認を――」
羽ケ崎がスケジュールを確認して班を向かわせようとした時、ネットワークを通して早見の声が聞こえた。
『あ、あの羽ケ崎さん...手が空いていればでいいのですが、羽ケ崎さんが行ってあげてほしいです』
「別にいいけど、何かあった?」
『その...詳しくは本人の口から伝えてほしいのであれですが...その...』
早見が上手く説明できずにいると、何かを察した羽ケ崎は少し表情が柔らかくなり笑顔を見せた。
「静がそこまで言うなら行ってみるよ。矢崎くん何かあれば追加連絡お願い」
『ありがとうございます!』『了解です...』
羽ケ崎はその足でステージエリアに向かい、客席の中央付近で立ってステージを眺めているレナを発見できた。
既に帰り支度は終えており、昼間みたキラキラで可愛いアイドル衣装から、変装一切なしの普段着は大学生のような印象を受ける。
「本城さん、ステージエリアはまもなく警備セットで閉鎖されます。予定が終了しているなら速やかに退場お願いします」
「あ...羽ケ崎さん!」
羽ケ崎をみたレナは急いでかけてきて彼女の手をがっしり掴んだ。
「その..昼間は言えなかったんですが、ありがとうって言いたくて...!すみません最後にステージを見ておきたくてちょっとだけ残ってました!」
昼間会った時と全く違う態度に羽ケ崎は少し困惑するも、レナはその後昼間に話したことを羽ケ崎にも話した。
そして、深々と頭を下げてお礼を言う。
「ありがとうございます!!最後のライブになるかもしれませんが...私たちリクリーストリニティで一番叶えたかった大舞台に出ることが出来ました!!」
彼女が所属している事務所は今月末で芸能事務所としては廃業する。
イベント数が減少した近年、転属することも難しく、彼女の年齢を考えてもここ1年がメジャーデビューする最後のチャンスだったのかもしれない。
それでも彼女はその先が無くても最後までリクリーストリニティとして走りぬいた。
「顔を上げてください本城さん。今まで走ってきたのはあなたです。私が切っ掛けだとしても――あなたが選んであなたが頑張った軌跡です」
静がお願いしてまでここに来るように言った理由を知った羽ケ崎は少し照れながらもレナの想いをしっかり受け止めた。
「あなたがこの先どんな道を歩んだとしても、今までの頑張りが無駄になることは決してないです。遠い未来は分からない話かもですが、明後日のあなたのライブを楽しみにしている人は多いですよ」
2日目の最後のライプはリクリーストリニティ。
テロ事件以降最大のイベント、イベント開催期間中のライブイベントは2日目のみで、大注目されている中大トリを務めているリーストリニティがどれだけ期待されているかは一目瞭然。
この順番は大金を積んだとしても得られるものでなく、レナが掴み取ってきた期待とリクリーストリニティとしての集大成というわけだ。
「羽ケ崎さん...私最高に最高の舞台を見せますから!羽ケ崎さんも絶対みてくださいね!!」
「任務中なので保証は出来ませんが...うっかり予定が変わるかもしれませんね」
実のところこのライブの警備担当には羽ケ崎を筆頭として第6班全員が参加している。
殺害予告されている本人以外で何かが起きるとすれば、一番注目されるライブイベントであることは間違いないからだ。
警備の情報は秘密のため彼女には嘘をつくしかないが、それでもレナは太陽のように眩しい笑顔でお礼をいって会場を後にした。
※※※
イベント開催1日目――来場者数は事前入場は約2万人、そして自由入場となるのは午後の予定で、その頃から一番警戒が必要となる。
警備会社と警察本部からも応援が追加で来ており、誰もが無事イベントが終わるように願う状況。
入場前の事前チェックが終了し、スタッフたちが慌ただしく開場に向けて動き始める。
『それでは入場を開始します!スタッフの誘導に従って決して走らないでゆっくり歩いてください!!』
事前入場が開始され、そこには早見のクラスメイトたちの姿も見える。
シマコに連れ出されたリカとソラは眠そうに歩いているが、シマコだけは絶対にグッズを確保すると意気込んでいる。
「ってか...お一人1点なんでしょう...なんでうちらも一緒に並ぶの」
「そそ、シマコ並んで買っておけばいいじゃん...」
シマコの買い物を付き合わされる2人は不満げにそういうと、シマコは2人に封筒を渡していう。
「これで2人も買って」
「え...あんた買おうとしてるの物販コンプリートセットだよね?」
「1つ3万とかするやつなのによくこんなお金持ってるね」
「私はみんなと遊ぶ日以外全部バイト入れて扶養内ギリギリまで稼いで全てのリソースをこの日を備えていたからね!!」
とても健全な学生とは思えないシマコに回答に2人はさらにドン引きする。
そのおかけで無事物販の購入を終えて、事前に梱包用の素材まで持ってきたシマコは素早く荷物を全て宅配で送り身軽になった。
落ち着いたところで3人は休憩スペースでお茶を飲んで一息つく。
「しかし人多いね...」
「警察の人もちらほらいるし、やっぱ最大のイベントってだけはあるよね」
「そろそろ一般入場も始まる頃だし、事前に明日のライブ会場の視察だけしたら帰ろうかな~」
事前入場とはいえ、物販の長蛇の列に並んだ2人はもうへとへとではあるが、シマコは限定公開されるリハーサル時間まで燃えている様子。
この日のためにシマコが頑張っていたのは2人も知っているため、仕方ないと言わんばかり2人で見つめ合い笑顔を見せた。
「お腹空いた...シマコ屋台とかなんかある?」
「飲食スペースがもうそろそろ始まる時間だから軽く何か食べる?」
「ちょっと私はトイレ、先なんか買っておいて」
「一緒いこうか?」
「子供じゃあないんだから...2人は先行ってていいよ、すぐ戻るから」
「ほーい適当に買って待っておくよー」
ソラは席を立って会場の見取り図を見ながらトイレに向かうと――
「うわ...マジか...」
シマコが入場前に必ずトイレを済ませるように言われていたが、今となってそれが大正解だと気づく。
トイレの前には物販に匹敵するぐらいの長蛇の列があり、早めに来て正解だと思った。
携帯を触りながら待つこと20分弱、ようやく列から解放されたソラは一息ついたあと2人に連絡するためメッセージを送る。
『送信に失敗しました』
何度送信してもエラーメッセージが発生するため、電波を確認してみるとデータ通信が機能していない様子。
時刻は既に自由入場開始しており一番混雑する時間のためアクセスが集中し過ぎて一時的に通信障害が発生している。
「一旦さっきの場所戻るか...」
とりあえず歩き出すも、先程までの休憩スペースは大混雑しており、2人も屋台から戻ったあと座ることが出来ず移動していると判断でき来た。
携帯も使い物にならないためしばらく合流出来ないと悩んでいたところ、突然男性3人組に声をかけられる。
「君1人?迷子?」
「よかったら一緒にまわらない?」
こんなところでナンパするのかとドン引きするソラの表情を察することなく3人はそれぞれ話かけて注意を引こうとする。
携帯を触って話半分ぐらいで流していたソラはいい加減面倒になって大きくため息をついてその場から離れようとした。
「ちょっ待ってよー」
1人がソラの手首を掴んだところでソラはイライラが頂点に達し、手を振り払って睨みつける。
「こっちは友達と合流しないといけないの、興味ないんで他当たってもらっていいですか?」
普段なら少し派手なチェーンなどがついてヘビーメタルのバンドの人か何かと思える程の怖い服装をしているソラ。
目つきもかなり鋭い彼女に近づく人はそういないが、本日気温が少し落ちており、冷え性なソラは普段と違う服装をしている。
イメージでいうと図書館で静かに本を読んでそうな..全体的に落ち着き少し気が弱そうな印象となっているため、威圧感が9割減している。
明確な拒否をしているにも関わらず、察することが出来ない男たちは押せばいけると判断し、3人がソラに接近しようとすると――
「はい、そこ。嫌がってますよ?」
ソラの頭の上から突然聞こえる声。
振り返るとそこにはそこそこ身長があるソラが見上げる程の高身長の男性が立っていた。
筋肉質で体格はかなりよく、顔に傷がある警官が後ろから突然現れ、男たちにニッコリとほほ笑む。
「お、お巡りさん...い、嫌だなーちょっと誘ってるだけで――」
「そそ、迷ってるみたいだったから一緒に友達探してあげようと――」
警察の制服からでもはちきれそうな輝く筋肉と、どんなトレーニングをしたらそんな太くなるのか疑問しか浮かばない腕を組み、本人は威圧しないようにニコニコとしているその表情が絶妙なホラーと化している。
警察だと分かっていても怖いナチュラル化け物に、男たちが怯えながら答えると、その警察官は男たちが怖がっていることを感じ威圧しないようにと、更にニコニコと笑いながら男たちに近づく。
「そうでしたか、ではここからは私が引継ぎますので。皆さんはゆっくりと会場を楽しんでください」
警察官は男たちの方にその手をそっと乗せて微笑むと男たちは首を全力で縦に振ってその場から立ち去る。
男たちを追い払ってくれた警察官がそっとソラに近づく。
物怖じしないソラでも、流石にこの身長差と体格、おまけに顔の傷とホラーを感じる笑顔すぎる笑顔にかなり恐怖を感じてしまう。
ゆっくり近づく彼に思わず目を閉じてしまっていると――
「怪我ありませんでした?なんか遠くから見たら手を掴まれていたような...」
警官膝をついてソラが怯えないようにし、そっと掴まれた手首をみて心配する。
「あ...ちょっと痕が...ほんと乱暴ですね。すみませんもっと早く気付けばよかったんですが...」
怒られた子犬のように悲しそうな表情をする彼に、ソラは少し顔が熱くなる。
「い、いえ...大丈夫です...痛くないですし」
「良かったです。あ、すみません女性の手を勝手に...すみません」
警察官はハっと気づき慌てて手を離して頭を下げる。
不器用ながらも優しさを感じるその行動にソラは何か不思議な感覚に落ちる。
切ない恋愛映画を見て号泣する3人の友達とは別につまらなそうにお菓子を食べていたソラはずっとこんなことを思っていた。
『運命的な出会いなんて存在しないし、恋愛はくだらない』
そして、今...ソラは過去の考えを根底から崩されるような出会いをしてしまった。
「あ、あの...ありがとうございます」
「いえ、あ、友達とはぐれたのはホントですか?良ければ待合の広場がありますので行ってみますか?」
「は、はい...」
「えっと...今地図でいうとここが現在地で――」
ポケットから会場の見取り図を取り出して警察官はペンで現在地を書いて、そのあと待合の広場のルートを赤線で書いてくれた。
少し威圧的とも思える容姿からは想像できないような優しい説明と、可愛らしい字にソラは少しずつ心臓の鼓動が早くなる。
「はぐれた時は待合の広場にって案内もありますが、もし見つからない様でしたらここでアナウンスもやってますので是非。では私はこれで」
案内を終えた警察官が啓礼をしてその場を立ち去ろうとした時、ソラは無意識に彼の袖を掴んで引っ張ってしまう。
「えっと..?何かありました?」
袖を引っ張られた警察官が不思議そうに自分を見つめられた時、ソラは初めて自分が警察官の袖を掴んでいることに気づいた。
おかしい、こんなこと絶対におかしい。さっきのイライラで頭がおかしくなったのかと思うのと、今日は少し気温が下がっているとは思えない程体温が上昇し熱くなるソラ。
感じたことのない不思議な胸の高鳴り、顔が沸騰しそうで普段シマコやリカに接しているように出来ない...
アニメやドラマなどで見たヒロインが恥じらってる姿を鼻で笑っていたソラは、まさにその行動を自分がしてしまっていることにまだ気づいていない。
「良ければ広場まで案内しましょうか?すみません。あんなことがあったのに1人で行かせるのは気が利きませんでしたね...」
「あ、いえ...そういうわけでは!!で、でも...お、お願いします...」
謝る警察官に全力で頭を上げさせて一緒に広場に向かうことにした2人。
途中チラチラと自分を見てくるソラに警察官は内心冷や冷やしながら自分の行動が色々失敗してしまっているのだと反省していた。
なんとか挽回しようと警察官は話題を振ってみる。
「お友達とはぐれて大変でしたね。今日は沢山人もいますし、お目当てのものは買えましたか?」
「えっと...友達に付き合ってるだけなので...その自分は特に...」
ソラは何故か警察官を直視することが出来ず顔を隠しながら答えると、警察官の冷や汗が止まらない。
「(俺...やっぱりやらしたかな...よく見ると結構若い子だし...怪我の確認する時に手触ったのは不味いよな....)」
落ち込む警察官を他所にソラは胸のドキドキが抑えられず少し息苦しくなり立ち止まる。
「あっあ!すみません歩くペース早かったですかね?!」
「い、いえ...ちょっと疲れただけでそういうわけでは...」
あわあわとする警察官の姿に余計にドキドキが頂点に達したソラは思わず顔を隠してその場に座り込んでしまう。
その様子に調子が悪くなったと勘違いした警察官は慌てて彼女を抱きかかえ医務スペースに向かう。
「(お、お姫様抱っこ?!?)」
もはやソラも冷静でなく、色々誤解だと言いたくても、心はありえないぐらいラッキーな状況をとても喜んでおり、その時ようやくソラは確信してしまった。
初めて会った名前も知らない警察官に一目惚れしてしまったことを――
※※※
医務スペースに到着した警察官が担当として在中しているブリンガーの名前を呼ぶ。
「早見!急患っぽいんだ!見てくれないか?!」
早見、早見?その名前を聞いた時ソラはふと我に返った。
友人静は医務チームとして在中予定で、何かあれば医務スペースに来ればいいと教えてくれていた。
だが会場内に医務スペースは3か所ぐらい設置されており、そのうちの一つにたまたまくるなんてそんな運の悪いことが――たまたま同性なだけ、と考えるお姫様抱っこされている状況をもう少し楽しみたい冷静でないソラだったが。
彼に助けられた時点でここに来るのはもはや必然であるため、奥から急いで駆けつけてきたのは紛れもない友人早見 静だった。
「三島さんそのままベッドに運んでください!症状は?」
「待合の広場まで案内して歩いてたら急に息苦しそうに座り込んでしまって...」
三島が急いでソラをベッドに運ぶと、彼女は顔を全力で隠して冷や汗をかいていた。
だが、すぐに普段の服装とは違うが、友達であるソラだと気づいた早見は――
「ソラ...?」
気付かれたソラは顔を隠したままゆっくりと起き上がり、心配する2人を他所に早見を掴んで引き寄せた。
「しずっち...二人だけにして...お願い...ほんと頼む」
「え...あ...う、うん...?」
早見は不思議そうにしながらも三島に自分が見るからと退室させて、心配そうにソラを見つめる。
「大丈夫?貧血?ちょっと疲れた?」
イベントに来るのは知っており、シマコとリカの2人と回っているのも把握していた早見だったが、彼女たちがこの規模のイベントに来るのは初めてのため、色々と心配をしていた。
そのためソラも慣れない環境で体調崩したと心配する早見だが――ソラは三島が退室した後顔を隠すのを辞め、大きく深呼吸したのち、真剣な表情で早見に向き直った。
「あの人の名前教えて」
「あの人って...え?」
「一緒来てくれたお兄さんいるじゃん...その警察官の...」
「三島さん?え...もしかして三島さんなんか無神経なことしたの?」
普段のガサツさで友達に失礼をしたと思った早見の目つきが少し鋭くなったが、ソラはとてもよくしてもらったため、全力で首を横に振って答える。
「いや...すごくよくしてもらって...うん...なんかすごく助かったし...なんであんな軽々お姫様抱出来るのとか...人抱えて走ってるのにめちゃくちゃ安定感あって安心したとか...なんかどさくさ紛れてちょっと胸に寄りかかってみたりしたけど、筋肉質でごつごつしてるとか思ったけどなんか心地よかったし...なんか必死な表情とか...可愛いというかカッコイイというかなんか...そういうのとかはいいんだけど...」
「...?」
普段の2倍以上早く、4倍以上多く喋るソラが何を言っているのかよく分からない早見がキョトンとしていると、ソラは早見の肩を掴んで睨みつける。
「絶対、絶対、絶対にリカとシマコには言わないって約束して」
「え...あ...う、うん...」
「私...一目惚れしたかも...」
「一目惚れ.....一目惚れ...?誰に?」
「み、三島...さん...」
その言葉を聞いた早見は一瞬ポカーンとしてそのままフリーズしてしまったが、数秒後、意識を取りもどしておもむろに立ち上がってカーテンの向かう側に歩き出す。
「み・し・ま・さ・ん!!!」
鬼の形相で三島をポコポコと叩きだす早見に三島は軽くパニックになるが、周りのスタッフがなんとか止めて落ち着かせた。
そして、一旦ソラはよくなったということで医務スペースをあとにするが、リカとシマコの2人と合流するまで早見と話すこととなった。
「ソラ...なんで三島さんなんて...まあ、別に悪い人ではないし、どっちかというと優しい、いい人だけど...ガサツだし、空気読めないし、あと歳だって結構離れてるんだよ?」
「私もよく分からないっていうか...こんなの初めてで...でもなんか...三島さんに出会ってから一緒に過ごしたのがすごくなんかよくて...自分でもうん....びっくりしてはしてる」
ここまで自分を語るソラを見たことがない早見はいよいよ確信してしまう。
ほんとに、ホントにソラは三島を好きになってしまったのだと。
あの恋愛とかくだらないと言っており、一目惚れなんて「チョロっ」と鼻で笑っていてあのソラが。
「よーーく考えてね。よーーーーくよーーーく考えて!」
念押しで忠告する早見とは裏腹に、三島が早見にポコポコ殴られてもなんの抵抗もせず、平謝りしていたため、優しい人だと逆に好感が上がってしまったソラ。
「しずっち...三島さんの連絡先教えて」
「ダメ!絶対ダメ!!私この恋は応援できないよ!」
友達が自分の上司を好きになる...羽ケ崎ならまだしも三島を好きになるなんて考えられない早見は、なんとかソラを説得しようとするが、上の空なソラは聞く耳を持ってはくれない。
その事実が本人の恋煩いとはまた別方向で大きな悩みを早見に抱えさせてしまうのであった。
※※※
勤務終了後、大きくため息をついている三島に、羽ケ崎が後ろから背を叩いて声をかける。
「どうしたの。最近では珍しい大ため息」
「羽ケ崎さん...その...今日ちょっと早見の友達に悪いことしたなって...」
三島は羽ケ崎に昼に起きた出来事を説明した。
すると、羽ケ崎は少し首をかしげて携帯を開いて早見にメッセージを送る。
『もしかして、静の友達。三島くんに惚れたの?』
少ない情報だけで真相にたどり着いた羽ケ崎...その頃静は3人でご飯を食べており。
そのメッセージをみた途端咳き込んでしまい、慌てて席を立ってトイレに入り返信する。
『だ、誰から聞いたんですか?!』
『ちょっと三島くんが落ち込んでたから本人から色々聞いてみたら、状況的にそうかなって当たってた?』
『羽ケ崎さん...どうしたらいいですか私...』
『個人的には三島くんはいいと思う。私はおすすめ出来るよ。そして相手が静の友達なら三島くんにとっても間違いないと思う』
『羽ケ崎さん?!』
『まあ、大人としてなら、本人がまだ高校生2年生だから応援出来ないし、むしろ反対するよ。でも、熱しやすく冷めやすい年ごろを抜けて、もしその気持ちが数年先も続くなら応援してあげてもいいんじゃあない?』
『それは...そうかもですけど...警察としてそれどうなんですか』
『警察だって人間だから恋愛もするし、本人の自由だよ。まあ、今回本人が問題ではないし、あんまり三島くんをいじめないであげて』
メッセージのやり取りを終えた羽ケ崎は、携帯をしまってゆっくりと三島を見上げると。
「三島くん。給料上げられるように頑張ろうか」
「はい?」
謎のアドバイスを受けた三島きポカーンとしつつ、羽ケ崎と久しぶり夕食をともにするのであった。
こんにちは、作者です。
今回は書きたくてたまらなかった回です。
フィクションなので、色々飛んでいる内容でもありますが、あくまで作品として楽しんで頂きたいため、前書きにも後書きにも注意を乗せておきます。
ソラと三島の関係は果たしてどうなるのか?早見の胃が痛くならないように祈りながら、今後も楽しみにして頂けると嬉しいです。




