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特殊犯罪対策課第6班  作者: ヒトノモドキ


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11/15

-11- 偶像が歌う絵空事(了)

 ライブイベント終了後、天板ごと照明を落下させた犯人を署まで連行し、取り調べを実施する中――羽ケ崎は別室でその様子を観察する。

 実行犯の能力は「金属を自分の方向に引き寄せる」で、対物特化かつ物質指定と、引き寄せるという限定的な要素が掛け合わさってあの射程と出力を可能にしていた。

 能力には視認が必須、押収された荷物の中には小型の暗視用メガネも見つかり、犯人は現場で捕まるとは思っていなかったのか、あっけなく自白を始めた。


「俺は依頼されて...落とすだけで下にいる人は問題なくするって言われたんです!」

「依頼人は誰ですか」

「その...rasaです...」


 意外でもない人物の名前に取り調べをしている警察官も納得の表情。

 そして、実行犯の前にPCの画面を見せ――そこにはrasaに送ったとされる殺害予告の原文が保存されていた。


「これはあなたのPCですよね?これもrasaから依頼されたものですか?」

「はい...自分宛に送るように言われました...」

「彼とやり取りしている証拠はありますか?」

「あ、あります!毎回通話で指示してましたが...一部録音してて」


 警察が調べあげるスピードが尋常ではないことを知った実行犯はrasaを庇うつもりは一切なく、自分はあくまで指示されたんだと言わんばかりに誠実に答える。

 別室で見ていた羽ケ崎の元に四宮局長がやってきて同じく実行犯のやり取りを見る。


「羽ケ崎くん、今回はお手柄だったね」

「いえ...避難誘導を開始しなかったのは私の責任です」


 警察としては致命的に間違った行動をしてしまった羽ケ崎。

 今回の動きが『良い結果』と呼べるのは、あくまで死傷者が出なかったからに過ぎない。

 実行犯が1人で無かった場合と、能力の読みが外れていた場合...レナが能力を発動出来なかった場合、そして早見の友人その場に居なかった場合...いくつもの軌跡が重なって無事逮捕出来たに過ぎない。


「従来なら咎められるかもしれないが、羽ケ崎くん。今の警察組織はかなり考え方が違っているんだよ」


 四宮局長は上層部が今回の事件の簡易的な報告書で一次方針決定書を出して来ており、そこには羽ケ崎の処分は全く記載されていなかった。


「従来なら避難誘導しなかった羽ケ崎くんは厳罰かもしれないけど。テロ事件に対して正確な分析と的確な行動が出来ることに対して、上層部は寛大な処置を取る。テロ事件を適切に対処出来なかったことで国が滅びかけたんだ。起きた事件に対してあの短い時間で的確に判断出来た羽ケ崎くんを責めれる人はいないよ」


 処分覚悟で動いた羽ケ崎だったが、上層部はマニュアルから外れた動きをした羽ケ崎の判断は間違っていないという決断を下した。

 犯人の行動原理等を詳しく解析した上で、現場にいる能力者たちも駆使して一丸となって事件を解決できたのは事実。

 今回の事件は徹底的に解析するため、各班員に詳しい報告書の提出が命じられている。

 羽ケ崎のような現場判断能力を身に着けるのは簡単ではないが、出来る人がやったことに対して徹底的に分析し、多くの人がマネ出来るようにするというのが今回上層部が下した判断。

 小さな山ができるほどの分厚い報告書を要求されているが、処罰ではなくむしろ称賛されていることに羽ケ崎は驚きを隠せなかった。


「さて、色々と答え合わせをしようか。まずrasaが殺害予告を自作していた件...これは正直可能性として浮上していたことだ。そしてrasaは今回事件を起こすために動いていた」


 四宮局長と羽ケ崎は事件が起きる前からrasaの言動が怪しすぎるため、周辺をコッソリと探っていた。

 情報を掴むことが出来ても事件ではないため動くことが出来なかったが、おかげで最大級の警戒をすることが出来た。


「ここまで限定的な能力者を確保するために、そうとう労力が必要だったでしょう。そこまでするのには訳があるはずです」

「事前にライバル事務所との密会についてはキャッチしていたけど。どういう目的なのかは分からなかった。個人的には労力に対して今回の事件がかなり粗雑と言える部分が気になる」


 誰かを中継して正体を隠すわけでもなく、実行犯と直接やり取りをし、実行犯に殺害予告も送らせ、その履歴も残っているなど...正直計画的というにはあまりにも粗雑な部分が目立つ。

 だが、rasaは何か考えがあってこの事件を起こした...羽ケ崎と四宮局長は考える。

 複雑に絡み合っているが、全ての事件でまず考えるべきは――騒動で一番不利益が被る人と、一番利益を得る人は誰かが動機に繋がる。


「rasaはそもそもイベントが大失敗するようにしたかったのでは?」

「その線はかなりあり得るね。異様なまでのイベント発信は問題が起きた時の火種となる。でも、イベントが失敗するとrasa自体も被害があると思う」

「rasaより被害を受けるのは所属事務所です。rasaと所属事務所との関係は異質です...両者の中が良好だとは考えにくいです」

「だとすると、rasaは事務所に打撃を与えることが目的...ライバル事務所の方も調査は進めてみた方がいいな」


 どっちみちrasaと実行犯との間で関係があることは明白、既に本人の呼び出しもしており数時間後には署に来るだろう。

 その前に矢崎から連絡が入った羽ケ崎はPCを開いてメールを確認した。


「四宮局長、こちらは過去rasaが配信で話していた内容をまとめたものです」

「過去って...rasaの活動からするとかなり膨大な量だぞ?」

「矢崎くんが頑張ってくれたので...一応資料としてまとめて貰っています。本番までは間に合いませんでしたが、こちらも役に立つかと」


 分析結果をまとめた資料によると、配信,SNS等の過去発言から事務所との仲が険悪になっていることが示唆されている。

 そして、文句を言うリスナーにrasaが放ったことばが今回の事件の本心だと2人は気付いた。


『そんなに文句言うなら脱退すればって?いや、マジ出来ればね。契約期間とかあるから大人って辛いんよ』


 その他にも事務所の愚痴などがかなりこぼれており、SNSでは「次なんかあったら違約金とか関係ないー」と話しており、一つずつパズルが繋がってくる。


「推測ですが、rasaは今回の事件を起こしてイベントが失敗した場合、所属事務所に責任を押し付けて移籍するつもりだったのかと」

「そんなことのために人命を危険に晒すような人でないことを祈るばかりだが――」


 四宮局長は大きくため息をつきながら書類を手に部屋を出ようとする。

 その時、思いだしたかのように引き返して羽ケ崎の前に何かが記録されている書類を出す。


「そういえば羽ケ崎くん、今月の残業時間何時間だと思ってる?」

「さて...」

「イベントという特殊なことがあったけど、いい加減代休も消化してくれないかな??」

「検討します」


 目線を逸らす羽ケ崎におでこに青筋が浮かびあがる四宮局長。


「明日のイベント、午前の予定は全て中止になったのだろう?午前休、取ってもらうよ?」

「はい...」


 代休のことはすっかり忘れていたため、これ以上先延ばしに出来ないと羽ケ崎は諦めて書類に押印した。

 レナの負傷とrasaの身柄の確保があるため、2人が出演予定のプログラムは全て中止、結果午後に全て集約する形でなんとか開催出来ることとなった。


「本城さんの怪我はどうですか?」

「しばらく歩行困難だろうけど、3週間もあれば問題なく動けるそうだ。あの怪我でステージで踊れたのは奇跡的だ。ホント」


 案の定じん帯を損傷していたレナは明日まで大事を取って入院することとなった。

 自分が至らないせいで怪我をしたと責任を感じている羽ケ崎は表情を少し暗くする。


「君が救った命だ。本人も怪我ぐらい問題ないと言っているんだし、そんな暗い顔をするな」

「はい...」


 仕事に対して完璧なまでに取り組める羽ケ崎も、3年前のテロ事件で大きなトラウマを背負っている。

 休みなく働くのも、その悪夢から逃げ出したいと思っている自衛だとある程度は見過ごしているが...最近は少し張りつめ過ぎていると心配する四宮局長であった。


 ※※※


 翌日、午前休を貰った羽ケ崎は花を購入してレナが入院している病院へ向かった。

 病室に向かうと窓の外をぼんやり眺めているレナの姿が確認でき、羽ケ崎に気づくとだんだんと表情が明るくなり飛び上がる勢いで笑顔を見せた。


「羽ケ崎さん!!」

「その様子だとすぐ治りそうですね」

「はい!大丈夫だっていうのに...みんな心配してアハハ...」


 彼女無茶を考えたら周囲は一旦大人しくさせるために無理やり入院させたということもあると考える羽ケ崎。

 持ってきた花を渡す時...既に花束が沢山飾ってあることに気が付く。


「先にお見舞いに来た方が?」

「はい、元メンバーの2人と、静ちゃんとそのお友達が3人が来てくれました」


 早見もお見舞いに来ていたと知り少し驚く羽ケ崎。

 バックヤードで手当てしたのは早見のため、色々気になるのは当然だと思うが、レナの話しぶりからかなり打ち解けている様子。


「個人的に気になりましたが、本城さんこれからどうされるんですか?」

「ステージではレナって呼んでくれたのに...意地悪ですね羽ケ崎さん」


レナの言葉に羽ケ崎は一瞬だけ目線を逸らしつつ、咳払いして言葉を続ける。


「今はステージではないので」

「またまたー照れ隠しが下手ですよー!まあ...でも。そうですね...ステージにマイクは置いて来ましたし。正直色々悔しいですが、アイドルとしてはもう引退しましたから」

「...」


 時期が悪すぎた...としか言いようがない。

 イベントはこれから活発になるが、イベント会社等の苦境は、すぐに解決されない。

 レナも他移籍を見つけようと思えばできるはずだか、積極的にそれをしないのは潮時だと感じているから。

 彼女は高校を卒業してからアイドルを目指して現在6年目、メンバーがいた3年間と居なかった3年間...彼女は全力で走り続けた。


「仕事はいくつか候補がありますし、バイトも掛け持ちしてるのでしばらくは大丈夫です!一旦夢には区切りをつけて本城 玲奈として生きます」

「...そうですか」


 悔しい気持ちは本人もあるだろうが、粘ってなんとかなる問題ではない。

 彼女もそれを理解した上でアイドルとして最後の舞台に挑んだ。

 頑張って笑顔を作っている彼女に、羽ケ崎はバックヤードに忘れた荷物を渡してた。


「本城さん、今あなたがどんな状態なのか是非確認してみてください」


 昨日はかなりバタバタしていたため、忘れていたがSNSでリクリーストリニティの解散とレナのアイドル引退は公式SNSから予約投稿されている。

 これが最後のライブになることはもう決定しており、レナはアイドルとしてマイクを舞台において引退宣言するという演出のために黙っていた。

 そしてライブが終わる頃にSNSで公式に発信できるようにしていたが――その投稿はとんでもない数の反応がつけられており、昨日からトレンドに「レナ」「リクリーストリニティ」というワードが乗り続けている。


「すごい...みんな...」


 スマホの画面をスクロールしながら、様々な言葉を目にしてレナは思わず涙を浮かべる。

 そしてスマホを抱きしめて静かに「ありがとう...」と呟く。

 ここまで惜しまれながら引退できるとは思っていなかった...最後にリクリーストリニティとして名前を伝えることが出来たレナは決して夢半ばで終わった不運なアイドルではない。


「羽ケ崎さんありがとうございます。リクリーストリニティとして...最後のライブが出来たのは羽ケ崎さんのおかげです」

「正直迷う部分は多かったですが――あなたの歌声を最後まで聞けて良かったです」


 羽ケ崎はレナに向けて静かに啓礼し、レナも啓礼を返した。

 涙を流しつつも嬉しそうに笑う彼女の笑顔は羽ケ崎にとって最高の勲章だ。


 ※※※


「だーから!弁護士が来るまで何も話さないつーの!」


 rasaは椅子の背にもたれかかり、子どものように足を貧乏ゆすりしながら怒鳴った。

 実行犯との繋がりは明らかになっているのに、rasaは彼を頭のおかしいファンと主張。

 そんな主張が通るわけがないと、呆れながらも職務を全うするために質問を続ける警察官。


「実行犯と連絡したのは確実、rasaさんの携帯に履歴がないとしても調べればすぐに判明します」

「じゃぁ俺に聞く必要ないよな。税金もらって働いてるんだから俺に構ってないで仕事しろよ仕事。ってかイベント中止にしてどうしてくれるんだよ。損害は警察が払ってくれるのか?」


 別室で見ている四宮局長も頭を悩ませたが、その時警官が入室し取り調べをしている警官に追加で資料を渡す。


「かしこまりました。では本人からは聴取出来なかったのでこちらで調べさせて頂きました。今から事実確認なので、認めても認めなくても大丈夫です」

「ういー」

「まず、rasaさんからお借りした携帯からデータを復元しました。そこで実行犯と連絡が取っていたことが判明しております。通話記録も数日以内に携帯会社から正式に取り寄せる予定です」

「っ?!」


 rasaは犯人が失敗した時に携帯の履歴等を消し、証拠隠滅に走った。

 だが、警察側に機械に対してかなり強いブリンガーがいるため、携帯を壊していれば時間稼ぎにはなっていただろう。


「そして、復帰したデータの中に他事務所との連絡と、移籍についての話がありますね。イベントで問題を起こせばいいという発言もあります。こちらも否認頂いて結構です。相手側にも事情聴取しますので」

「お、お前ら!プライバシーの侵害だぞ!」


 甘すぎる隠蔽に警察としては今までの態度全てが無意味なことだが、それがやっと理解できたrasaは慌てて席を立って抗議する。


「今回人命がかかった事件です。あなたがしたことはイベント妨害ではなく殺人未遂ですよ」

「知らねえよ!俺が言ったのはの間奏の合間に誰もいない時に落とせって言ったのに!なんでライブしてる時に落とすバカの責任を取らないといけなんだよ!」


 ようやく本人の口から出た事件の真相は、そのどちらが真実かを証明するのは難しいが、どちらも『自分はそこまでのつもりではなかった』という自己弁護に満ちていた。

 rasaと実行犯との間で一番の認識の差がある部分は照明を落とすタイミング。

 rasaは誰もいない時に証明を落としてアイドルイベントを中止させることでイベント中止の責任を事務所の管理体制に問題があると追及するつもりだった。

 一方で実行犯はrasaがレナのイベントを狙い撃ちして照明を落とすように命令したと言っている。

 通話内容を全て確認出来ないため、この食い違いについて正確に証明することは難しいが、rasaがイベントを妨害しようとしたという事実は変わらない。


「実行犯とrasaの証言がどうしてこんなに食い違うんだ?」


 どちらかが嘘をついてるにしては不自然...この事件を計画したのはrasaで間違いないが、意図的に何か手を加えられている可能性が浮上した。


「四宮局長、rasaと接触していた事務所が一枚噛んでるのでは?」

「そう考えるのが妥当ではあるな」


 だが、今回rasaも意図的に手を加えている人物も想定出来なかったことが1つだけ存在している。

 それは実行犯が逮捕されてしまったことだ。


「あの場に羽ケ崎くんが居なかったら実行犯は逮捕出来てなかった。それが犯人にとっては最悪の想定外となっているはずだ」


 仮に実行犯が逮捕されていなかったとしたら、人命被害が出たイベントを強行していたrasaは批判の的となっていたはずだ。

 事前に警戒をしていたため、捜査を進める上でrasaとライバル事務所の関係は必ず出てくる。

 そうすればrasaはもちろんライバル事務所までが大打撃を受けることとなる。

 実行犯から話を聞けないことで、双方の計画の食い違いが発生していることに気づかず、この一件で最大の利益を得る者――


「rasaの強行策の被害者として走査から外れることも出来る...自身も少なからず被害を受けていれば尚更だな」


 rasaの所属事務所。

 関係性が異様であり、関係が悪化してたとは言えrasaのイベント強行を会社として賛同せず支援しないという選択肢も容易に取れたはず。

 だが、最後まで事務所側は「rasaに逆らえない」とうスタンスを崩さなかった。

 いわばrasaの暴走を黙認しているに等しい点が、四宮局長としてはずっと気になっていた。

 四宮局長の見解を聞いた部下の1人は、まさかという表情を浮かべるが、彼は大きくため息をついて答える。


「人とは...時に利益度返しで感情を優先してしまう。たとえどれだけの被害が出ようとな」


 考えたくない方向での推理だが、四宮局長は証拠集めのために操作部隊を編成。

 本来予定に無かったrasaの所属事務所の捜索まで開始し、徹底的に証拠を探した。

 ここまで犯人逮捕から1日半であり、尋常でない動きの速さに世間は大いに驚きを見せたのであった。


※※※


rasa逮捕はイベント終了後にメディアから正式に報道され、警察は早々に公式会見で判明している事件の詳細を解説した。

 証拠のほとんどを押収し、精査してどのような罪が当てはまるのか確認段階にあり、思惑を巡らせていた者たちが全て逮捕済みという異例のスピード。

 3年前とは比べ物にならない程、迅速な対応...そして、動きの柔軟性に世間は圧倒され、同時にrasaが計画犯という事実に驚いた。


「やばくね?rasa」

「ってか..レナさん死んでたかもしれないの?」

「あんなに頑張ったのに台無しにされかけたとか...」


 自然と世間はライブを妨害されながらも警察に協力しライブをやりきったレナに多くの意見が生まれた。

 レナ本人へ質問が殺到し、沈黙していることが難しくなった彼女は、警察側と相談した上で動画という形でファンの皆に事件当時の状況と、元々予定されていた引退ライブが最高になったと笑顔で心境を話した。


『結果よしって話かもしれないけど。私は生きてるし、みんなが楽しめたなら最高のライブってことでダメかな?あはは楽観過ぎるかなー』


 普段から明るく前向きな彼女の変わらない発言に、過激な意見は少し鎮静化されたが、犯人たちに相応な処罰が下ることを望む声は多い。

 混乱が続く中、彼女は「近々嬉しい報告も出来そうだからみんなそれまで一緒に頑張ろう!」と話した。


※※※


 数日後、第6班の事務所...事件は終わってからが本番...羽ケ崎の班も異例の動きをしたことで大量の報告書の提出を求められ、特に事務仕事が苦手な三島は辞書と睨めっこしながら言い回しについて考えていた。


「ぐああ、分からねえ...どうすればいいんだ」


 机に倒れ込んで心が折れる三島に、尾長が仕方なく報告書を手直しする場面もあり、大変ながらも少しずつ業務は平常運転へと向かう。

 そして、本部から戻ってきた羽ケ崎が珍しく疲れた表情で事務所に入ってくる。


「みんな伝達、私明日から3日間代休だから...何かあったら連絡お願い」

「了解です!ゆっくり休んでくださいね!」


 四宮局長に雷を落とされたことを知っている尾長と三島はドンマイと言わんばかりに羽ケ崎を見つめる。

 そして、羽ケ崎がイヤホンをつけて休憩に入ろうとした時――彼女の携帯画面がチラッと見えた早見は笑顔を浮かべる。


「どうしたの静ちゃんー今日も羽ケ崎さんカッコいいなーとか?」

「い、いえそ、その.....羽ケ崎さんが聞いてる曲...前はクラシックが多かったのにって思って」


 再生されていたのはリクリーストリニティの曲...あの日レナがライブで歌った絵空事であった。

 イベント終了から1週間後、実行犯及びrasaの再逮捕、新たに所属事務所の社長も逮捕されこの1件は再び再燃してしまうのであった。



偶像が歌う絵空事(ラプソディー)編 -了-

偶像が歌う絵空事(ラプソディー)編はここで終了です。

事件とは常に結末が納得できないことが多いため、それを意識して書きました。

思惑とは常に誰かに理解できるものではなく、それが引き起こした結果はもちろん受け入れ難いものだと思っています。

世間に受け入れられていないことこそが正常な状態だと考えつつ、物語としては出来るだけ筋を通す形になっていればと思います。

ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。

次回は少し休憩パートにしようと思いますので、引き続くよろしくお願いいたします。

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