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特殊犯罪対策課第6班  作者: ヒトノモドキ


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10/15

-10- 偶像が歌う絵空事(7)

アイドルライブはリレー形式で1グループ2曲を披露する予定となっている。

リクリーストリニティの出番は最後ではあるが、その他のアイドルたちも注目株には間違いなく、パフォーマンスも能力を絡めて派手なものを行なうため、設備が普段より頑丈に作られているのは納得。

 舞台袖にいる警察関係者たちと、客席、会場の外で待機している厳重な警備体制。


「ネットでの配信にも注目が集まってますね」


舞台袖で携帯で中継情報を確認している尾長がそう伝えたと、羽ケ崎の緊張が高くなる。

 3年前と今ではテロ行為に対しての対策が全く異なっている。

 人質を最優先とする旧方式ではマニュアルが絶対とされ、結果犯人の意図がマニュアルが想定している事態と全く異なるため多くの犠牲者を出した。

 国会テロ事件で犯人の要求はなく、ただその場に居た人を全員処刑するということが目的。

 人質なんて取る必要もない圧倒的戦力で多くの人が犠牲となった。


「私、今でも夢に見るの」


舞台袖でアイドルのライブを見ていた羽ケ崎はふとそう呟いた。

 どんだけ悪口や批判を受けても羽ケ崎は弱音を吐かなかった。

 でも...羽ケ崎が仮眠室で寝ている時、悪夢にうなされている姿を尾長はよく目にする。


「同僚も沢山死んだ。私は能力のおかげで死なずに最後までたどり着いた。私が逮捕出来ると信じて多くの仲間が犠牲になったけど...人質は既に殺されていた。私たちはもう最後の捨て駒だったの」


当時の上層部は人質が次々と殺される状況に判断を下すことが出来ず、現場の突入が決まったのも議員のほとんどが殺され、沈黙する上層部とマニュアルを守ってる余地がないと指揮官と強行する警察官たちが責任を負う覚悟で突入した。

 国会内部に突入した羽ケ崎たちが目にしたのは、警備や護衛をして人達の死体...血しぶきが壁一面に飛び散っており、まさしく地獄となっていた。

 進むにつれ、無数のトラップが仕掛けられており、遺体を利用した巧妙なものまで...突入部隊の多くがその悲惨な光景に目を逸らしたいと誰もが思った。

 源藤の仲間と戦闘となった際、相手は一切の容赦なく同僚を殺害する残忍さ...ここで源藤を止めなければ日本という国が終わる。

 なりふり構っていられない状況の中、奇跡的に羽ケ崎は主犯源藤を逮捕することが出来た。


「私はずっと思ってる...私たちがもう少し早かったら結果が変わっていたのかなって」


それはどうしようもなく残酷なもしもの話。

 それは結果が変わっていた可能性はとても高いが、羽ケ崎たち現場の人間がどれだけ望んでも決定権を持つものが機能不全となっては行動を起こすことが出来ない。


『羽ケ崎,..お前はこの先同じ選択を強いられるぞ』


現場で源藤を逮捕した時...薄れゆく意識の中、源藤はそう告げた。

 その選択が今になるかもしれない。そのことだけが羽ケ崎の心を強く握りしめていた。


「羽ケ崎さん」


尾長は羽ケ崎の手を掴んでまっすぐ彼女を見つめた。


「私のお父さんは議員の秘書をしていて、国会が行なわれた議事堂に居ました。私も母と一緒にたまたま近くにいたから人質として取られてしまいましたが...人質を殺害することが前提だと分かった時、父と数名の議員は一般人を逃がしました」


その結果、尾長と数名の一般人は建物の外に逃げるチャンスが与えられた。

 だが、目の前であまりにも多くの人が死に、父親もまた死地に飛び込もうとしているその光景に尾長はパニックを起こしてしまった。

 逃げないといけないのは分かっているのに、その場から動くことが出来ず、父が殺され亡骸を抱きしめていた時――警察が強行突破し、犯人の追撃を免れた。


「二度と...あの悲劇を繰り返すわけにはいきません。だから私は羽ケ崎さんの班に来たんです」


多くの人の人生を変え、国に多大なる影響を与えたテロ事件を繰り返すわけにはいかない。

 このイベントが無事終われるように...それが6班としての使命だと尾長は認識している。


「...そうだね。今度は1人じゃあないからね」


矢崎という優秀な通信係は、監視カメラを常に分析し怪しい動きがないか確認している。

 会場の外では現在三島をはじめとした優秀な警察官たちが出入りを厳重管理している。

 能力面でも仕事人としても心強い尾長も、いざという時に観客を守れる早見もいる。

 最高のメンバーで出来ることは十分にしてきた、同じことは起こさない...そう決意し羽ケ崎は輝くステージを目に焼き付ける。


※※※


リーストリニティのライブまであと1組...シマコの緊張が高くなる中、ライブを楽しんでいる早見たち学生グループはダンスパフォーマンスが最高だった先ほどのグループの話で盛り上がっている。


「ダンスカッコイイね...あれなんかSNSで流行りそう」

「うごきめっちゃムズイからやれたらカッコイイだろうね」

「うん!」


初めてのライブイベントということもあり、想像以上に楽しんでいる早見。

 だが、彼女が決して通信機を手から離さないのを見て、3人はやはり少し不安を感じる。


「しずっち一応仕事でしょー」


他2人の表情を感じ取ったリカが場を和ませるため早見をいじる。

 すると、早見は照れながら話をする。


「そ、そうだけど...うん待機だし、会場内にいれば大丈夫だから」

「と言いつつ??リクリーストリニティのライブ楽しみにしてたり?」

「う、うん...本場のレナさんに会ったすごく印象変わったかも」

「でしょ!!!」


レナの話になると興奮するシマコーー語り出しが止まらないと思いきや少し落ち着いたのち――


「セットリストみたら、1曲目はレナさんが作ったオリジナルだったけど、最後の曲がデビュー曲だったんだよね...」

「なんか...うん、感じざるをえないね...」


一般に名言はされていないが、今回のライブはリクリーストリニティの引退ライブ。

 アイドルとしてこの上ないステージで終わる...それは嬉しさと同時に途轍もない悲しさを感じる。


「だから絶対瞬きしないように焼き付けないと!!!」

「隣でそんな目かっ開いたら怖いんだけど」


ソラが呆れた様子でシマコの頭を撫でて落ち着かせると、早見も静かにライブを見る。

 グループのライブが終わり、司会の人が出てくる。


「それでは最後ですね...いや、なんか長いようで短いような...みんなも待ってたんじゃあないですか?!」


司会のトークで盛り上がりを見せる会場、いよいよ最後のライブ...リクリーストリニティ。

 舞台装置など切り替わる中、舞台中央の仕掛けから登場予定のレナは大きく深呼吸をする。


「行ってきます!」


スタッフたちに眩しい笑顔を見せ、司会の人の言葉が合図となる。


「それでは!リクリーストリニティのレナです!!」


舞台中央の装置から飛び出し、紙吹雪が舞う中レナは華麗に着地し、客席に向かってウィンクしてクルっと回ってブイさんを見せた。

 アイドルとしては100点の所作に、会場は今までにない熱気につつまれ、レナは予定された配置で静かにダンスポーズに入る。

 今まで様々な光を放っていた照明が一斉に消え、中央に立つレナを白いスポットライトだけが照らす。


「聞いてください!リーストリニティで――」

『ガゴン!』


曲名を言い切る前――突然照明器具を吊るしている天板から不穏な音が聞こえた。

 舞台袖に待機していた羽ケ崎は真っ先に飛び出す。

 尾長は羽ケ崎の行動を確認した時――レナの頭上から照明器具を吊るした天板の一部が落下しているのが見えた。


「(何この重さ?!)」


尾長は咄嗟に能力で天板を支えるも、想像以上の重量に驚く。

 あり得ない、天板を固定はかなり厳重で点検時に技術班が『こんなに厳重にして...トラックでも吊るすんですか』とスタッフと笑っていたことも思いだす。

 彼らも今のイベントのために全力を尽くしており、手を抜くことなどしない。

 そんな厳重に管理されたものが、自分の能力で支えきれ程の重さの照明が落下。

 そして、天板を持ち上げようとする自分のちからより遥かに強い感覚...誰かが天板を引っ張っていることは間違いない。


「(私の能力の対物特化型がいる!)」


自分の力では天板と照明の落下を止められないと悟った尾長は走り出した羽ケ崎がまだ自分の射程内であることを確認し、彼女をレナの向けて吹き飛ばした。


「(触れた瞬間高度を最底辺まで――)」


尾長の判断を瞬時に把握した羽ケ崎はレナを庇うように落下物に背を向け照明器具の一部が体に接触したと同時に全ての器具を劣化させ一瞬で破壊。

 あれ程の重さの照明を見に受けても本人は軽い打身ぐらいで済み、レナは外傷はなさそうに見える。


「各班、配置に。レナさん立てますか?」

「は、はい..っっ!」


驚いたレナだが、すぐに立ち上がろとするも、羽ケ崎が庇う前――驚いてしい、思わぬ動きで足をくじいてしまった。

 かなりの激痛に立ち上がることがやっとなことを見て、羽ケ崎は応援を呼んで避難誘導を開始しようとした時――


「羽ケ崎さん...お願いします...1曲だけ...1曲だけやらせてください!」

「レナさん....気持ちは分かりますが、そんな場合では――」

「私の能力なら最悪お囮にもなれます!避難誘導しながらでも何でもいいです...このステージは...今だけは私たちの時間なんです!!」


明らかにハイになって正常な判断が出来ていないレナの言葉。

 彼女に歌わせてあげたい気持ちはある...だがここは心を鬼にし通信で避難誘導開始を支持しようとしたその時――


『羽ケ崎,..お前はこの先同じ選択を強いられるぞ』


突然源藤の言葉が羽ケ崎脳内に響いた。

 つい隣で言われたかのような錯覚に羽ケ崎は一度冷静になるため大きく深呼吸する。

 あの時は決定権も自分になく、人員も準備も不十分だった...だが今、この場には多くの仲間と、多くの選択肢が存在している。

 誰かを助けるために、誰かを切り捨てたり、何かを切り捨てる選択をする必要はない。


「(落ち着いて...点検の時の補強状態から事故である可能性は低い。この規模の落下を事前点検で発見出来ないことはあり得ない。細工もないなら射程内で能力を行使したことになる。能力の前兆は引っ張られるような音、そして...あの補強された設置物たちを動かせるのは尾長でも無理だった)」


ここから総合するに、犯人の能力は尾長と似た形だが条件が厳しく対物特化である可能性が高い。


「(破壊の痕からみると吊るしてある天板ごと無理やり引っ張ってる感じ...この出力で厳しい条件だとしたら、多く見積もっても半径100mぐらいの射程。追撃がないことも考えると、レナの殺害でなく、照明を落として問題を起こすことが目的。――避難誘導に紛れて逃げられれば完全犯罪)」


テロの目的...この分析が現在の警察に求められる最も重要な技能。

 このまま避難誘導を開始すれば犯人は犯罪を成功させ、警察としては途轍もない打撃を受ける。

 だが、犯人が1人とも限らない状態で避難誘導をせず万が一が起こった場合のリスクが高すぎる。


「各班に伝達、避難誘導は待機――責任は私が取ります。今から犯人を逮捕します」


それでも犯人の意表を突けるだけのカードがこの場に揃っている。

 レナの能力で会場全体に光の雨を降らせれば観客の感情がある程度把握できる。

 天板が見える位置かつ100m以内で他の観客と明らかに違う感情を持っている者がいる...それが犯人である可能性は非常に高い。

 そして、観客の中で...この能力が発動した時確実に犯人を視認出来る能力を持っている者がいる。


「レナさんの1曲が終わるまでが勝負です。それでだめなら...」


羽ケ崎の言葉の前に通信で各班からの応答が聞こえる。


『ダメなんてありません!』

『やってやりましょう!』

『こんな素敵なイベント終わらせるなんてダメです!』


通信で応答する各班のリーダーは誰1人反対することなく羽ケ崎の判断を支持した。

 1人ではない...その言葉のようにこのイベントのために集まった人達の想いは決して無駄にはさせない。


「静、ステージまで上がってきて。それと――お友達に通信機渡して置いて」

『了解です!』


静が来ればこの場の残骸は上手く演出として誤魔化せる。

 問題は――


「足を怪我している状態で、最高のパフォーマンスをすることが出来ますか?」


レナの能力は任意で発動できるものではない。

 通常ならこんな状態でまともに踊って歌うことは不可能――だが、羽ケ崎にもレナ本人にも言葉では上手く説明できない確信が存在した。


「はい...1曲だけ...この1曲だけは絶対に大丈夫です」


根拠のない自信ではあるが、羽ケ崎はその言葉を嫌いではない。

 スタッフに指示して曲を流す準備と早見を呼び寄せている中――レナは羽ケ崎にお願いする。


「羽ケ崎さん、流す曲は――」


ステージが土埃で混雑する中、客席から不安の声が上がる。

 ファンたちも、そうでない人たちもざわざわと声が響き、不安が助長される。

 能力で他の人より動体視力が優れているシマコは、事件の一部始終を見てします、飛び出そうとしたが、早見に尻尾を強く掴まれ、本人は舞台に消えていってしまった。

 不安が最高潮に達し少しずつ混乱が起きようとしたその時――唐突に照明の一部が空に舞い上がり落下した残骸は巨大な氷塊に変わっていく。


「リーストリニティで―――絵空事」


マイクを通して聞こえたのはレナの声で、氷塊はレナの言葉と同時に砕かれ、照明に照らされ銀色の眩しい光が彼女を包み込む。

 曲が始まり、レナが踊り出すと、観客はこの一連の流れが、壮大なライブの演出と理解する。

 テロ事件を乗り越えたイベントということで、こんな大胆な演出をしたと都合よく解釈するファンもおり、観客は大喜び。

 レナの無事と、1人となってからあまり聴くことが出来なかったデビュー曲に、シマコは涙を流して全力でペンライトを振る。

 だが、依然ソラとリカだけは困惑した表情を浮かべる。

 早見が飛び出した以上、事件であることは確定...そして早見は舞台に消える前リカに通信機を渡して耳につけるように指示している。

 一体何が起きているのか...把握する暇もなく、曲はサビに入り、レナはこれまで見せたどのパフォーマンスよの眩しい笑顔で歌う。


『羽ケ崎さん!カメラの解析結果、レナさんが舞台に立つ前に怪しい動きをした人はいません』


通信で全員に矢崎の声が届き、能力の発動条件に身体動作が必要ないことを知る。

 だが、犯人は確実に慌てている...こんな状況でライブが強行されるなんて誰も思ったりしない。


「(足すごく痛いけど...体が軽い...いつもみたいに...みんなとデビューした初ライブみたいに!)」


降りつけを考えてくれたスイが隣で踊ってくれているように感じる。


「(動きに合わせてフリルが輝いてる...みんなで頑張って作った初めての衣装が...私と一緒に!)」


服を作ってくれたミカがライブそっちのけで衣装に釘付けになっている様子が浮かぶ。

 今――ステージに立っているのは自分1人だけど...この曲は...この時間は――みんなで、リクリーストリニティ全員でこの場に出ている。

 初めて立ったステージは小さなライブハウス、3人がやっと立てる狭いステージ、観客も数十名程度...それでもレナは3人で踊って最高のパフォーマンスを見せたあの時と同じ気分になっている。

 そんな彼女に、天使がまるで祝福するように...翼と大粒の光の雨を降らせる。

 パフォーマンス、歌唱力そして能力の見栄えにより、ネット配信での同時接続数は爆発的に伸び、会場の盛り上がりも最高潮に。

 光の雨が降り注ぐ会場の中――その連絡は唐突に響いた。


「あ、あった!!あったよしずっち!!」


光の雨が降ってしばらく....ラストのサビに入る前に、リカはその目で確かにとらえた。

 多数の監視カメラ映像を矢崎の能力で提供してもらったリカの目に映ったのは―――1人だけ他の観客と違う色の光を纏っている人物。

 リカの能力色彩感知(カラフルストーリー)は視認した色の情報を全て把握することができ、数値として感知することも可能。

 常人には同じ色に見えても彼女は0.1の数値単位で色が異なる部分まで把握できるため、無数にある光の雨の色を誰よりも正確に把握することが出来る。

 つまり、彼女の能力はレナの能力の精度をほぼ100%に近い程向上させることが出来る。


『対象は出口に向かって移動中!』


リカが見た犯人像を元に監視カメラで対象を捕捉。

 映像として伝達されたことを気に警察は一気に動き出す。

 観客をかき分けて出口に向かう犯人は瞬間――羽ケ崎の能力で衣服が硬化され身動きが取れなくなる。


「お手洗いですか?ご案内しますよ」

「は、羽ケ崎!!」


人混みの中確保された対象は、羽ケ崎の顔を見ると分かりやすく青ざめる。

 それ以上暴れることはなく、硬化を解くと諦めたように座り込んだ。


「ちくしょ...なんで何でこんなところに...」


犯人は悔しそうに涙を流すが、羽ケ崎は犯人を立たせて合流した別班とてもに犯人を会場の外に連れていく。

 それと同時にレナの曲も終わり、パフォーマンスに圧倒された会場は一瞬静寂に包まれる。

 息を荒くしながらも、伝えたい言葉のためにレナが前を向くと―――


「レナ!!」

「レナ最高だったよ!!」


会場に響く2人の声...懐かしいその声の主は――間違いない...元メンバーの2人がレナに全力のエールを送ってくれていた。


「2人とも...見に来てくれて...」


嬉しさのあまり自然と涙を流すレナは次の言葉を発することが出来ず、必死に手を振って感謝を伝える。

 その姿に、観客から特大の拍手とエールが送られ、ネット配信のコメント欄も読めないぐらい多くの言葉で飽和しサーバーが重くなる程。

 司会で出てきてトークで色々なことを誤魔化している中でも、そんなの関係ないと言わんばかりに、歓声鳴りやまない。

 逆境を乗り越え続けたリーストリニティは、この日アイドルの歴史にも大きく残る伝説のライブをやり遂げた。


※※※


何とか司会がライブのことを誤魔化している間、バックヤードで足の手当を受けるレナ。


「いっ...っ!!」


靴を脱がせて状態を確認すると、足首がパンパンに腫れあがっており、無理して動いたことでじん帯を損傷したと思われた。


「最悪じん帯切れてますよ...レナさん無茶し過ぎです!」

「えへへ...でもまだ1曲目なんだけど...」

「レ・ナ・さ・ん!」


まだステージに立とうとするレナに早見は鬼のような目で睨みつける。

 医療班からしても警察としても彼女がこれ以上ステージに立つことは絶対に止めなければいけない。

 だが、それはレナもよく把握しており、大人しく手当てを受けている中――ふと早見の手を取ってニッコリ笑って見せる。


「ね。私たちのライブ...どうだった?」


レナの質問に早見は呆れつつも、足を固定するための副木を取り出しながら答える。


「良かったです...今後の人生でも絶対忘れない最高のライブでした」

「えへへ...あ、でもマイクをステージにおいて引退宣言するの忘れてた...それがやりたくて直前まで発表してなかったのに、あはは....どうしよう」


なんともレナらしいオチに、早見が思わず笑うとレナもつられて笑ってしまう。


「(でも...知ってます。レナさんまだ何も諦めていないって)」


ライブを終えてやりきったと言っているレナの目には、まだ燃えるような強い意志が残っていることを早見は見逃さなかった。


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