『魔力』と間違えて『知力』に全振りした賢者の私は、えんぴつ一つで魔王軍を瓦解させる
間違えた。
賢者として神より使命を受けた私は与えられた初期パラメータの振り分けを『知力』に全振りしてしまった。
良くみたら『魔力』が下の方にあった。うかつ。
体力も攻撃力も魔力も全くない。あるのは知力だけ。ただの頭がいいだけである。こんな能力では勇者一行の仲間になったとて使命など果たせるわけもない。むしろ仲間に加えて貰えるはずがない。
知力があるからはっきりと分かる。私はダメ人間になってしまったのだと。
◇
だからと言って完全に勝ち味がないわけでもない。
知を巡らせろ。
見える、見える、勝利の道筋。
勇者は剣を使う。しかし魔王は巨大だ。その剣で切っても突いても致命傷は与えられない。魔法で焼いても皮を焼くだけだ、身は焼けない。
だが知力300の私がちょっと知を働かせれば──。
私はえんぴつを取った。
◇
魔王側近の四天王に目を付けた。
簡単だった。四天王筆頭のグランドルの第一の部下メテウスは愛妻家。そのメテウスの妻とグランドルが影で通じたと魔族に変装して魔族の街の路地に貼り紙をしたのだ。
当初グランドルはメテウスに「そんなことは絶対にない!」と突っぱねたが、それが逆に怪しく思われた。
メテウスはグランドルの命令を聞かなくなったので、グランドルはメテウスを処刑した。
そうなると他の四天王たちはグランドルは部下を殺して妻を強奪したと疑い、信用しなくなった。
グランドルは他の四天王と仲違いし、それぞれが領地の境を犯すようになった。
そして弱体化し、魔族は反乱を起こすようになった。
その不満を煽ればいい。私はまたまたえんぴつを取る。そして魔族の民に訴えるように貼り紙をするのだ。
◯魔王はこんな状況でも四天王を押さえることが出来ない。
◯魔王にもはや元の力はない。
◯魔王はすでに裏では人間と通じており、地位を捨てて亡命するつもりだ。
◯魔王は己の保身にしか興味がない。
◯さあみんな武器を持って立ち上がれ!
これが効いた。魔王城に勤める者が、開発中の破壊光線を出す兵器を盗んで市民に配った。それで魔王や四天王は市民の反乱で滅んだ。
指導者のいなくなった魔族も新しい指導者が次々に立ち上がり、粛清の嵐でそのうちに自滅したのだ。
私はそれらを高台から見物してほくそ笑んだ。
これで人々は平和を楽しめるだろう。えんぴつは剣より強しだ。
さて使命を終えた私は何をしよう。平和になった人たちが求めるものが分かる。それを安価で仕入れて商売でもするか。ふふ。




