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13話「心を通わせたいです」

 らしくなく大きな声を発してしまって、シャルテに驚いた顔をされてしまった。


 日頃、私は、あまり大きな声を出さない方だ。むしろ、声が小さい方なくらいである。そんな私が大きめの声を出したのだから、彼が驚くのもおかしな話ではない。


 でもこれは特別なことだから。

 とても大事なことで、全力で伝えなくてはならないことだから。


「シャルテさん、貴方に罪はありません! むしろ貴方は被害者です! 勝手に生み落とされて、勝手に捨てられて、災難でしたね。でも、でもっ……その分これから幸せになれるのです!」


 言いきった直後、シャルテはぷっと吹き出して笑みをこぼした。


「……ありがとうございます。僕のために、色々考えてくださったのですね」


 伝わったのだろうか?

 きちんと伝わっているだろうか?


「その気持ちだけでも、とても嬉しいです。ありがとうございます」


 シャルテの表情は直前までより柔らかくなった気がする。

 これは良い傾向かもしれない。


「分かっていただけたみたいで嬉しいです。その……偉そうにすみません」

「いえいえ。偉そうだなんて思っていませんよ」

「あ、あとっ……! 少しお話ししたいことがありまして……!」


 思いきってそう言うと、シャルテはきょとんとした顔をする。


「もし良ければ、今後も仲良くしていただけませんか?」


 視線は重なったまま。時が止まったような感覚に陥る。緊張感がこの身を包み、唇は動かない。今できることといえば、ただ返事を待つことだけ。それ以外には何もできない。すべての能力を奪われたかのような感覚。


「もちろんです。オブベルさんさえ良ければ」


 長い沈黙の果て、シャルテは静かに答えてくれた。


 この前知り合ったばかりの私たち。でもきっと、こうして交流を重ねてゆけば、仲良くなれる気がする。今はまだ小さな芽でしかないとしても、だ。


 マッチョたちは許してくれるようだから、私は当分この国にいる予定。シャルテもここで育ったのだから今後もこの国にいるのだろう。ならば、共に過ごせる時間も少なくはないはずだ。それに、妖精でない者同士ということもあるし少々残念な生まれということもあるから、仲良くなれないということはないはず。


 きっと上手くいく、今はそう信じたい。


「オブベルさんはいつもあの部屋にいらっしゃるのですよね? もし良ければ仕事の合間に会いに行きますが、どうしましょう?」

「え。それはさすがに申し訳ないです」

「嫌ですか?」

「いえ、べつに嫌ではないですけど……」

「ではそうします。会いに行きますね」

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