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11話「お気に入りをちやほやしたいだけですね」

「いえ。聞いていただくようなことは何もありません。ただ少し、僕はオブベルさんには相応しくないと、そう思っただけのことです」


 シャルテの物言いは決して鋭くはなかった。が、その表情はとても切なそうに見えて、こうして見つめているだけでも胸が苦しくなる。こんな彼をこのまま放っておいて良いのだろうか、と、悩んでしまいそうになる。


「えっと……その、すみません。踏み込んでしまって……」

「気になさらないで下さい。では、僕はこの辺で、仕事に戻りますね」


 その言葉を最後に、彼は私の方を見なくなった。彼は一人の庭師に戻ったのだ。彼はもう、こちらへ意識を向けることはしない。庭に生えている植物だけを見ている。


 庭を整える仕事だから当然と言えば当然ではあるのだが、心なしか切ない。


 どこで間違えたのだろう。どこで違う行動をしていればこんなことにならずに済んだのだろう。何度も考えて、けれども、私一人が考えたところで答えなんて出るはずもなくて。思考の渦に飲み込まれ、ただ無意味な時間だけが経過してゆく。


 その日のシャルテとの交流は、妙な形で終わってしまった。



 翌日、縦長の鏡を持った色黒マッチョが訪ねてきた。

 いきなりの訪問。何か言いたいことでもあるのだろうか。あるいは、鏡を通して見せたいものでもあるのだろうか。目的は不明だが、恐らくそんなところだろう。


「オブベル様、お見せしたいものがありまして」

「……オフフィードですか?」

「はい、そうです」

「待って下さい。私、もうあの国のことはどうでもいいです。ですから見せていただかなくても」


 もう関わらない、というだけであって、オフフィードに復讐したいわけではない。それに、苦労しているオフフィードを見守っていたいわけでもない。調子よく帰ってこいと言われても帰らない、ただそれだけのことで。


 ただ、私に選択権はないようだった。

 色黒マッチョは勝手に話を進めていく。


「そういうわけには参りません。オフフィードをうつっせぇー……マッチョン!」


 すると、縦長の鏡の鏡面が揺らぎ、オフフィード王とフレレヴィアが映し出された。

 今回は音もついている。


『オフフィードの民よ! 今、この国は、災難に見舞われている! その原因は、恐らく、聖女様への待遇が良くないから。聖女様をより一層丁重にもてなす必要がある。よって! 今月から税を増やす!』


 鏡の中のオフフィード王はとんでもないことを言っていた。


 彼は可愛いフレレヴィアに贅沢をさせたいだけだ。聖女への待遇なんて、災難の数とはそれほど関係ないはずだから。


 もっとも、正当な理由もなく追い出したりしたら話は別だけれど。


『そして! 皆で、新たな聖女フレレヴィアに感謝の祈りを捧げよう!』

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