表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

99/216

99話 治す



陽夏たちは橋が壊れるのを防ぐために何とか大きな技は使わないように戦っていたが、それでも何体ものウルフを斬り伏せていっていた。


俺はその横で負傷者の傷を治したり、傷ついた人をウルフから守り戦線から離脱させたりしてできる限り死者が出ないように務めていた。


特に危ない場面などではコナーのサポートがあり、俺たちが来てからは死者は出ていない。


だが、だからといって油断は出来ない。


前回はあの女の人もダンジョンから出てきていた。


つまり、このウルフのダンジョンからもそれに近しい存在が出てくるかもしれないという事だ。



「コナー! 何か異変は無いか!? 前の女の人みたいなのがまた出てくるかもしれない!」


「…………大丈夫だよ!」


「そうか、何かあったら言ってくれ!」


「了解!」



コナーは端的そう話す。


コナーがそういうなら大丈夫だろうが、一応警戒はしておこう。


俺レベルの耐久力があればある程度何が来ても抑えられる。


その時になれば俺と陽夏で倒すしかないだろう。


これが杞憂になればいいんだが…………。


負傷者は絶え間なく運ばれてくる。


軽症の怪我から重症の怪我まで様々だったが、いずれも応急処置がなされていた。


どんなに重症の人でも見捨てられずに出来る限りの処置がされている。


何人か動けない程の人も居たが、そんな人達も近くで誰かが必死に看病していた。


そんな姿がこの街の団結力を示しているかのようで、嬉しかった。


みんなはきっと俺を頼って応急処置をしてくれている。


どんなに怪我が深かろうと、俺がきっと治してくれると信じて。


だから、俺はそれに応えるためにも治し続けた。


どんなに深い怪我でも俺なら治すことが出来る。


…………死んでなければな。


俺が負傷者を治しきると共に陽夏達はウルフの数を減らして行った。


警戒は続けるが、女の人らしき人は出てきていない。


ウルフの残党も狩り、陽夏達は戻ってきた。


みんなそこまでの大きな怪我はしていなかったが、一応全員治していく。


やはり体の中にダメージが蓄積したりしていたため、しっかり治す。



「いやぁ、びっくりしたわよ。ちょっと走る位の気で居たのに本格的な運動になっちゃった。」


「こっちも呼びに行こうとしていたら丁度来てくれたもんだからびっくりしたよ。」



陽夏とコナーは談笑していたが、俺はそれ所ではなかった。



「なぁ、本当に何もいないんだよな?」


「え? あぁ、うん、何処を見ても何もいないよ!」


「そうか、ならいいんだが…………。」



俺は1人で悩んでしまっていた。


最近色々なことがあり少し心配性になっているのかもしれない。


よく良く考えれば女の人が来たのなんて1回しか無い、次は来ないという可能性だって多いにある。


それにあの女の人のような存在が他のダンジョンにも必ず居るとは限らない。


やはり杞憂だったようだ。



「うぅん、ゴブリンが居なくなったと思ったら次はウルフか、一難去ってまた一難だねぇ…………。」


「安心して! 私達これからウルフのダンジョンに行くから、すぐに止めてやるわよ!」



陽夏はそう言って胸を張る。



「おい、陽夏、そんな事言っても出来るか分から無いんだぞ?」


「…………大丈夫よ。」



陽夏は自信なさげな様子になってしまった。


まぁ、調子に乗って危険な事されるよりかは良いけど、これはこれで調子が狂うな。



「まぁ、何かあっても俺がフォローするから陽夏は全力でやってくれ。」


「っ! わかったわ!」



陽夏はそう言いながら元気を取り戻して行った。



「そうそう、ダンジョンと言えば、1つお願いがあるんだ。」


「どうした?」


「えっと、次行く時は僕も連れてって欲しいんだ。」


「コナーがくるのか? けどそうしたら防衛面が薄くなるんじゃ…………。」


「それがね、すごい事に気づいたんだよ。この前君達がダンジョンに行った時からピタりとゴブリンが出なくなったんだ。だからダンジョンの中でモンスターを倒せば外にモンスターが出なくなるみたいなんだ。それだったら僕もダンジョンに行きたいんだ。」



そうか、そんな事があったのか。


それなら別にいいが、コナーは陽夏よりも更に体力が無さそうに見える。


そんなコナーを連れて行って守れるかどうか分からない。


別にコナーが弱いと思っている訳では無いが、コナーに危険が及ぶのは嫌だ。



「あー、その顔は僕が弱そうに見えるから連れてっていいか悩んでる顔だね?」


「いや、そんな事は…………。」



こういう時のコナーの勘はびっくりするほどに鋭いな。



「あれ? 知らないの? コナーってすごい強いのよ? いつも支援しかして無いから分かんないかもしれないけど、元から色々やってた人みたいだし、そこにスキルも着いてるから下手な人よりも全然強いよ? 少なくともダンジョンで私達のお荷物になったりすることは無いわ。」


「え? そうなのか?」



はっきりいってコナーがそういう強かなイメージはあまり無かった。


体も結構可愛らしい感じで…………。



「あぁ、もう、この体はアイテムのせいでこうなってるのであって、僕のせいじゃ無いんだからね!」



え?

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ