95話 闇コナー
俺達はコナーの部屋から出て歩いていく。
俺は何処に行くのかも何をしに行くのかもよく分かっていないため、とりあえずコナーの後ろをついて行く。
「それで、説明してくれるんだろ?」
「あぁ、君がダンジョンに行ったぐらいの時かな? 僕が頑張って理斗君の事を探したんだ。そしたら案外すぐに見つかったんだ。」
まじか、探すっていってもこんな世の中じゃ探すに探せなかっただろうに、コナーは簡単に見つけたって言うのか。
流石だな…………。
「けどね、あの子も元から悪い子だった訳じゃないと思うんだ。だから、ちょっとだけ説教をしてあげたんだ。そしたらちゃんと分かってくれたみたいで、今では君に謝りたいと言ってるくらいなんだよ?」
「そ、そうなのか。」
せ、説教ってそのままの説教だよね?
別におかしな事を言っている訳では無い様だが、なんだかコナーの事が怖く見えてしまう。
「晴輝君もあの子の事は許せないかもしれないけど、大目に見てあげて欲しいんだ。僕も許してはいないけど、ちゃんと反省したみたいだからあれ以上は説教しないであげてるんだ。だから晴輝君も…………ね?」
「お、おぅ、善処するよ。」
特にコナーが俺に対して怒ってる様な感じではなかった。
しかし、胸の奥にはあのゾンビ男への怒りが燃えたぎっている様で、思わず俺は気圧されてしまった。
コナーはゾンビ男の事を許していないとは言っていたが、本当に許していないんだろうな。
そうこうしているうちに山の中にある小屋のような場所に着いた。
小屋に入ると、ゾンビ男と佐々木さんがいた。
ゾンビ男がコナーを見た瞬間ヒイィと言って後ずさる。
しかし、ゾンビ男は厳重に拘束されていたのでずりずりと体をよじらせて下がるだけだった。
「おぉ、コナーに…………晴輝!? お前生きてたのか!?」
「あぁ、ピンピンだぞ。」
「そ、そうか、良かった…………。」
佐々木さんは安心したような表情を浮かべる。
「それで、今日はこのクソ野郎の事か?」
「うん、そうだよ。謝って許されるような事じゃないけど、少なくとも謝らないよりかはまだマシだからね。ほら、理斗君。」
「は、はいぃ!」
ゾンビ男は俺の前に這って寄ってきた。
その表情からは単純な恐怖のみが伝わってきた。
コナー…………マジで何やったんだよ。
ゾンビ男は俺の前で這いつくばり、地面に顔を擦り付ける。
「この度は誠に申し訳ございませんでしたぁ! 死にかけの人を殺したり、貴方様に危害を加えたりしてしまい、多大な迷惑をおかけしてしまいました! お詫びとして、何百発でも殴ってもらって大丈夫です!」
ゾンビ男はハキハキとした口調で俺へ謝罪した。
ちょ、まじ怖いんだけど。
これがあの最後の最後まで俺を殺そうとしてきたあのゾンビ男とは思えない程の変貌ぶりだ。
俺がその様子に困惑していると、コナーがゾンビ男の近くに寄っていく。
「ねぇ、理斗君。」
「はっ、はい!」
「何百発? 少なくない? 桁が後10個は足りないよ? ねぇ、許してもらう気あるのかな? 僕はどんな事があろうとも君を許すことは無いけど、さめて贖罪の気持ちがあるならそんな数にならないよね、ねぇ? それに殴ってもらって大丈夫? 殴ってくださいだよね? ね? いつから君はそんな事言える立場になったの? ね? 違うよね? 自ら許しを請わなきゃいけない立場だよね? そんなんじゃ少しの贖罪にもならないよ? ねぇ、だからさ…………。」
「ストーップ、ちょっと待てコナー、晴輝がドン引きしてるぞ? もうとりあえずやめとけ。」
「えっ…………あっ、違うんだ晴輝君! 別に理斗君を許すとかそういうのじゃなくてただ贖罪させようとしてるだけだからさ!」
「いや、そういう事じゃ無くてだな…………。」
コナーと佐々木さんは何か話していたが、俺はコナーの闇の部分を見てしまったようで、ガクガク震えていた。
ちょっと、本当に説教とやらが何なのか本格的に気になってしまう。
知りたくは無いけど。
佐々木さんと何か話していたコナーだったが、くるりとこちらを向く。
俺は少しビクッとしてしまった。
「ごめんね、晴輝君。まだちょっと説教が足りなかったみたい。とりあえず好きなだけ殴ってもいいからさ! 殴ってあげてよ!」
「あっ、いや、遠慮しとくよ。」
「なんで?」
「えーっと、そうだ、陽夏がもうそろそろ起きるかも知れないだろ? そしたら急に俺達が居なくだったってなれば不安になるだろ? だからもうそろそろ戻ろうぜ!」
我ながらいいはぐらかし方だ。
今ゾンビ男を殴ったら殴ったでコナーが何をするか分からないし、俺はすぐにここを出るという選択をした。
「まぁ、それもそうだね。理斗君は後でまたしっかり説教しておくから!」
「そ、そんなっ!」
「ん? 何か言った?」
「い、いえ、何でも無いです…………。」
「はっ、早く行こうぜ! じゃ、佐々木さんもまた!」
「お、おう。気をつけてな。」
佐々木さんに別れを告げるという体でコナーの話を遮る。
コナーがまた闇コナーになってしまう前に俺達はその部屋を出た。