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91話 コナーの元へ



「それにしてもやっぱり陽の光って必要なのね、何か陽の光を浴びるだけで何か調子が良くなってく気がするもの。」


「そうだな、昔聞いた事があるんだが、陽の光にはストレスを軽減してくれ効果があるらしいぞ。」



まぁ、引きこもりの俺は陽の光なんて浴びてなかったけどな。


そんな引きこもりの俺は陽の光を浴びない生活が日常だったが、陽夏みたいな人には1週間も陽の光を浴びていないというのはきついことなのだろう。


それなのにあんなに元気にやってたと思うと、陽夏には感謝しかないな。



「んー、出れたのが丁度昼間で良かったね。これで夜だったら別にいいけど何かちょっとどんよりとした空気になっちゃうものね。」


「んー、そうか? 俺は引きこもりだったからよく分からないな。」



俺はあの時何かから怯えるかのように部屋の電気も消して日々を過ごしていたためそこまで夜が嫌なものとは思えなかった。


あれ、俺は何に対して怯えていたんだっけ…………。


まぁ、昔の記憶だしどうせ厨二病みたいな理由だろう。



「あー、そっか、晴輝って引きこもりだったんだけ。そうは見えないけどなーって、こんな事あんまり話したくないよね。ごめんごめん。」


「いや、大丈夫だ。」



俺が引きこもりになったのは高校生の時のいじめが原因だ。


あの時はいじめられてて凄く辛かった。


特に…………えっと、まぁ、とにかく辛かった。


そこからはそのままあの部屋に引きこもったんだ。


最悪な話だが、決して少なくない話だろう。


俺自身もうこの話を話すのは苦ではないが、せっかく陽夏が気を使ってくれているのだし、話す必要も無いだろう。



「とりあえずホテル街に帰るか。」


「そうね。」



俺達はダンジョンを出たその足でそのままホテル街へと向かった。


陽夏は久しぶりの外だからかスキップでもしそうな程の上機嫌でホテル街へと向かっていた。


なんだかんだ言ってホテル街が恋しかったのだろう。


それも無理は無い。


あんな危険な所にずっと居てホームシックにならない方がおかしい。


俺達はそんな事もあってか、すぐにホテル街に着いた。



「ただいまー!」



陽夏が元気にホテル街を守っているおじさんに話しかける。



「ひ、陽夏! 生きていたのか! あ、それに、えっと…………。」


「晴輝です。」


「あ、晴輝…………さんも生きていたんだな。はぁ、良かった2人ともダンジョンで死んじまったのかと思ってたんだ。死んでなくて良かった!」



そのおじさんは今にも泣きそうだったが、それでいて本当に嬉しそうな顔をする。


よく見たらこのおじさんはこの前俺が治しためちゃくちゃ怪我をするおじさんだった。


そこまで愛着がある訳じゃないが、それでも生きていてよかった。


この人はこのホテル街の為に文字通り身を削ってまで尽くしている人だ。


そんな他人に尽くせる人を俺は理解出来ないとは思いつつも、尊敬しているんだ。


そんな人が死んでしまったとなれば目覚めが悪い。



「え、なんで? 私生きてるけど?」


「はぁ、こんだけ長期間顔を見なかったら何かあったと心配するに決まってるだろ!?」


「あはは、吾郎さんってばちょっと心配しすぎだって。」


「お前は心配しなさすぎだ!」



この前俺が治しためちゃくちゃ怪我をするおじさん改め吾郎さんは陽夏に向かって説教している。


陽夏まさかちゃんと説明もしないできたのか?


そういえば俺の部屋に来てすぐにダンジョンに向かったし伝える時間が無かったのか…………。


そこまで考えていなかったが、よく考えたら俺ならまだしもずっとここにいた陽夏が急に居なくなりでもしたら心配するに決まってるよな。



「はぁ、全くこの子は…………あっ、晴輝も無事で良かったよ。君は命の恩人だし、まだまだ恩も返せて無いから死なれたら困る。だからまだ死なないでくれよな!」



そう言って吾郎さんは豪快に笑う。


そんなに恩になるような事なんてして無いのに律儀な人なんだな。


まぁ、感謝されて嫌な思いにはならないし、素直に受けっておこう。



「あっ、そうだ、それだったら早くコナーの所に行った方が良いかもしれない。あいつお前達が全然戻ってこなくてずっとソワソワしてたし、お前達がダンジョンに行ったっていう情報を知った時そんなに戦闘力がある訳でもないのに単身でダンジョンに乗り込もうとしたぐらい慌ててたから早く行かないとあいつぶっ倒れちまいそうだ、だから早く無事だって事を伝えてやれよ。」



そうか…………。


コナーには悪い事をしてしまったな。


俺は純粋に申し訳ない気持ちでいっぱいになった。


しかし、陽夏は露骨に嫌な顔をした。



「うぅん、私がコナーに何も言わないで出来たのが悪んだけど、あの人私に危険が及ぶような事をしようとしたらめちゃくちゃ怒るのよね、だから今回は何も言わないで出てきたのよ。だから晴輝だけで行ってくれない?」



陽夏…………こいつまさか伝えられなかったんじゃなくて確信犯だったのかよ。


はぁ、こいつはコナーが心配してくれてるって言うのに…………。


これは少しお灸を据え無くてはいけないな。



「陽夏、コナーに謝りに行くぞ。」


「ええっ!? ちょっと待ってよ、私行きたくな…………って力強! ちょ、まって、あー!」



俺は嫌がる陽夏をズルズルと引きずってコナーの元へと連れていった。


その時吾郎さんは俺に向かって親指を立て、良くやったと言っているような表情で俺を見送った。

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