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89話 謎



何時間か経った。


陽夏は眠っている。


初めは焦ったが、どうやら眠っているだけのようでかなり安心した。


しかし、いくつも疑問は残っている。


いつもの俺たちは出来るだけ危ない事は避け、明らかに危険だと判断した事は出来るだけ避けるようにしていた筈だ。


しかし今回はどうだろうか。


少なくとも俺も陽夏も安全な行動とは言えないような行動を取り続けていた。


明らかに危険な様子しか無かったのにだ。


しかも、陽夏に至っては自分の意思では無かったようにも感じる。


いや、俺も自分の意思では無かったのかもしれない。


とにかくあの部屋に入ってから俺達はおかしくなった。


それはあの腕を見てからは更におかしくなった。


…………あれ? というかあの腕はどこへ行ったんだ?


あの後は焦っていて周りを見ていなかったが、今部屋の中をいくら探してもあの腕は見つからない。


うぅん、謎は深まるばかりだ。



それにしてもあの時の感覚は本当に奇妙なものだった。


まるで誰かに思考を奪われたかのような…………。


一瞬恐ろしい仮説が頭を駆け抜けるが、それを無理やり頭から追いやる。


恐怖に支配されていれば冷静な判断は出来ない。


この事は今考えることでは無い。



「うぅん…………。」



陽夏が起きた。



「陽夏、大丈夫か?」


「…………大丈夫と言えば大丈夫だけど、少なくとも気分は良くない感じ。」


「そうか…………。」



陽夏は苦虫を噛み潰したよう顔をしていた。


明らかに体調が良さそうでは無い。


俺が陽夏の体に異常がないか確認していると、陽夏が奇妙な事を言ってきた。



「ねぇ、晴輝はさ、モルフィスって名前に聞き覚えはない?」


「モルフィス? 聞いた事ないな、それがどうかしたのか?」


「うぅん、何でもない、じゃあソルって名前に聞き覚えは?」


「…………無いけど、何が言いたいんだ?」



陽夏はさっきからよく分からない名前を俺に聞いてくるが、その名前に聞き覚えは無い。


なんの意図があるのか分からず混乱するが、何か頭がおかしくなったのかと思い頭を治そうとしてみるが、何も出来ない。


どうやら陽夏の頭は正常なようだ。



「…………さっき腕に触れた時に、何かを思い出したの。それが何だったのかは分からないけど、確実に私の記憶じゃなかった。けど、確かに思い出した感覚だった。」



思い出した…………か。


思い出したという感覚はこのダンジョンで俺も何回か感じた。


主にあの女の人と関わっている時だった。


それと関係あるのだろうか。



「完全には分からないんだけど、そこでは覚えの無い記憶…………主に大切な人人の名前が思い出せたの。」


「それの名前がモルフィスとソルだったって訳か。」


「あ、いや、ソルって言うのは私の事なんだと思う。そこまで正確には思い出せなかったけど、何となく私は晴輝にそう言われた気がするの。」


「俺に?」



俺が陽夏の事をそんなふうに呼んだことは無い。


というかその名前自体も初めて聞いた。


そう、初めて聞いたはずだ。


だが、確かにその名前は妙に馴染む感じはした。


不思議だが、俺達とその記憶は関係しているのかもしれない。



「それで、その記憶ってのはどんな記憶だったんだ?」


「えっと…………ごめん、よく分からない。思い出せたって感覚はあるんだけど、断片的すぎて殆ど明確な記憶は無いの。唯一あったのが、教会みたいな場所で私が晴輝…………いや、モルフィス? に撫でられてる記憶だけで、それ以外の記憶は説明出来ないわ。」



教会という言葉で俺はこの前見た夢の記憶が蘇る。


そういえば、俺も夢で教会のような場所で女の子の頭を撫でた事があった。


まさか、それとこれには関係があるのか…………?



「なぁ、もしかしてそのモルフィスって奴は俺なのか?」


「…………分かんない。けど、私が1回見た時は確実に晴輝だって思ったわ。だから、あの人は晴輝なのかもしれない。」



俺の夢と陽夏の記憶が繋がった。


俺の背筋に冷たいものが走る感覚があった。


何が原因でそれが起きたのかは分からない。


だが、俺にも陽夏にもある自分達の記憶では無いのに自分が体験したかのような記憶。


それは何か自分では無いものに自分が侵略されているような感覚だったのだが、不思議と体には馴染んでしまっている。


これがいい事なのか悪い事なのかは分からないが、俺達はこの謎を解き明かしていかなくてはならないだろう。


そのためにも俺達はその元凶であろうダンジョンを攻略しなくてはならないのだが、そのダンジョンを登る階段のようなものが無い。


それでも2人で協力してこの謎に立ち向かうしかないだろう。



「…………陽夏、実は俺にも似たような記憶があるんだ。」


「やっぱりね。」



陽夏は驚かない。


まるでわかっていたかのような反応だ。



「俺はこの謎を解き明かそうと思っている。だが、圧倒的に情報が足りていない。だからこれからまたダンジョンを探索しようと思うんだが…………。」


「それは良い考えだと思うけど、多分もうこのダンジョンでは調べられることはないと思うわよ?」


「え?」


「だってこのダンジョン、もう魔力が無くなってきてるもの。」


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