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76話 ドス黒い塊



俺は先程までモヤが出ていた場所に行く。


すると、近くに行くだけで極小量だがモヤが出るようになっていた。


少しでも攻撃を当てたのが良かったのか、相手の隠密能力は確実に低下していた。


俺はモヤが出た方向に黒鉄を振るう。


今回も前回と同様に相手の事が良く見えていない俺は中々攻撃を当てることが出来ない。


避けながらも何とかしてたまに矢を射ってくることもあったが、刺さった矢はすぐに引き抜き直していったため特に痛手とはならなかった。


モヤは俺の攻撃を避ければ避けるほど濃く、実体を持っていく。


しかし、陽夏からは少し距離が離れてしまい、このままでは陽夏の攻撃が当たりにくい。


俺は陽夏の方へと引き寄せるために後ろをとって攻撃の方向を変えようとするが、相手もなかなかの速さなのため上手くいかない。


くっ、このままでは陽夏に近ずける所か陽夏からどんどん距離が離れていってしまう。


仕方ない…………かくなる上は!


俺は急に攻撃をやめ、全力でモヤに向かってタックルする。


その間に俺の腹や胸には風穴が空いていくのだが、そんなことは気にしない。


…………やっぱりめちゃくちゃ痛いわ。気にしないってのは無理な話だわ。


まぁ、それは我慢し、モヤの実体を掴む。



「はは、やっぱりお前だったか。」



俺は不敵な笑みを浮かべる。


白いモヤを掴んで初めて実体が見えたが、やはりそれはあの女の人だった。



杖、盾ときた次は弓か。


かなり厄介な相手だが、俺達の糧になってもらおう。


俺は身体中に風穴を空けられながらも怯むこと無く、思いっきり力を込めて、弓の女の人を陽夏の方向へとぶん投げた!


無茶苦茶でゴリ押しでしかないこの作戦だが、今の俺にはこれ以上の事を考える余裕など無かったのだ。


仕方ない仕方ない。


弓の女の人を投げた俺は地面に伏せる。


確かに投げられはしたが、それでも何発も何発も攻撃を受け、俺の体には毒が回りきってしまっている。


治すことは出来るが、少し時間がかかる。


あとは、陽夏に任せよう。



「陽夏! やっちまえ!」


「あぁ、もう! 本当無茶苦茶な事ばっかりするわね、バカ晴輝!」



そう言いつつも、陽夏の表情は妙に楽しげなものだった。



【七月流火】



陽夏の技が炸裂する。


その余波は俺の方まで届き、毒で侵された俺の体を容赦なく痛めつけていく。


まじで、威力強すぎだろ。


陽夏の一撃は弓の女の人の首をなんの抵抗もなく刎ねた。


まぁ、それはともかくこれで終わったようだが、今までならここからあと一悶着あるため気を抜けない。


陽夏もそれがわかっているのか落ちた首を警戒しながらも、俺とその首を交互に見て、結局俺の方へ向かってきた。



「晴輝、大丈夫!?」


「あぁ、俺は大丈夫だが…………あの弓の女の人は大丈夫じゃ無さそうだ。」



陽夏がこっちに来る頃にはあの弓の女の人の変化は始まっていた。


あの弓の女の人の頭がドス黒い液体に包まれてきたのだ。


そして、その液体は徐々に腕を象っていき、最終的には弓を構え、矢を放ち始めた。



「陽夏! 後ろ!」



駆け寄ってきた陽夏に猛毒の矢迫る。



「分かってるわよ。」



陽夏は俺の容態を心配しながらも、刀を矢の方向へと投げつけ矢を弾き、そのままの勢いで弓まで貫いた。


弓はこの前の盾のように元からなかったかのように消えてなくなった。


はぁ、こんなかっこいい所を見せられてしまっては何だか陽夏と体を交換したくなってくる…………変な意味じゃないぞ?



「そんな事よりも晴輝よ! もう、そんなに無茶して…………。」


「そんな事って…………。まぁ、今回俺が少し無茶したのは事実だ。けど、あのままだったら俺に毒が回って動けなくなり、陽夏の攻撃も当たらず全滅になりそうだっただろ? あの時はあの程度のことしか考えられなかったんだ。な? 結果オーライだろ?」


「むぅ、まぁ、そうだけどさ…………。」



陽夏は俺が無茶した事を許したくは無いが、結果オーライなのは本当なため何も言えなくなっているようだ。


俺は会話しながらも徐々に水かさを増していくあのドス黒い水の塊の方に意識がいっていた。



「陽夏、あれヤバくないか? あの頭をどうにかしない限りここから先には進めないんだろ?」


「そうね…………とりあえず私が一撃入れれば!」


「待て待て待て、ここは俺に任せてくれ。」



俺は何故かこれの対処法がわかる気がしたのだ。


頭では理解していないが、体で理解しているような感覚だ。



「…………また無茶しないでしょうね?」


「…………うん。」


「あ! 今間があったわよ!? 絶対無茶する気でしょ!」


「しないしない、じゃ、じゃぁ、行ってくるよ!」


「あ、こら!」



このままだと陽夏が行かせてくれなそうなので、俺は陽夏の静止を振り切りあのドス黒い塊へと向かった。


そしてそのまま息を止めてその中に突っ込む。


全身がその液体を吸収して悲鳴をあげてるが、無理やり治して動かしていく。


進んでいくと、ちょうど塊の真ん中辺りに頭のような物があった。


俺はそれに手を当てる。



夢食(ばく)



俺はまたこのスキルを使った。


瞬間、周りの液体が消えていく。



その瞬間、俺の頭の中で声が鳴り響く。



【スキル《夢食LV3》を入手しました】


【スキル《壮健LV2》を入手しました】


【スキル《壮健LV3》を入手しました】


【スキル《超再生LV5》を入手しました】


【スキル《根気LV10》を入手しました】


【スキル《根気LV10》がスキル《忍耐LV1》に昇格しました】



「ふぅ。」



俺は体に液体は着いていないのだが、反射的に額を脱ぐう様な仕草をする。


やはり夢食を使うとものすごい勢いでスキルのレベルが上がる。


これからもこのスキルにはお世話になりそうだな。


そうして、俺がホクホク顔でいると、陽夏は顔を真っ赤にし、プリプリしながらこっちへ向かってきた。



「はーるーきー? 何か言うことは?」


「ええっと…………結果オーライ?」


「だからといって無茶しすぎよ!」



俺はその後、陽夏にみっちり説教された後、何とか陽夏の機嫌を取り、またダンジョン攻略を進めていくことにした。

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