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72話 お荷物


休憩を取りながらまぁまぁの時間が経った。


もうそろそろあの女の人が居る部屋へと着くだろうと思い警戒しながら何階か階段を登ると、案の定あのだだっ広い部屋に出た。


そこにはいつも物凄い数のゴブリンが居るが、今回はそれに弓を持ったゴブリンも混ざって居る。


しかし、弓のゴブリンたちは前に居る普通のゴブリン達に当たらないようにしてか中々弓を射って来ない。


前に居るゴブリンが居なくなったら射ってくると思うとゾッとする。


俺と陽夏は階段の下まで降り、階段から降りてくるゴブリンを倒していった。


もうこう何回も同じことをしていると案外慣れるものだな。


ゴブリンはどんどん降りてくるが、特に苦でもなくサクサクと倒していけた。


そして、普通のゴブリンが居なくなると、ゴブリンの波はピタリと止まった。


階段の上を見ると、弓を構えたゴブリン達がずらりと並んでいた。



「へぇー、出待ちなんて舐めた真似をしてくれるわね?」



陽夏はブチ切れてそのゴブリン達に突っ込もうとするが、流石に危ないので腕を掴み動きを止める。



「待て待て待て、何も考えずに突っ込むとかバカのやることだぞ? もうちょっと考えてだな…………。」


「誰がバカですって!?」



陽夏の怒りの矛先はゴブリンから一気に俺へと向く。


おぅふ、怖ぇ。


あのゴブリン達はこんな怒気を浴びせられつつも弓を構え続けたのか、すごいな。


俺だったらビビって弓を放り投げて逃げてしまいそうだ。


そんな怒気を一身に浴びた俺はたじろぎながらも必死に弁明する。



「す、すまん、言い方が悪かった。俺は陽夏を思って言ってるんだ。陽夏があのまま突っ込んでたらほとんどの矢は躱せたとは思うが、それでも何発も当たってしまうだろ? そんなふうになってしまえばお前の命も危ない。心配なんだ、だからそんなに1人でいかないでくれ。」


「むぅ、そ、そっかぁ、私を思ってかぁ。しょ、しょうがないから許してあげるわよ!」


「そ、そうか、ありがとう。」



陽夏が急に上機嫌になったことに戸惑いつつも、俺はとりあえず陽夏の機嫌が良くなったことに歓喜する。


あれはちょっと心臓に悪い。



「けど、それだったらどうするの? まさか晴輝が突っ込むとか言わないよね?」


「え? そのつもりだったけど?」



俺は最悪あの程度の攻撃なら何度食らっても死なない。


だから俺が突っ込んでも別に良いと思ったんだが…………。


そう言うと陽夏は深いため息をついた。



「あのさ、私にあんだけ心配心配言っておいて、自分は危険な事するってさ、ちょっと嫌なんだけど。」


「けど…………。」


「けどじゃない。ねぇ、私ってそんなに頼りない? 私って晴輝にとってお荷物になってるの?」



そんなはずは無い。


陽夏が居なくてはここまで絶対に来れてないし、陽夏は俺に必要だ。


お荷物はどちらかと言えば俺なんじゃないかって思うくらいだ。


しかし、よく考えたら最近の俺は少し陽夏に対して過保護気味になっていたかもしれない。


陽夏に危険が及ばないようにと最善を尽くそうとしているうちに、どんどんと陽夏のやる事を奪っていっていたのかもしれない。



「…………俺は、陽夏に絶対に死んで欲しくないんだ。俺が弱いせいでゆうちゃんは死んでしまったから、だから過保護になっていたのかもしれない。本当に陽夏は強いと思ってるしお荷物なわけない。けど、心のどこかで守らなきゃって思ってしまうんだ。」


「…………うん。まぁ、そうだよね、晴輝の気持ちもよく分かる。私も仲間がいっぱい死んでるからね、みんなを守ろうとしてから回ったりも何回もした。」



陽夏は掌をグッと握り締める。


思い出すのも辛いのか、陽夏の顔が苦悶に染まる。



「けど、それでも私一人じゃダメだって気づいたの。私一人だったら守れるものも守れない。だからみんなを頼ることにしたの。だから晴輝も私を頼って? 晴輝が私を心配みたいに、私も晴輝を心配してるの。お願いだから1人で抱え込もうとしないで。」


「…………あぁ。」



陽夏も俺を心配している。


その事実が俺の心に突き刺さる。


そうだよな、そりゃこんな弱い男心配するよな。


陽夏を守ろうとして1人で勝手に突っ走って、空回りして。


俺は陽夏の行動が危なっかしいとおもっていたが、陽夏からすれば俺が1番危なっかしがったんだろうな。



「わかった。こんな俺だが、頼ってもいいのか?」


「いいに決まってるじゃない! なんならこのままの勢いでさっさとこんなダンジョン攻略してゆうちゃんを生き返らせるわよ!」


「おう!」



そうして一致団結さた俺達は階段登ろうとした…………。


が、そこには慌てて弓をつがえなおすゴブリン達が待ち構えていた。



俺達は無言で踵を返す。



「そうだったわね、そういえばこういう状況だったわね…………どうする?」


「うぅん。」



俺は考え込むが特に何も思いつかない。


そうこうしているうちに普通のゴブリンがこっちの事を見つけてこちらに向かってきた。


ナタを振り回すが、そんなの当たるはずもなく、サクッと狩られる。



「あっ、そっか、これを使えばいいんだ。」



俺はそのゴブリンを見て一つのことを思いついた。

今日は出来ればあと2回投稿します

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