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69話 夢食の使い方



俺は盾の女の人に謎のスキルである夢食(ばく)を使おうとしたが、そこで重要な事に気がついた。


俺は夢食(ばく)の使い方が分からない。


コナーに鑑定してもらったりして分かった気になっていたが、良く考えたら何一つ分かっていないのだ。


しかし、これに頼る他ないのは事実だ。


今現在どうすれば良いのか分からない状態ならば、とりあえず色んな可能性にかけていくべきだ。


ということで、俺はドーム型の物体に手を添えた。


そして、何となく手に魔力を集めていく。



夢食(ばく)!」


「…………。」


「…………。」



気まずい沈黙が流れる。


俺は夢食(ばく)とさけんでみたが、結果何も起こらなかった。


ただただちょっと気まずい空気になっただけだ。


別の呼び方を試してみようかと思ったが、何だがこの前にもこんなような事があったような気がしてやめた。



「ねぇ、晴輝、一つ気になってる事があるんだけどさ。何か私の刀震えて無い?」


「どういうことだ?」



俺が陽夏の刀を見ると、微妙だが、確かに少し揺れていた。



「この感じ、あの杖を吸収した時と同じ感覚なの。多分、この盾に反応してるみたい。」



と、陽夏はドーム型の物体を指差す。


この前、陽夏はこの刀で杖の女の人が持っていた杖を吸収していた。


原理は謎だが、それで陽夏は強くなっていた。


まさか今の状態の盾でもそれは出来るのだろうか。



「とりあえず今からこの盾を切ってみるわ。」



陽夏は鞘から刀を抜いた。


すると、刀が少しづつドーム型の物体の方へと移動していった。



「やっぱり吸収できるみたいね。」



陽夏は刀の力に逆らわず、そのままてくてくとドーム型の物体に近ずいていく。


刀の先端がドーム型の物体に触れた瞬間、それはまるで元々そこに無かったかのように消え去り、女の人の生首だけがそこに残った。



「あ、やっぱり切れてる。私首を切った感触があったからおかしいなって思ってたのよ。やっぱりさっきのは最後のあがきみたいなものだったのね。」



あの時陽夏が一撃当てた時には既に盾の女の人は首を切られて瀕死の状態だったみたいだ。


あの状態から回復できたのかは分からないが、確かにあの硬さで守られてしまっては勝ち目はなかったかもしれない。


俺は盾の女の人の頭に近ずいていく。


これ以上何かされても困るからな。


この前の杖の女の人は頭だけの状態で火の玉をバンバン放ってきたらしいし、油断はできない。


俺は黒鉄を拾い、盾の女の人の頭に突き立てようとした。


しかし、その頭を見た瞬間、動きが止まる。



「ん? どうしたの?」


「いや…………。」



特に何かある訳じゃない。


俺はただこの女の人の頭を刺すだけで良いんだ。


それだけでいいはずなんだ。


しかし、この懐かしさは何なのだろうか。


黒鉄を持つ手に力が入らない。


頭では刺せと言っているのに、体が、心がそれを拒否する。


何故かは分からない。しかし、俺は気づいたら刀を地面に落としていた。


そして、刀を突き刺す代わりに、俺は手を盾の女の人の頭に乗せ、優しく撫でた。



「晴輝!? 何やってるの、危ないわよ!?」



慌てて止める陽夏の声を無視し、俺は頭を撫で続ける。


そうしていると、盾の女の人は優しく微笑んだ気がした。


俺は無意識でスキルを呟く。



夢食(ばく)



盾の女の人は、俺の手の中へと吸収されていった。


その瞬間、俺の頭の中で声が鳴り響く。



【スキル《金剛力LV8》を入手しました】


【スキル《壮健LV2》を入手しました】


【スキル《強靭LV6》を入手しました】


【スキル《超再生LV3》を入手しました】


【スキル《超再生LV4》を入手しました】



「えっ!?」



俺はいきなりの事で変な声をあげてしまう。


こんなに一気にスキルがレベルアップしたのは初めてだ。


しかし、なんでこんなにレベルがあがったのだろうか。



「だ、大丈夫?」



陽夏が心配してくる。



「あぁ、大丈夫だ。」



特に何か異常があったような感じはしない。


いや、さっきの俺の様子は明らかにおかしかったな。



「って、そんな事よりもさっきは何であんな事したの!? 杖の方だったら本当に危なかったわよ!?」


「あぁ、すまない、俺にもよく分からないんだが、何故かああすべきだと思ったんだ。」



まぁ、スキルも手に入った訳だし、結果オーライだよな。



「け、けど、頭を撫でるなんて…………。」


「ん? どういうだ?」


「いや…………。」


「と、兎に角、私も撫で…………じゃなくて、次からは絶対に危ない事はしないでね!」


「あぁ、けど、次からも夢食(ばく)を使うかもしれない。その時は止めないでくれ。ゆうちゃんを助けるために使えるかもしれない。」



ゆうちゃんを助ける手立てが明確では無い今、その可能性を少しでも潰す訳にはいかない。


陽夏はかなり反対していたが、俺の引く気の無い態度を見たからなのか、少し悲しそうにしながらも受け入れてくれた。



「じゃあ、まぁ、行くか。」



俺と陽夏は少し気まずい雰囲気のまま階段を登っていった。

ギリ!

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