31話 引きこもり遂に犯罪者となる
「んー…………。」
「お、起きたか。」
今はこの子が寝てから8時間ほど経った頃だ。ゆうちゃんはやっと目覚めたようだ。
辺りはもうすっかりと明るくなっており、カーテンの隙間から光が差している。
「お腹減ったか? ご飯用意するぞ。」
「大丈夫!」
大丈夫か。遠慮しているのか分からないが子供はしっかりと食べなきゃ駄目だろう。
「ゆうちゃん。ご飯はしっかり食べなきゃ駄目だぞ!」
俺は出来るだけ優しめに注意をした。
俺は子供の扱いなど分からないので優しく出来たか分からないが、ゆうちゃんの様子を見るに怖がらせたりはしていないようだ。
「えー、お腹減らないよー?」
昨日の夜にチョコレートを沢山食べさせてしまったからだろうか。まぁ、昨日は宥めるためだ。仕方ないだろう。
俺みたいに断食のスキルを持っていない限りご飯は食べないと駄目だ。
俺は無理やりにでも何か食べさせる事にした。
「ほら、これ。フルーツ缶だよ。」
「わぁっ! フルーツ!? みかん入ってる?」
「あぁ。入ってるよ!」
パッケージ詐欺だったら申し訳ないが、今どきそんなことをしたら炎上しまくるし流石に無いだろう。
ゆうちゃんは缶を開けてあげるとパクパクと食べ始めた。
箸を器用に使いみかんだけを食べていっていた。
うーん。まぁ、食べてるだけいいか。
「じゃああとは俺が食べるね。」
「あ! まって!」
ゆうちゃんから缶と箸を受け取り残った他のフルーツを食べようとしていると、止められてしまった。
もしかしてまだ食べたかったのだろうか。
俺が不思議そうに見ているとゆうちゃんは顔を真っ赤に染めて話した。
「駄目だよ! それ食べちゃったら…………か、間接キスになっちゃうでしょ!」
「ヴッ゛」
ちょ、それは反則…………。
そう。俺レベルになるとこの子くらいの大きさの女の子にも悶えてしまうのだ。
「えっと、間接キスしたいなら付き合ってからだからね!」
「つっ…………。」
オーバーキルッ。
俺の理性は崩壊寸前だ。
もう何かロリコンの人の子をとか犯罪者だとか思ってたけど、それは間違いだったんだな…………。
そう。ロリは正義。ろりーたいずじゃすてぃす。
「お兄ちゃんどうしたの?」
「え? あぁ、いや。何でもないよ。そ、それよりも付き合うって…………。」
「あ! まさか私に告白させようとしてるのね! んもー、お兄ちゃんはへたれなんだからー。」
おうふ。何だか新しい扉が開かれそうだ。
ネットの荒波に揉まれた俺からしてみればこの程度の煽りは全くと言っていいほど効かない筈なのだが、多分これは防御を突き破ってくるタイプの煽りだ。
しかも、ダメージは食らわないのに心にグサグサと刺さってくるタイプだ。
「お兄ちゃんがどうしてもって言うなら…………つ、付き合ってあげても良いよ!」
ゆうちゃんは顔を真っ赤にしてそう言った。
ズキューン!!!
刺さったよ。その言葉。
「どうしても付き合いたいなぁ。」
「えー? しょうが無いなー。じゃあ付き合ってあげる!」
「いよっしゃぁぁぁ!!!」
俺は大きくガッツポーズをした。
なんて喜ばしいことだ。俺に初彼女が出来たぞ! しかもこんなに可愛い子だ!
「付き合ったんだったらー。まずはギューしなきゃね!」
俺はそのくらいさっきからやってたじゃ無いかと思ったが、その考えは打ち砕かれる事になる。
「ギュー!」
「ぐはっ!」
駄目だ! 何だこれ! 幸せすぎるぞ!
これが彼女パワーというものなのか!
俺は座っている状態なのゆうちゃんの顔が近く、ゆうちゃんの茶色の髪がサラサラと顔にあたって気持ちがいい。
「「…………。」」
そこで目があってしまった。
じっと見つめ合う。
ゆうちゃんは少し顔を赤くしたが、意を決した様な顔をし、こっちを向き直る。
「ねぇ、お兄ちゃんの名前は?」
そういえば聞かれててなかったな。
付き合っているって言うのに名前も知らないなんて駄目だもんな。
「俺は御影晴輝だ。君の彼氏だよ。」
「えへへ、そっかぁ。名前知っちゃったぁ。」
どちゃくそかわえええ!!!
この可愛さは可愛さはまさに女神そして…………。
俺がそんなふうにトリップしていたら、ゆうちゃんは少し膨れた顔をした。
「もう! お兄ちゃんったら! この体勢。もう分かるでしょ?」
「え?」
俺は俺達がどんな体勢をしているのか再確認する。
ゆうちゃんが俺の足の上に跨り、俺の肩に手を回して抱きつき、顔を近ずけている。
え、この格好ってまさか…………。
「…………んっ。」
「…………。」
ゆうちゃんの方を見た時にはもうゆうちゃんは唇をすぼめていた。
ままままさか!? え!? やっちゃっていいんだよね! やっちゃって!
俺はゆうちゃんの顔をもう一度しっかりと見る。
ゆうちゃんはまだかまだかと閉じた目を少しだけ開けてまた閉じたりしている。
よし。覚悟を決めたぞ! ここで男を見せずして男は名乗れないな!
俺は意を決して唇をすぼませる。
20センチ
15センチ
10センチ
少しずつ唇と唇が近ずいて行く。
8センチ
6センチ
4センチ
俺の心臓はこれでもかという程にはやっている。
ゴブリンに殺されかけた時など比にならないほどはやいだろう。
3センチ
2センチ
1センチ
今! 俺の初キスが…………!
バァァン!
「晴輝君! 昨日のお礼も兼ねて部屋でも片付けに来たよ! って…………。」
扉を勢いよく開けて入って来たのはコナー。いや、邪魔者だ。
「あ、あははぁ。ご、ごめんねぇ。お取り込み中でしたか………。それでは僕はこの辺で…………。」
コナーはそろりそろりと扉を閉めて出ていった。
よし。邪魔者は居なくなった。
仕切り直してもう一度キスを…………。
バァァン!
「ちょ、ちょっと待ったぁ! は、晴輝君何やってるの!? そんなちっちゃな子に!」
「何だ? 見て分からないのか? キスだよ。キス!」
「それは分かるよ! 大事なのはなんでそんなちっちゃな子としてるかって事で! …………あぁぁ!もう!とりあえず離れて!」
コナーは俺とゆうちゃんの間に無理やり入り、俺とゆうちゃんを強制的に離した。
「はい! 晴輝くんお座り! そこの子も!」
それから、コナーの説教が始まった。
は、晴輝くん! 駄目だよ! それ以上は犯罪だ!
はい。今回でいよいよ晴輝くんは犯罪者になってしまいましたね。
ちなみに晴輝くんは作者である私をモデルにしてある程度作ってるんですよねー。あははー。
そんなことは置いておいて今回も読んで頂きありがとうございました!
時間が足りず、後書きが最近あまりかけていませんが、毎日投稿は続けているのでどうか見捨てないで!