212話 最後の戦い3
俺の体は制御が効かずに2人へと襲いかかる。
身体中にまとわりついているこの液体は全てあの金属の筒に入っていた液体に似たようなもので、触るだけで魔力が吸われていくようなもののようだ。
コナーがそう陽夏に伝えていたため、間違いがないだろう
そのため、陽夏は俺と少し距離を取り、ある程度攻撃を避けながら戦うようにしていた。
俺の速度は元の俺の体やモルフィスの体よりも早く動けるようになっていた。
スキルをある程度俺が封じている分、攻撃的にはそこまで強い物は出せないが、それでも普通の人なら瞬殺できるような速度が出ていた。
「くっ!?」
陽夏は俺の攻撃を後ろに飛んで避けるが、俺の速度がそれを上回る。
俺の拳は陽夏の胸に吸い込まれていく。
しかし、陽夏も一筋縄では倒れない。
刀を盾のように変形させ、俺の攻撃を防いでいる。
魔力を吸ってしまいそうになるのは何とかこっちで抑える。
それでも陽夏も攻撃を受けてしまっているようで、後ろに飛んでいってしまう。
それを未来を予知したのかコナーがしっかりと受け止める。
「大丈夫だね! 次は…………。」
コナーが陽夏の耳元で何かを喋っている。
そうか、コナーの未来を予知する能力である程度の俺の挙動などを教えているのか。
俺はそんな2人にもう一度突っ込んでいく。
俺は次に日曜の現人神が使っているあの魔法を使おうとしていた。
俺は慌ててそれをキャンセルする。
どこか陽夏とコナーとは違う方向に撃ててしまえば俺の魔力も減ってくれて良いのだが、制御出来ずに2人に当たったしまえば大惨事だ、そこまでのリスクを取ることは出来ない。
「よっし、じゃあ修行の成果見せるからね! 晴輝! 見惚れてもいいわよ!」
陽夏は自信満々にそう言う。
その瞬間、陽夏の纏う魔力が変わった。
これは…………一時的に体外魔力を体内魔力として消費してるのか?
どうやら陽夏は体外魔力を体内魔力として取り込むと同時に体外魔力を使って身体中の細胞を強化する事によって自らの身体能力を向上させているみたいだ。
「どう? ちょっとは倒せるんじゃないかって思ってきたでしょ?」
俺はもう体の制御を奪われてしまい声を発する事は出来ない。
だけど、俺の思いは確かに伝わっているはずだ。
「…………じゃあ、行くわよ! 」
陽夏は構えた刀をゆらゆらと揺らすように構えた。
あの動きは俺の記憶にもある。
ソルの得意としていた剣術だ。
「これはダンジョンでソルに教えて貰ったのよ、それに、今は私の中にソルは居るから、それでもうソル以上に完璧に使えるようになっているはずよ!」
そうか、それなら安心だ。
陽夏は素早い動きで俺へと迫る。
その瞬間、思ったよりも陽夏が俺の元へ迫っている事に気づく。
俺の体は慌てて回避行動を取るが、その速度には着いていけずに左肩が落とされてしまう。
俺はすかさず回復しようとする俺の体を止める。
…………だめだ、やっぱり治ってしまう。
俺の時に瞬時に治ったりする訳では無い。
それでも十数秒立てば落ちた腕はほぼ全回復してしまう。
「あぁ、もう、その能力敵に回したら厄介ね…………。」
俺は俺の近くまで踏み込んできている陽夏に攻撃を加えようとする。
「!?」
その瞬間、俺の目が潰れた。
すぐに治そうと俺の体は試みるが、少しづつ治す度に何度も何度も潰されてしまい俺の目はずっと使えない状態になってしまう。
これは、コナーの能力だ!
ついこの前まではこの能力は使ってしまえば自分の目まで攻撃してしまうことになると言っていたはずだが、今はそれを使い続けてもなお後ろから陽夏への指示が飛んできている。
…………流石だ。
俺は目が見えていないため、陽夏の攻撃が見えない。
俺の目が見えなくなっているうちに、陽夏は俺の体の至る所に攻撃を繰り返す。
どこか分からないところをいきなり攻撃されると流石の俺も治すのを止めることが出来なかったりする。
その時、陽夏の刀に魔力が集まるのが分かる。
【七月流火】
その技が俺に放たれる。
魔力が集まっているのがわかる分、どこに陽夏が居るのかが分かるため、俺は防御をした。
しかし、その防御は受け流されてしまい、俺の腹部に深深と傷が着く。
ナイスだ陽夏!
このまま攻撃を繰り返せば可能性はある!
陽夏は同じ攻撃を何度も何度も連続で攻撃する。
陽夏にとってこの攻撃はそこまで強いものでは無いようだ。
しかし、俺の体には攻撃が通っている。
今は非常に陽夏が優勢だ。
俺はこのまま戦いが終わってくれと願うばかりだが、現実はそうもいかない。
「陽夏ちゃん、逃げて!」
コナーが叫ぶ。
その時、俺の下あたりで魔力が集まっていくのを感じた。
俺は目が見えていないため、何が起こっているか正確には分からないが、俺の下の所で何かが起こったいた。
次の瞬間、魔法が物凄い勢いで広がっていくのを感じた。
この魔法は…………まさか、魔核融合魔法!?
けど、俺はそんな魔法を使ったはずは…………!
そこで俺は気がついた。
そこにあったのは、先程俺が陽夏に切り落とされた左肩だった。




