表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

209/216

209話 想いの結晶



「…………嘘だ。」



俺は動かなくなった金髪男事は放置し、あの液体に駆け寄る。


磔になったみんなはその中心部へと吸い寄せられていく。


俺はその様子をただ見つめていることしか出来なかった。



「…………諦めろ、もうお前の大切な人は取り戻す事は出来ない。」


「…………お前は。」



日曜の現人神だ。


全ての元凶である、忌々しい奴だ。


日曜の現人神は土曜の現人神を担いでこちらに向かってくる。



【陽炎】



日曜の現人神がそう唱えると、その姿が消えてなくなった。


俺は驚いて周囲を見渡す。


すると、その瞬間、液体のが少し波打つ。



「そこか!」



俺はその場所に向かって刀を振る。


その時、液体に触れた刀は溶けてなくなった。


しかし、手には確かな感触が残っていた。


液体には一瞬血のような物が滲み、その後すぐに流れ去った。



「これで終わりだ…………。」



それから日曜の現人神と土曜の現人神は液体の中で姿を現す。


その瞬間、金属の筒のようなものがその液体を包み隠す。



「おい、まて! 嘘だろ!?」



この中には俺の大切な人達が入っている。


それなのに手が届かない。


どれだけ強くなってみんなを救える力を得たとしても、何があっても妨害されて救う事が出来ない。


悲しみ、悔しさ、怒り。


その感情が俺とモルフィスの中で同期する。


今まで離れていた俺とモルフィスの意識が溶け合っていくような感覚を覚えた。


が、全てが混ざり合った瞬間、全てが離れる。


俺の中でのゆうちゃんへの思いとモルフィスの中での教会のみんなへの思い。


その違いが俺たちの意識を分けた。


だが、そのどちらの意識も同様に同じことを思っていたを



「もう、終わりか。」



俺にはもうみんなを助ける術なんて無い。


現人神共ももうみんな死んだも同然だ。


俺は誰も助けられなかった。


何度も何度も希望が見えたような気はした。


それらの全ては幻想だったようだな。


モルフィスの罪は重く深い。


それに俺も罪の無い人を何人も殺している。


そんな俺達にお似合いな末路なのかもしれない。


俺はせめてものとその金属の筒を殴る。


魔力を吸収してみたりもする。


筒はある程度壊れていく。


しかし、壊せたとしても中にあるあの量の液体からみんなを救い出すことは出来ない。


せいぜいあの液体に取り込まれて終わりだ。


それでも、それでも俺は諦めきれなかった。


俺の、俺たちの愛はその程度なのかと自分に問う。


すると、すぐにまだまだだという返答が帰ってくる。


俺は何度も何度も殴りつける。


そして、俺はその液体へと手を伸ばした。


もっと、奥へ、みんなの元へと手を伸ばしていく。


俺の力が、想いがその液体に吸われていく。


それでも、俺の強大な力は簡単には無くならない。


その力を原動力にして俺は中へ中へと潜っていく。



「待ってろ! 必ず助けるからな!」



俺の目は確かにゆうちゃんを、教会のみんなを捉えた。


そこに手を伸ばすが、俺の力はどんどんと弱まっていき、遂にはそこへと進む力すら無くなっていってしまう。


それでも、俺の手は皆の元に届いた。


俺はみんなの手を掴む。


その瞬間、みんなと過ごした日々がフラッシュバックする。


俺は幸せな気分になり、そのまま意識を手放そうとする。


しかし、何かが引っかかった。


…………そうだ、大切な存在が2人、いや、4人欠けている。


ソルとセイラ、そして陽夏とコナーだ。


この場所にその姿は見えない。


まぁ、無理もない。


あの二人は他の人と比べても別格な程強いし、その力を宿した2人も他の人たちとは一線を画している。


寂しさは勿論あった。


しかし、それと同時に嬉しさもあった。


あの2人はまだ生きている。


現人神がどちらも生贄としてこの液体の中に入っている以上、あの2人がここまで連れてこられることは無いだろう。


しかし、何故だろう。


ここのみんなと居るうちに、あの2人もここに連れていかなくてはという考えが俺の中に芽生え始める。


その想いは俺達をまた形作る物に多大な影響を与える。


俺達は、想いの結晶であるモンスターに姿を変えつつある。


普通ならその想いのみが具現化されてモンスターになるみたいだが、今回は違った。


あの現人神の野郎共は最後の最後まで俺に嫌がらせがしたいようだ。


俺達の想いの全てがそこに込められる。


俺達の全て、それは肉体、精神、想い、全てがひとまとまりになってぐちゃぐちゃに混ざっていく。


その中でも一際想いが強かった人間、つまり晴輝とモルフィスにそれは集まっていく。


俺はみんなが自分と一体化していく感覚がとても暖かく、気持ちの良いものだと判断した。



「…………2人とも、待っててくれ、今迎えに行くからな。」



俺は暴走し始めた。






評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ